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30話 暴虐のアリス4



「あっははっ!! おっそ~い!」



 戦場に楽しげな声が響く。

 アリスの声だ。

 軽快にステップを踏むアリスは踊っているようだ。

 ダンス相手は腕利き冒険者達20名。

 疲労の色を濃くしながら、アリスを追い詰めようとしていた。



「くっそ! このガキどうなってんだ!?」


「いいから手ぇ動かせ!」



 アリスを取り囲んで襲いかかる冒険者だが、触れることさえできていなかった。

 先ほどに比べて、明らかに鈍くなっているアリスだが、四方八方から遅いかかる冒険者の猛攻をすべてよけ続けている。

 その内の一撃が当たりそうになり、アリスは紙一重でかわす。



「おっとっと~!」


「今だ!」



 わずかにバランスを崩したアリスを見て、それを好機と見た若い冒険者が包囲網から飛び出し、アリスへと渾身の一撃を放つ。

 会心の一撃に手ごたえはなく、あっさりと空を切る。

 彼が最期に見た光景はアリスの拳だった。



「あっははぁっ!! 引っかかった~! ダメだよぅ、こんな見え見えの罠にひっかかっちゃ!」


「ちぃっ!!」



 頭をつぶされ、首のない冒険者の死体を踏みつけたアリスはおかしそうに笑う。

 仲間を踏みにじられた冒険者たちは、忌々しそうに舌打ちする。



 即席とはいえ、冒険者達の連携は見事の一言。

 彼らの繰り出す攻撃はまさに豪雨の如く。

 一秒ごとに連携を改善し、回転率を上げていくが、アリスには届かない。

 文字通りかすりもしない。



 今のアリスはけっして規格外の速さではない。

 ガンマの『停止の魔眼』によって、麻痺したアリスのスピードは周囲の冒険者とさほど変わらないはず。

 だというのに、包囲網から放たれる攻めの嵐に一撃も当たらない。

 それだけでなく、自分に対するすべての攻撃にカウンターを合わせてくる。

 そのためアリスを囲む冒険者達はすでに半分以下になっていた。



(そんな馬鹿な!? こんなのありえない!)



 空見は歯噛みする。

 この2ヶ月間、実戦で鍛えられた空見達の戦闘技能は飛躍的に向上している。

 腕利き冒険者達で包囲網を敷いているのに、まるで届かない。

 反射速度の違いだけではない。

 アリスは行動の起こりから、相手の動きを予測する能力が桁外れなのだ。

 恐るべきセンスの持ち主である。



 この場の誰もが理解した。

 コレは本物の化け物だと。

 力だけでなく、戦闘センスも別格。

 おまけに弱体化した状態で、手も足も出ずに遊ばれているのだ。

 本来のアリスはどれほどの戦力なのか想像もしたくない。



「ば、化け物め!」


「どうすりゃいいんだ!?こんな奴……!!」


「う~ん、退屈だなぁ。この程度なの? つまらなくなってきたよぅ」



 アリスは目を閉じると、つまらなそうに深くため息をつく。

 その瞬間、アリスの背中側から、空見は全力で突っ込む。

 例えこれが罠であろうと関係ない。



(目を閉じている今なら、反応も鈍いはず!)



 空見はアリスの後頭部へ最速の一撃を放つ。

 だが、アリスは攻撃が<放たれる前に>首を傾けて躱す。

 まるで最初からどこを狙っていたのか分かっていたかのように攻撃を躱し、空見へとカウンターを叩き込んだ。



「ぐっ!?」




 たった一撃で鎧は砕け、内臓をかき混ぜられたかのような衝撃が空見を襲う。

 腹の底からこみ上げてきた吐き気と共に、空見の口から大量の血が流れる。

 苦痛を堪え、呼吸する度に激痛が走り、空見の顔が苦痛に歪む。



(折れた骨が肺に刺さっている……?)



 胸を押さえ、空見は膝から崩れ落ちる。

 もう苦痛で立つどころか、呼吸さえまともにできない。



「はい! これでおしまい~!」



 無防備にうずくまる空見へ、アリスの追撃が迫った。




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