13話 新たなる脅威1
「信ちゃん! 大丈夫!?」
「……死ぬかと思ったぜ」
泳いで川を渡った信太郎は周囲が驚くほど疲弊していた。
嗅覚もチート級なのが災いしたようだ。
信太郎はマリに膝枕された状態でぐったりとしている。
薫は具合の悪そうな信太郎に近づくと、しゃがみこんで視線を合わせた。
「おかげで助かったよ。まぁ、別に助けてくれって頼んでないけど」
「何お前、ツンデレなの? キモいわ。それで彼らは薫の仲間か?」
礼を言う薫の背後から痩せた男が声をかける。
黒ローブ姿のその男はまるでゲームに出てくる呪術師のようだ。
「ああ。みんなに紹介するよ。こっちの痩せていて中二病みたいな、クソダサい恰好の男がガンマで、こっちの革鎧着た人の言葉を話せるゴリラがマモルだ」
「なあ、コイツ口悪いんだけどいつもこうなのか?」
「それとも俺たちだけか?」
苛立った様子のガンマとマモルが空見に視線を向ける。
「すいません! 薫、お前なぁ……」
「事実だろ」
そういうと薫は胸ポケットからタバコを取り出すと、手慣れた様子で火をつけて一服する。
そして無言でガンマ達にタバコを投げ渡した。
2人もポケットからオイルライターを取り出して火をつけると、タバコの煙を深く吸い込んだ。
「くぅ~! たまらん! タバコうめぇ!」
「薫がタバコ持ってなかったら何度かケンカになってるよな、俺ら」
タバコで一服すると3人は憑き物が落ちたように朗らかな顔つきになる。
どうやらヤニが切れて苛ついていただけだったようだ。
「あ、悪いね。しばらく吸う暇なくて我慢できなかったんだ。
俺たちは3日前に他の城塞都市から来たんだ。君らと同じ転移者さ」
スパスパとタバコを吸い続ける薫やマモルに代わってガンマが口を開く。
「他の所から? 何かあったんですか?」
何か理由でもあるのだろうかとマリが尋ねる。
「ああ、俺らと一緒に転移した奴らにとんでもねぇクズ野郎がいてな。
奴らのせいで町に居づらくなったのさ」
「能力の悪用とかっすか?」
「その通りだよ。俺の能力は『七つの魔眼』。
その中に“鑑定の魔眼”ってのがあってな。他人の能力を見抜けるのさ」
ガンマが目を見開くと瞳の色が黒から蒼に変わっていた。
なんらかの魔眼を使ったらしい。
身構えるマリや空見に対し、敵意がないことをアピールするかのように両手を上げる。
「すまん。ヤバい能力者じゃないか確認したかったんだ。
君らに伝えたいことがあるんだ。他の転移者に会えたら彼らにも伝えてくれ。
洗脳系と催眠系の転移者が能力を悪用してるって」
ガンマは素直に頭を下げると、真剣な表情で語りだした。




