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12話 VSゴブリン部隊2



「し、信太郎か?」



 信太郎が土煙から出てきたのが予想外だったのか薫は呆ける。

 そんな薫の耳にさらに聞き覚えのある声が響く。



「シン! 薫たちはワタシが守っとくわ! アンタは取り決め通り動きなさい!」


「おう!」



 エアリスが魔法で薫たちを保護するのを確認し、信太郎はゴブリンへと突撃する。

 川向こうに渡ったのは信太郎とエアリスのみだ。

 マリ達は幻影魔法『イリュージョン・ベール』で身を潜めている。

 信太郎が暴れている隙にエアリスがマリ達の元へと運ぶ手はずになっている。

 また、エアリスは信太郎に一つ注文を付けた。

 森は壊さず、ゴブリンだけブン殴りなさいと。



 一人で突っ込む信太郎を矢の雨が出迎えた。

 当然すべての矢にはたっぷりと毒が塗られている。

 僅かでも体内に入ればアウトである。

 普通の冒険者なら間違いなく怯む矢の雨へと信太郎は飛び込む。

 チート能力のおかげで信太郎の肉体強度はベヒーモス並みだ。

 ただの矢など通るわけがない。



 信太郎は森を壊さぬように気を付けながら、ゴブリンを殴り倒していく。

 剣に槍、投石や毒矢が体に叩き込まれるが、蚊の一刺しにも感じてないようだ。



 信太郎は「ゴブリンだけを殴る。森は壊しちゃダメだ」とブツブツ呟きながらゴブリンを殴り倒していく。

 そんな信太郎に恐怖したのか、ゴブリンたちは逃げ出した。

 追いかける必要はない。

 信太郎たちの目的は薫の救出であってゴブリンの殲滅ではないからだ。

 そのくらいは信太郎も分かっていたのだが……。



「おお!? か、体が勝手に……!? なんで俺追いかけてんだ?」



 なんと信太郎は背を向けて逃げ出したゴブリンを追いかけてしまった。

 これには信太郎自身も驚いていた。

 何故か追わねばならない気がしたのだ。



 肉食動物の中には背を向けるものを追う習性を持つ生き物もいる。

 実はベヒーモスもその習性を持っていた。

 己に宿るベヒーモスの習性のせいで、信太郎は本能のままに獲物を追いかけてしまったのだ。




 森の中に逃げ込んだゴブリンだが、ある場所で反転すると、槍を構えて一丸となって信太郎を待ち構えた。

 野生帰りした信太郎がそこに飛び込んだ瞬間。



「うおっ!?」



 信太郎の足元が崩れ落ちた。

 ゴブリンはこの森のあちこちに罠を仕掛けている。

 この落とし穴もその一つで、穴の底にびっしりと用意された槍が信太郎を出迎えた。

 予想以上にあっさりと引っかかったことにゴブリンも驚いているようだ。



 落とし穴から出ようとする信太郎の耳に風切り音が聞こえる。

 視線を上げると、先の尖った巨大な丸太が突っ込んでくるのが見えた。

 ゴブリンが丸太の罠が作動させたのだ。

 丸太が信太郎の頭に直撃し、森の中に重低音が響く。

 さすがにタダではすむまいとゴブリンリーダーは笑みを浮かべる。



「あ~びっくりした! アスレチックでこんなの見たなぁ!」


「グゴゴッ!?」



 無傷で穴から這い上がってきた信太郎を見てゴブリン達が驚愕する。

 それを見たゴブリンリーダーの判断は素早かった。

 腰の角笛を吹いて仲間に撤退の合図を出すと、特製の煙玉を投げつける。

 獣が嫌がる薬草をたっぷり含むこの煙玉は、ゴブリンが大型の魔物から逃げる時に愛用しているものだ。

 煙玉は信太郎の足元に落ちると大量の煙を吹きだす。



「お?なんだ……うおおぉっ!? くっせー! は、鼻がぁぁっ!?」



 信太郎の鼻が焼け付くように痛む。

 まるで熱く煮えた汚物とトウガラシを鼻に突っ込まれたようだ。

 悶え苦しむ信太郎を尻目に、ゴブリンは大量の煙に紛れて素早く撤退していく。



 ベヒーモス並みの肉体を持つ信太郎は嗅覚もチートで、そこらの犬より鋭い。

 信太郎にこの煙玉は効果抜群だったようだ。



 苦しむ信太郎は森の木々をなぎ倒しながら地面を転がっていく。

 煙から逃げ惑う信太郎だが、風下だったせいで煙に囲まれてしまう。

 そんな信太郎の視界に川が映りこむ。

 逃げ場を失った信太郎は、たまらず川の中に飛び込んだ。


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