とある日
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ここは黄金の国、ジパング。
八百万の神々がいると言われているこの国の、とある場所のとある神社、そこに奉仕する神主、巫女、時々神様のちょっとしたお話。
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とある神主の話
今年で26歳、彼女絶賛募集中。
この地域唯一の神社の跡取である俺の朝は早い。
目覚ましがなって、目が覚める。
これか毎朝一苦労、決死の思いで布団から出る。
身支度を整え、まずはお供え…神饌の準備だ。
毎日広末さん家…近くの農家から新鮮な野菜、果物などなど届けてもらっている。
余談だが、これは曾祖父さんのときから1度たりとも変わっていないし、時間も変わらず。
さすが、農家の朝は俺よりも早い。
いつも生き生きとした品をありがとうございます。
酒、米、塩、水、野菜、果物
いつものとおり、これらを並べて、神様の前に持っていく。
さあさあ、今日もおいしいご飯ですよー。
気分は一流ホテルのコックだな。
扉を開け、神前へ。
朝一番に入る御殿の空気はとても澄んでいる。
朝日が横の窓からスッと入る。
自画自賛的だが、うちの神社はいつみても神々しい。
小さい頃はなんだか怖い気もしたが、俺はこの神社が好きだ。
手入れは親父と共に頑張ってるつもりだし、こんなところ継がないなんて言ってた時期もあるが、今では跡取りとして頑張っているつもりだ。
正直な話、神様なんているかわからないが、うちの神社には本当にいそうな気がする。
がしかし、朝は静かすぎていないような気もする。
もしいたとしても、神様はひょっとして俺が来るまで起きていないのではないだろうか。
なんて妄想を毎日しつつ、お供えを終える。
さあ、一仕事終えた後はやることは一つ。
二度寝だ。
ここから掃除をすりゃいいものを、布団の誘惑には勝てん。
神様よ…数時間後にしっかり掃除するからさ、ちょいと寝かせて下さいな。
とある神様の話
今年でここに祀られて何百年経ったことか。
もう、よく覚えたおらん。
ここらの山に住むただの狐だった私が、いつの間にやら主にされ、いつの間にやら神とされ祀られて、いつの間にやら時間が経った。
朝は扉を開ける音で目が覚める。
あいつが来た。ここの跡取り息子の神主だ。
こいつはなかなか面白いんだ。
毎日毎日凄く眠そうな顔でやってくる。
やつらは私のことが見えないからしょうがない。
にしても、毎日締まりのない顔が笑えるのだ。
ここにいれば食い物には困らんし、何より私は人間を見るのが好きだ。毎朝面白い顔が見れるしな。
供えられた食い物は美味い。ここ数十年は特にだ。
朝の食い物を置いて行く、アイツの後ろ姿を見つつ何が供えられたか確認する。
ラッキーだ、今日はトマトがある。
トマトをかじりつつなにをするか考える。
1日は長い。
どうせ、神主がまたここにくるまで時間がある。
やつがまた来るまでもう少し寝ておくか。
そうして朝の清々しい空気を感じつつ私ははまた眠りにつく。
とある巫女の話
やばいやばいやばいやばい!
遅刻遅刻遅刻遅刻遅刻遅刻遅刻遅刻遅刻!
朝から神社の階段を駆け上がる。
今日は寝坊してしまった。
ああ、神様。
こんな無様な姿を見ないでください。
騒がしくしてすいません。
今日のところは見逃して下さい。
こんど何かお供物を持ってきますから。
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ここは黄金の国、ジパング。
八百万の神々がいると言われているこの国の、とある場所のとある神社、そこに奉仕する神主、巫女、時々神様のちょっとしたお話。
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