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84 番外 彼の遺品

 報告会は続いていた。 

 ヒメヒナ様は鼻歌を歌うオーフェンから視線を外して私の前にある黒篭手を見る。


「この篭手は元は私の師が作った者で完全な状態だったら欲しかったんだ。

 時には手段を問わず奪おうとしたのもはあったかもしれないな。

 そう、例えば王国内で毒を配布するとか……」


 私はどきっとした。

 カーヴェの町の賊の事だ。


「聖騎士が居る限り王国内では勝手な事はさせません」

「別に私がしたわけじゃない、私に話を持ちかけてくる人間が居ただけさ。

 私は彼らには篭手やヒバリが作った物が欲しいなと、それしかいっていない。

 彼らが勝手に寄っては去っていくだけさ」


 きべんだ。

 何を考えているがわからない人……。


「王国内で……」

「はっはっは、安心したまえ暫くは大人しくするさ。

 なんせ、ベッドの中でサンドローに怒られたからね」


 ミニッツ王子とオーフェン、そしれに私が思わず咳き込んだ。

 だって、サンドローと言ったら、帝国の現王で、ミニッツ王子の父、サンドロー王しか思い浮かばないからだ。


 しかも、ベッドの中って……。


「おや? 以外な顔をしているね。

 彼はまだまだ元気だよ、昨晩もそそり立つ――――」


 パンっ!


 ミニッツ王子が大きな音を立てて手を叩いた。


「父の話はそれぐらいにしてもらっていいかな……あまり実父のそういう事は聞きたくは無い」

「おっと、王子のご機嫌を損ねてしまったかな?。

 その篭手は完全な状態でほしかったのさ、今となっては残った魔力も少ない。

 ヒバリへと手渡してやってくれ」


 疲れた顔の王子が私達を見る。


「と、いうわけです。

 残念ながら帝国で出来る事はすくなく、せめてお二人の親族にこれを渡してください」


 小さな箱が三つだ。

 中を開けると宝石が入っている。


「二つは遺族へ、もう一つは迷惑をかけた君達への旅費にでも」

「わかったわ……」

「嫌な役をすまない」

「へーきへーき、隊長してるとあるのよ、こういう事」


 私たちは城を後にする。

 昨晩と同じ宿、私は部屋で溜まりに溜まった報告書を書く。

 なんども現在の状況をアデーレではなくマリエルが書いてくださいと、ファーの手紙にあった。

 めんどうなんだもん……。


 手紙には事実を書く。

 フローレンスはマキシムによって殺された。

 私たちも戻ると、滞在費は王子からの好意でマイナス所かプラスになった事を書きとめた。

 ヴェルの事は最初から知らせていない、こちらの意図を汲む現地の人間と知り合ったとだけ伝えてある。


「ふう……。こんなものかな」


 トントン。


「隊長、お茶をお持ちしました」

「ありがと」

「あ、報告書ならアデーレさんが……」

「んー。たまには書かないとねお茶を飲んだら手紙だしてくるわ」


 いつもなら代わりにいきます! というコーネリアは、いってらっしゃいですとだけ答える。

 いい部下を持ったわ本当に。

 気分転換もかねて、城下町を歩く。

 腰にはヴェルが使っていた剣。

 どうみても聖騎士のだ、過去にハグレになった聖騎士からもらったのでしょうね。

 その辺も聞きそびれた。


「あーもうっ! なんでもかんでも一人で溜め込みすぎなのよ!」


 思わず叫ぶと、周りの人が私を見る。


「は、はやくハラワナイトー……」


 適当にごまかして足早に去った。

 手紙屋へと付く頃には気分も落ち着く。


「らっしゃーい」

「手紙と荷物を頼むわ、マミレシア王国まで」


 指定されている宿へ届けるようにお金を払う。

 私の顔を見て店主が不思議そうな顔をした。


「はいよ、ってあれ……。

 あんたいっつも来る黒髪にいちゃんと一緒にいる人よな?」

「……そうね」

「いやな、あの兄ちゃんの荷物預かってるけど料金が滞納していて、後で来るように言ってくれ」


 ヴェルの荷物?。

 私は城で全部受け取った。


「預かってるだけ?」

「ああ、後で取りに来るからと料金もらってねえんだわ」

「彼先に国に帰ったわよ」


 もちろん嘘。

 でも、本人が取りにこれないのは本当だ。


「まじかー……。しゃーねえ後数日まって破棄するか」

「ねえ、ちょっといい話あるんだけど……」


 私は手紙屋を出た。

 手にはヴェルの荷物だ。

 いくら知人でも預かった荷物は他人に渡せない、そういう店主に私は聖騎士の証明書を見せた。

 それでも渡せないと渋い顔をしていたけど、いくつかの宝石を手渡すとしぶしぶ納得してくれた。

 ヴェルの残したもの、なんだろう……。

 さすがに道で開くわけには行かない。


 宿に戻ってこっそりあけよう。

 私達に見られたくない荷物、えっちな絵や道具だったらやだなー……。

 ヴェルに限って、ううんヴェルだからこそ……ありうるというか。

 その時はこっそり始末するからね。


 ああもう、早く戻ろうっと。

 

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