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78 ヴェルの今後の方針と考え

 上位四人が決まった。

 あ、僕の相手はちょっと強い兵士で、苦も無く勝てた。

おかけで運がいいのか悪いのか上位四人の中に入ってしまった。


 帝国側からは、顔無しと部隊長をしている中年の男性兵士。

 王国側からは……、僕を王国側に入れるのは違う気がするけど僕と、マリエル。


 本来はジンが入るはずなんだけど、ジンが暴れた為に失格になった。

 マリエルは辞退したけど、人数もたりませんしと、必死にお願いされて残る事になったのだ。

 そのジンであるが戦場で会いたいから、王国と戦争しないかなーと発言して周りをドン引きさせた。


 夕方になり、待ち合わせた城下町の酒場へと僕らはいる。

 僕はと言うと少し用事があり遅れた。

 オーフェンの事もあり、フランへと手紙のやり取りをしていた、さすがにそれをマリエル達に知られるわけにはいかない。


 既に四人が座っている。

 ちょっとした祝勝会だ。


「すみません、遅れました」

「皆きたばっかよ。

 じゃ、とりあえず乾杯ー」

「かんぱーいっ!」


 マリエルとフローレンスお嬢様の元気な声が貸切スペースに響く。


「隊長は明日もあるのですから、お酒は控えましょう」

「いーじゃない、一杯ぐらい」

「では、少しだけですよ」

「ほらほら、コーネリアもヴェルも飲んで飲んで」


 振られたコーネリアは、少しだけというと小さく飲み始める。

 フローレンスお嬢様をみると、コップに並々に注がれた果実酒を一気に飲んだ。


「なっ、フローレンスお嬢様っ!」

「なーにー?」

「いえ、飲んだ事ありましたっけ?」

「ぜんぜーん、お酒っておいしい」


 まずいだろう。

 あはははと笑っている。


「さて、全て上手く回っているんだけど……二人とも終わったらどうするの?」


 マリエルが静かに喋るとコップを置いた。

 恐らく全員がなんとなく避けていた話題だ。


「帝国の王子様から毒の事の調査は終わった、現段階では帝国が関与してるとはいえないらしいわね、ただ過去に研究していたのはあったみたい」


 帝国は関与していない、予想されていた答えだ。

 でもその代わり、王国内で見つければ徹底的に叩けるというお墨付きみたいなものだ。


「で、次にフローレンスちゃんの事」

「なんれふー?」


 顔が赤いフローレンスお嬢様を一度見たあとに話が続く。


「連れ去った事は大問題であるけど、本人がこの調子だし、顔無しが正式に謝罪を王国に送ったらしいの、今回は死者も出てないしこれ以上大きな問題にならない」


 これも、想定していた事だ。


「で、問題はここからでえ。

 私達は遅くても五日後にはここを出る事になるのよ。

 試合は二日、次の日にささやかなパーティーがあるみたい」


 言いたい事は伝わってくる。

 僕の身の振り方だ。

 でも、これは前々から思っていた事を話す。


「そうですか、僕は……」


 喋りだそうとすると、全員が沈黙をする。

 先ほど酔っていたフローレンスお嬢様も今はだんまりで僕を見ていた。


「あの、そんなに注目されても。

 僕は少し旅にでようかと思ってます」

「「「「…………」」」」


 なぜか全員の視線が刺さるような眼つきだ。

 コーネリアが小さく手を上げる。


「あの、行き先は決まっているんですか?」

「特に、でもアトラン地方へと行って見ようかと、駄目なら駄目で別の場所を」


 思い出が重すぎる。

 皆の中ではしらないが、僕の中では彼女達は一度死んでいる。

 普段はきにしないけど、たまに過去の彼女達とかぶる時がある、そういう時がたまに辛い。

 先日のフローレンスお嬢様から言われた家族という言葉、あの時も昔のフローレンスお嬢様を思い浮かんでしまった。


「アトラン地方って王都から船のほうが近いわよ」

「ええ、でも王都には入れないでしょうし」

「それだったらヒバリ様に相談すれば」


 僕はマリエルの言葉に首を振る。


「欲しいのはこの黒篭手でしょう。

 僕自身に価値はありません」

「じゃぁ、その黒篭手をはずれない事にして王都へいっちゃえばっ!」


 マリエルが言うのは過去の自分の話だ。

 でも、今は外そうと思えば外れる。


「その事なんですが、この黒篭手はこちらのヒメヒナさんも欲しがっています」

「そうなの?」

「ええ、多額の報酬を提示されました」

「じゃ、売ったほうがいいわね」

「ヴェ、ヴェルお金持ちになれるじゃないっ!」


 目的がわからない以上売らないほうがいいだろう。


「えーっと売りません」

「所でその篭手、そんなに欲しがるって事は何か秘密があるの?」


 マリエルだ。

 うすうすは感づいているのだろう、結構直球で聞いてくる。


「どうでしょう、御二人の師が作りフェイシモ村に祭られていたと聞きます。

 恐らく、どちらかの手に渡っても火種を生むと思います。

 なので」


 僕は黒篭手を外しつなぎ目へと力を入れる。

 無地の黒篭手が二つに割れた。


「え?」

「は?」

「大丈夫です、完璧にこわれてはいません。

 ここと、この場所ですね。

 そのつなぎ目を外しました。

 一個はマリエル達が持ち帰り、もう一個はヒメヒナさんに手渡したいと思っています」


 僕はもう一度つなぎめをつなぎ、腕へとはめた。


「全ては大会が終わってからですけどね」


 二つに割ってしまえば、お互いに悪用もできないだろう。

 これは僕が数日前にオオヒナへと相談した時に、オオヒナが言った提案だ。

 

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