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69 帝国の毒

 僕達五人は顔無しの後へと付いていく。

 顔無しが立ち止まる。


「フローレンスはここでまてだ」


 扉を開けてフローレンスお嬢様だけを中へと入れた。


「一人で待たせたら危険じゃないかしら?」


 マリエルが呟くと、扉をしめようとした顔無しの動きが止まった。

 簡単にいうと罠の可能性もある。


「一人護衛をつけてもいい?」

「好きにしろ」

「ありがと、アデーレ」

「わかりました」


 アデーレはフローレンスお嬢様と同じ部屋へはいり扉を閉めた。

 アデーレなら安心だろう。

 機転も利くし冷静だ。


 残った僕達は別の部屋でと連れて行かれた。

 入れと、命令されて僕達は入る。

 顔無しだけが出て行った。

 調度品がならび、革張りのソファーと磨かれたテーブルが置いてある。

 応接室な感じだろう。


「部屋に閉じ込めてズトーンって事はないわよね?」

「こ、怖い事いわないでください」

「ごめんごめん」


 部屋がノックされると、許可も無しにあいた。


「あっ……」

「よ、よう、ヴェル……」


 車椅子にのったオーフェンが、入ってくる。

 それを押しているのは、線の細い男性だった。


「ヴェル、知り合い?」

「はい、僕がこっちで世話にな……なったのかな?。

 そんなような人です」

「ひでえな、それよりヴェル。

 この美人さんはだれだっ」


 オーフェンはマリエルとコーネリアを交互に見ている。

 マリエルは小さく手を振る。


「王国マミレシア所属聖騎士、第七部隊隊長のマリエル。

 こちらは、同じく隊員のコーネリア」

「噂の美人部隊か……、おい、ヴェルなんで知り合いって黙っていたっ!」

「特に言う必要もないし、あの時はここまで親しくなかったからね」

「そうね……、まだ記憶も――――」

「とにかくっ!! 命は無事でよかったよ。

 後ろの人は?」


 マリエルが変な事を言い出す前に僕は背後の人の事聞く。

 茶色い髪で全体的に線が細く、優しそうな雰囲気だ。


「君達の挨拶を見ていて遅れてしまった。

 これの友人でミニッツという」

「どうも」


 僕は手を出すと握手をする。

 マリエルのほうをみると、険しい顔になっていた。

 その険しい顔のマリエルがミニッツへ尋ねる。


「もしかして、ミニッツ・クラム・アールベインといいませんか?」

「あはは、やっぱり知っているか。

 そうだね」


 マリエルが膝を付いた。

 横にいるコーネリアが慌ててマリエルの真似をする。


「いや、やめて欲しい。

 ここにいるのはコレの友人としてだし」

「で、ですが」

「ええっと……?」


 僕の疑問に、オーフェンが答える。


「コイツ一応は王子だしな」

「一応ね」

「なっ」


 僕も膝を付こうとすると、止められた。


「あくまで、オーフェンの友人という立場だ。

 楽にしてくれ」

「まー楽にしろっても難しいだろうな、帝国の王子っていったら現王が高齢で出来た子」

「周りからは失敗作といわれているけどね、僕の友人を心配して城まで来る人をみてみたくてね」

「その足は……?」

 

 僕はオーフェンの足を見て話す。


「なに、折れてる程度だ。

 向こうの兵士にも俺の顔を知っている人間がいてな……暫くは動けそうにもない」

「そっか、でも無事でよかった。

 一応君の安否を知らせときたい相手もいたからね」

「わりいな」


 オーフェンは車椅子から立ち上がろうとする。

 案の定転びそうになった。

 近くにいたコーネリアがその体を支えて一緒に倒れた。


「だ、だいじょう……きゃ、あのっ、あんっ!」

「聖騎士の胸、尻、はークンカクンカクンカ」


 ミニッツ王子が、オーフェンを引き離そうと怒り出す。


「馬鹿キミは帝国人をなんだとっ」

「ばかやろう、だからお前らはムッツリスケベなんだ。

 こんな美人を前にして抑えきれるかっ!」

「た、隊長たすけ……、やん。

 そこはまずいです、本気でま……」


 オーフェンがコーネリアのズボンの中へ手を入れようとしている。

 僕とマリエル、そしてミニッツ王子が全力でコーネリアを助け出した。


 僕らは今ソファーへ座っている。

 目の前には顔を腫らしたオーフェンと、その隣にはコーネリアへと平謝りするミニッツ王子。

 腫らした理由は本当に危険な所に手が言ったらしく、コーネリアの平手打ちの後だ、その反対側はマリエルの平手打ち。


「あの、もういいですから。

 その事故だったという事で……」

「それでは、我が国が変態ばっかりと思われてしまう」

「王子の親友が変態じゃ、周りの人間も変態っておもわれますわよねー」


 マリエルがちくちくと言うと、ミニッツ王子はますます小さくなる。


「本当にすまない。

 オーフェン、君も謝れ」

「俺はコイツの親友でもあり危ない事もする、足もこんなざまだ……。

 そこにツイ天使のような可愛い子が現れて、悪い事だっていうのはわかっていたんだけど、本当にすまない」


 真面目な顔で語りだすオーフェン。

 うわー……。

 絶対反省しないなこれ。

 コーネリアを見ると、騙されたのかコロっとなっている。


「いえ、その可愛いとか……。

 隊長のほうが可愛いと思いますし、その、あの」

「はいはい、色々と本題に入りたいんだけどー」


 マリエルが手を二回ほど叩いて場を仕切る。


「とりあえず、ヴェルの問題は解決ね。

 次に、護衛してきたフローレンスさんの問題。

 彼女、おたくの所の顔無しってのにストーカーされているんですけどー。

 一応関わった以上、彼女の身の振り方を決めてから王国に戻りたいのよ…………じゃないと、ファーに殺されそ」


 本音がちらっとでた。

 ミニッツ王子とオーフェンはお互いに何か目配せをした。


「帝国は一応自由恋愛という決まりがある」

「王国もそうよ」

「いやすまない、王国よりは帝国のほうが自由度が高い」


 そうだろうなと僕は思う。

 王国内で貴族と平民が結婚したと言う話はあまり聞かない。


「その二人が納得していれば、僕達から何かいえる事はない」

「うーん、じゃぁ。ヴェル」

「はい?」


 突然マリエルに呼び止められる。


「オーフェンって人は信じられる?」


 僕はオーフェンとマリエルを交互に見る。


「そうですね、女たらしで、ハンカチの代わりに女性の下着が出るような男で、大事な用があるからと僕をぼったくりの店へ連れて行ったり、真昼間から裸の女性の家へ無理やり入ったりとする人ですけど……」

「ばっ! おまっ!」

「なるほど、キミの高額な任務請求書はそういう店での代金か」


 ミニッツ王子と、オーフェンが何か喋っているけど、構わず続ける。


「それでも、何も知らない僕を信じてくれた奴です」

「ありがと、じゃぁ……私も信じる。

 これ、なーに?」


 マリエルは小さい小瓶を二人の前に出す。

 黄色い液体が半分ほど入っていた。

 オーフェンがその小瓶を見て口を開く。


「マリエルさんのおしっこか?」

「なわけないじゃないっ! どこの世界に自分のおし……」

「おし?」


 オーフェンがにやにやしている。

 マリエルは怒り顔から、一気に息を吐いて深呼吸する。

 横にいるコーネリアがマリエルの背中を必死にさすった。


「はーはー……、どこの世界に自分の排泄物を他人に見せる女性がいるのよ。

 能力者の、いえ聖騎士の力を無力化する毒よ。

 王国と帝国の両一部が関わっているまで判明したわ」


 部屋の空気がピリッとした物に変った。

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