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55 開放的な場所です Ⅱ

 着替えを終えた僕達は町を歩く。

 大きな通りから抜け、小道へと入った、街中に張り巡らされた路地は細くなるたびに臭い匂いが充満してくる、恐らくはあまり掃除されないのだろう。

 そのままオーフェンの後に続くとどこかの店の裏口が見えた。

 立ち止まるとノックもせずに中に入っていた。

 僕も慌ててその後を追う。


 鼻に付く強い匂い。


「香水……?」


 視界には白い壁にカウンターがあり、その上には大量の花が花瓶に飾られている。

 奥には扉も見える事から、カウンターの裏口から入ったが確認できた。


「オーフェンここは?」

「んあ?。おっと、説明は後だ」


 右側には二階へと上がる階段があり一人の女性がゆっくりと降りて来る。

 背の高い女性で腰まである長い銀髪をなびかせいた。

 気だるそうな顔で、耳は見た事が無いぐらいに長く尖っている。

 赤いパンツ一枚だけで、上半身は小ぶりの胸丸出しだ。


「すみませんでしたっ」


 僕は慌てて横を見る。

 階段のほうからは、欠伸が一つでると。


「んんん、誰?」


 と間抜けな声が聞こえてきた。


「ああ、なんだ。

 オーフェン、お店は夜からだよ」


 裸を見られているのに特に気にしたような声もない女性は、階段を上がっていく音が聞こえる。


「マチルダ姐さんに頼み事をしたくて」


 オーフェンの声の後に手を叩く音。

 恐らく頼み込んでいるのだろう。

 気のぬけた返事で裸の女性事、マチルダさんが僕らに指示をする。


「んーー、なら二階に来て」

「だってよ、ヴェルいくぞ」


 マチルダさんの綺麗な背中を見ながらオーフェンが後に続いていく。

 いや、あの……彼女、裸なんだけど。


「これからの事なんだから、早く来いって」

「ああ、うん」


 呼ばれるままに二階へ上がると小さなスペースにベッドが一つ。

 後は衣類が散乱していて足の踏み場が無かった。


「あー……適当に服除けて座って」

「ういー」


 オーフェンは手当たりしだいに服を寄せ集め。大人二人分のスペースを作る。

 そしてポケットに服の一部を何事もないように詰めた。

 上半身裸のマチルダさんはベッドの上で胡坐をかくとオーフェンへと指をさす。


「それまだ新品思うから、もって行くならこっち持っていって」


 枕元からパンツを丸めるとオーフェンへ投げる。

 それをキャッチするオーフェンはポケットから新品のパンツを出すとマチルダさんへと投げて返した。


「んー? どうしたの」

「いや、えーっと」

「ああ、そうか……君も欲しい……かな。

 えーっと……うーん、今履いているのでいいかな」


 ベッドの上で立ち上がるり腰に手をかけるマチルダさん。

 太ももの両側左右に二本の指を入れるとゆっくりと腰を落とす。

 体がくの字に曲がり豊満な胸が左右に揺れ始める。


「まったまったまったっ」

「ん? ああ、なるほど。

 ショーツより靴下のほうがいいのね。案外マニアック……」


 気のぬけた返事をすると脱ぎかけのパンツを戻し、四つんばいになる。

 ベッドの反対側にある衣服の山から靴下を探しているのだろう。

 少し多きめのお尻が目の前で踊っている。


「違いますっ!

 ぜんっぜん違いますからオーフェンっ」


 僕はオーフェンを見るとと、オーフェンは腹を押さえ笑いを堪えている。

 僕は思わず鞘の止め具を外すと、オーフェンへといつでも抜ける体勢へともっていく。


「ぶはっはっはっはっは。

 いやーわりいわりい、マチルダ姐さん今日はそっちじゃないんだ」


 そっちじゃないって言葉はスルーしておこう。


「んー? ちがう?」

「そうそう、いやーごめん、あまりにもコイツ。

 あ、コイツヴェルって言うんだけどさ、反応が面白くて」

「オーフェン、怒っていいかな?。

 それにマチルダさんも服を来てください、恥ずかしいです」

「んー。

 人は皆生まれた時は裸、別に恥ずかしい事じゃない」


 自らの胸を両手でさわり、次にお腹へと手をあて最後にパンツの上に手を動かしていくマチルダさん。


「見てるほうが恥ずかしいんです」

「んー見られてるほうはそうでもない、むしろ快感に変る」

「…………せめて何か羽織ってください」

「断る、私は困らない……。

 それに、店に来たのは君達、ここは私の店」


 僕の提案を全て却下するマチルダさん。段々と腹が立ってくる。

 僕の顔みてマチルダさんが、気のぬけた声で小さく呟く。


「んー。ほら、私をみる恥ずかしさが無くなっている」

「怒り方が先に来てますので……。

 でも、勝手に来た人間が文句を言い出し、マチルダさんが怒る気持ちもわかります、すみませんでした、降参です」


 凝視はしないけど目にはいる分には僕も慣れて来た。

 相手が気にしないというのであれば、こっちが気にするのも馬鹿くさい。


「んー素直で宜しい。

 でオーフェン、今日はなに?」

「っと、これを見てくれ」


 懐から一枚の地図を出すオーフェン。

 汚れた衣服を手で押しのけると全員が見える位置に広げる。

 帝国の地図で僕はまったく知らないが何個も町や城、洞窟が書かれていた。


「あいつらよりも早く帝都に先回りしたい」

「んーあいつらって、誰」

「ジン」

「んー……難しいなぁ、来ないだの任務が失敗した話だよね……」

「あれは、俺がジンに手柄を譲ったのっ。

 最後に箱を奪うのは俺だし」

「そういうのを負け犬の遠吠えっていう……」

「ぐぬぬ……」


 枕もとに手を入れるマチルダさん、取り出したのは筆であった。

 墨もなにもつけなく、地図の上を走らせていく。


「わかった、こことここは繋がっている。

 こっちはダメここはの道は潰れた、この辺とあっちもいける――」


 マチルダさんがベッドから四つんばいになり指示していく。オーフェンが地図の上に丸やバツ印などをつけて行っている。

 地図上では湖や崖になっている場所を線で結んでいく。

 流石にここまで来ると僕でもわかる、大男いやジンよりも早く先回りする道を聞いているのだ。



「本当にいけるの」


 思わず呟くと、二人の視線が僕へと向く。


「大丈夫、たぶん、うん、おそらく」

「ヴェルこのマチルダ姐さんはな、実は娼婦館の主だ」


 途中から、そんなようなお店ってわかっていたよ。


「で?」

「そして娼婦を抱くような奴ってどんな客と思う」

「えっ突然」

「いいからいいから」


 考えても出てこない。

 育った村ではそういう店はないし、タチアナの町でも飲む所はあったけど女性を抱く専門の店は流石に聞いたことがない。

 でも、金周りがいい人間がいく店となると……。


「貴族……とか」

「かー、まぁ半分正解って所だな。

 商人や兵士などが多いな、そしてそいつらは何でも勝手に話して行く。

 そしてマチルダ姐は俺達にヒミツを教えてくれる」


 元気欲こたえるオーフェンの言葉をさえぎり、マチルダさんがだるそうに話す。


「んー、ちょっと違うけど……。

 貴方達にも言えない秘密は沢山ある、けど彼らが通った獣道までは秘密じゃない。

 彼らは利益や任務のために抜け道を多く知っている……。

 ジンは人質を連れて歩くから大きな道しかいけない、私はそれを教えて欲しいという人に対価を貰い話すだけ」

「理解しました。

 マチルダさん感謝します」


 僕は頭を低く低くさげる。


「んー……苦しゅうない」

「僕が渡せる物といったら」


 皮袋を腰から取り逆さにする。

 先ほど衣服を買ったので少なくなった金貨や銀貨を手のひらに出すとマチルダさんに手渡そうと手をだす。


「いらない」

「まー、姐さんは金には困ってないからなぁ」

「ん……そう。

 別にお金には困ってない、オーフェンに借りを返してるだけ、もし君が本当に私にこの恩を返したいと思うならこっちが欲しい」


 左手の親指と人差し指で輪を作り。

 右手の指を二本、出しては引き抜いたりしてる。


「その相手だったら俺がっ」

「んー君とは先週やったから暫くはいい。

 私はまだ見ぬお宝を感じたい」


 逃げたほうがよさそうだ……。


「今は時間が欲しいので、いずれ別の形で恩を返したいと思っています」

「んー、わかった。別に充てにはしてないから気にしにないで」

 

 僕はオーフェンの腕を引っ張って店を後にした。

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