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54 開放的な場所です Ⅰ

 フランが住んでいる家を出た。

 後から知ったが、近隣の町からそこそこ離れた場所に彼女は住んでいたらしい。


「さて……、この辺でいいか」


 少しだけ開けた所で、先頭を歩いていたオーフェンが振り向いた。


「悪いが、このままのお前を連れて行く気はねえ」

「そう、だったら町までは頼みます」


 元から、そんな事も想定していた。

 オーフェンの立ち居地がわからないけど、察するに帝国に所属する人間。

 そんな彼の仕事に、うさんくさい僕が付いていくというのはどうかとも思う。


「かーっ!

 何でも悟ったような顔をしやがって……、フラン姐も何でこんな奴を信用して」

「それは僕に言われても困る」

「そうだな、とりあえず死ねっ!」

「っ!」


 目の前に刃が飛んでくる。

 オーフェンの手には二つの剣が握られていた。

 手を交差するように組むと、僕と距離を取って居る。


「戦う理由はないんだけど……」

「お前に無くても、俺にはあるっ!

 毎晩毎晩、フラン姐と一緒にいやがって……、手料理までっ!」

「それはまぁ、看病してもらったので」

「そのくせ手を出さないとは」

「いやいやいや、出したら駄目でしょ」

「…………俺なら出す」

「一応聞くけど、仮に手出していたらどうするの?」

「斬るに決まってる」


 僕に向かって小さい袋を投げてくる。

 その袋をよけようとすると、オーフェンが笑った気がした。


「甘いっ!」


 その袋へと剣を刺すと、袋が空中で爆発した。

 辺りには粉塵が巻き起こる。

 その隙にオーフェンが切りかかってきた、僕も受け取った剣を使いそれに応えた。


 ――


 ――――


 ――――――


 夕方には町にへと付いた。


「よう、どうだ帝国は、開放的だろ」


 オーフェンが白い歯をみせて僕に自慢してくる。


「この格好でそれをいう?」

「別にいいだろ」


 僕もオーフェンも衣服がボロボロになっていた。

 オーフェンに関しては身に着けているのは、ベルトと剣と鞄とパンツだけ。

 誰か見ても変態スタイルだ。

 王国だったら即捕まるだろう。

 僕のほうも、あちこち破けた衣服を着ている。


 オーフェンもハグレだった。

 いや、帝国出身の彼にハグレというのはおかしいのかもしれない。

 能力者という分類。

 帝国に限らす、そういう人間は多いと……、王国だけでは知らなかった話だ。

 ただ、能力者といっても傷を早く回復するなどは、あまりいなく力が強いや足が速いなどそういうのが多いとの事。


 簡単に言うと、僕の力を知りたかったらしい。

 一緒に連れて行くのはいいとしても、お互いの力がわからないと作戦も立てれないからと。

 本人曰く、あえて挑発をしても乗ってこないので試したと。

 あの粉塵は能力者の力を抑える粉塵らしく僕はまともにそれをくらった。


 結局、長い戦いの間で決着はつかなかった。

 傷を与えるも回復するし、僕のほうもオーフェンの攻撃へ対応する。

 そのうちにオーフェンが、降参と言って白い女性用パンツをヒラヒラとさせ事情を説明してくれたのだ。

 だったら素直にそういって欲しかった。

 一つわかった事は、僕も本気ではなかったしオーフェンも本気ではなかった事ぐらいだ。


「素直な感想を言うと開放的なんでしょうね」

「そうだろう、そうだろう。

 帝国は常に解放的な国だ」

「いや、王国も開放――」


 開放的だったのか? 王国を思い出す。

 村に来る商人は基本的に王国の人、他の国からくるのは帝国の商人がたまに来る程度。

 それも、本来は禁止されている。


「されてないだろ? いや、悪いわけじゃない。

 他国の侵攻を許さない、そのために騎士団が耐えず国中を回っている、帝国には無い御立派な国だよ、貿易は海を越えたビスマーフィンの国だけだろ」


 僕はなんとなくオーフェンの答えに納得する。


「所でなんでオーフェンは僕と一緒で本当にいいの?」

「ばっ、お前聞いてなかったのか……。

 いやまてよ、そもそも俺の仕事言ったっけ?」

「まったく、フランの家から町まで行くのはわかった。

 力比べもわかりたくないけどわかった」


 僕は首を横に振って答えると、オーフェンは少し真面目な顔になった。


「まぁ帝国の特別部隊と思ってくれていい。

 フラン姐も元はそこ、今は引退してる。

 とはいえ、フラン姐を通して命令が来るって事は半引退みたいなもんだろう」


 なるほど……。


「で、お前はお前で人質を助けたい。

 俺は箱を手に入れ強硬派に泡を見せたい。

 利害の一致って事だ、よろしくたのむぜ兄弟」


 軽いノリで喋るオーフェン。

 こんな五月蝿い兄弟は遠慮しておきたい。


「ヴェルでいいす」

「んっ?」

「僕の呼び方。

 別にお前でも何でも良いんだけど兄弟だけは何となく呼ばれたくないので」

「たーっ、かったいねー。

 兄弟の頼みだ、しょうがない。

 まっ一つ宜しく頼むよヴェル」


 爽やかな笑顔で僕に握手を求めるオーフェン。

 そこが見えないというか数秒考えて握手をする。

 嬉しいのが手を上下に大げさに動かして盛大に離す。


「さて。取りあえず、情報だ」

「その前に……」

「服を買ったほうが」


 さっきから、僕らの周りを通る人がチラチラと見てくる。

 子供が指をさしたら、直ぐ親が連れて逃げるまであった。


「そうだな……、おれは別にこのままでいいけど。

 ヴェル寒そうだもんな」

「逆です」

「たー口うるせいなぁ」

「だったら、うるさくさせないように、してください……」

「へいへい」


 僕とオーフェンは、とりあえず服やへと向かった。


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