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35 番外 メリーアンヌの憂鬱

 待ちわびていた者が城に来た。

 過去に戻れると聞いた黒篭手と、それを装着した者。

 黒篭手のヒミツを知っているのは、現在はわたくしと、ヒバリ様だけ。

 国を治めるわたくしと、何百年も城を護る篭手の管理者ヒバリ様が代々こっそりと教えるのみ。

 ヒバリ様は外見は少女に見えますけど、自称ほむんくるすと言っている人造人間だったかしら。

 なんにせよ、外見は昔からかわらない、わたくしも昔は憧れましたけど、いまではヒバリ様の苦労も少しはわかりますわ。

 ヒバリ様はこれから黒篭手を回収しいくと、わたくしとしても、それがいいと思います。

 謁見の間で一般の少年が篭手をつけていると、騒ぐ人間もおりますでしょうし。


「ヒバリ様、わたくしもご一緒に」

「んあ? 別に篭手の回収だけじゃぞ?」

「ファーランスの手紙によると、あのマリエルと相愛な感じがするって書いているんです、気になると思いませんか?」


 ファーランスというのは、息子達を亡くした私の唯一の血縁者で孫。

 私が死ねば次期女王、もしくは良い人でもいればその人を支える夫人になるはずなんだけど、死と隣り合わせの聖騎士になったのでは、それも諦めるしかない。

 マリエルというのは孫の親友。

 この子も色々あり、よせば良いのに貴族の地位を捨て聖騎士になった変わり者。

 わたくしに出来る事は、娘や娘の親友マリエル達が安心して国を守ってもいいという制度を築く事でしょうか。

 王族や貴族だけではなく、国民から人材を募り国を作るやり方。

 とは言え、あと十数年。

 少なくとも、あと八年は必要。

 義理の弟や、議会制度を反対する人がまだまだいますし……。


「お主、篭手の装着者が暴れたらどうするきじゃ」

「その時はヒバリ様が守って下さります」

「…………」

「…………」

「あーもう、すきにせい」


 着いて行く事に決定し、その後、ヴェルさんとの面会は終えた。

 短い時間ではあるけど、楽しい時間を過ごさせてもらったわ。

 第一印象は、捨てられた子犬のような少年でした。

 何もかも諦め放棄したような眼。

 でも、私の質問に答えてくれた時は真っ直ぐで力強い眼。

 マリエルや、孫のファーランスが気にかけるのはわかる気がしますわ。

 どちらかと一緒に成ってくれると嬉しいんですけど……。

 才能はありそうよね、いっそ聖騎士にスカウトしましょうかしら。

 歩きながら考え事をしていると、ヒバリ様とぶつかった。

 ヒバリ様が回収した黒篭手を保管してくると言うと別れた。


 おそらくは宝物庫の下にある物置部屋に置いたのでしょう。

 ヒバリ様は個人的に大事な物はそこに隠す癖がある。

 さて、わたくしも後でヒバリ様に黙って物置へと向かう事にしましょう。

 先祖の昔の日記から、篭手の起動方法は知っています。

 遠い子孫ならチャンスはあるでしょう?。


 ……


 …………


 ………………


 なんという事でしょう。

 私には遅すぎたと判明。

 やはり、地道にいくしかありませんね。

 ヒバリ様は大丈夫と言っていたけど、最近は帝国側のちょっかいが酷い。

 密偵からの情報ではカーヴェの町を戦場にするらしい。

 義弟のマイボルの息子、ええっと……マキシムって子だったかしら。

 その子が勝算ありっていうから任せたけど、ろくな事にはないでしょう。

 プッケルと第七部隊に任せるしかない。

 いいえ……、いやな予感がします。


 彼に、ヴェルという少年に篭手の場所を教えておきましょう。

 最悪の結果になったとして、彼が篭手に選ばれた人間であれば……。

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