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109 何時ぞやの君は

 ヒバリにヒメヒナ。

 顔の同じ双子が僕らの前で戦っている。

 ヒメヒナの剣激を、ヒバリは懐に隠していた杖で防御する。

 瞬時にだした何を投げつけると二人の間に小さな爆発が起きた。


 正直、この騒ぎに外の人間がなぜ来ないかのか不思議なぐらいだ。


「お主ら、わしに加勢するのじゃっ!」


 ヒバリの声で我に返った。

 それもそうだ、幸い練習場だけあって端に剣が置いてある。

 直ぐに同じ声で別トーンの声が届く。


「いいのかい? 今回の黒幕はこの愚妹だよ。

 まぁ、それでもっ! 加勢するとっ! いうのならっ! 私は容赦しないよっ!」


 ヒバリが投げる爆薬をかわしながら僕らへと声をかけてきた。

 直ぐにヒバリが悪態を付く。


「いつまでも、姉の振りは目障りじゃのう……国を捨てた癖に」

「見聞を広めるといって貰おうか、いつまでも城に引きこもりして何か変わったかい?」


 お互いに攻防を繰り返す。

 普通に考えればヒバリを助けるべきなのはわかる。でも……。

 僕の横でマリエルが一歩前にでた。


「ヒバリ様っ! 王女殺害に新国王行動はヒバリ様が命令したんですかっ!」

「わしが、ここで違うと言っても滑稽じゃろうに、信じたい物を自身で選ぶのじゃ」


 ばっさりと切り捨てるヒバリに、僕らの近くに退避してきたヒメヒナが小さく笑う。


「いやー、数百年見ない間に講釈を述べる立派な人物になって」

「ぶらぶらとしてる奴には無理な相談じゃのう」

「これは手厳しい、せめて姉の手で葬るのが幸せか」


 ヒメヒナは再度ヒバリへと突進していった。

 手前でジャンプすると一回転すると背後を取る、そのスピードは速く一気に首を取りに行った。

 でも、ヒバリも杖でそれを防ぐと薬品を回りへばら撒く。

 

 赤や紫の煙が立ち上る。

 ヒメヒナはその煙を避けるのに一気に後ろへと距離を取る。

 僕らが見ている前でヒバリが煙からでてきた、その目はヒメヒナではなくて真っ直ぐに僕へと向かってきた。


 口元が歪み僕を見ている。


「アデーレっお願いっ! ヴェルっ!」


 マリエルが叫ぶ、アデーレがヒバリに向かって矢を放つも矢の軌道が曲がっていった。

 マリエルが僕の前に立ちふさがった。その剣はマリエルの体を突きぬけ僕へと……、世界が真っ白になった。





「と、言うわけじゃ」


 どういうわけだよと、言葉を飲み込んだ。

 僕の目の前に、赤髪の少女がいる。

 どこかの城の部屋で、どこかの書庫にも匂わせる小部屋。

 何度も通った黒篭手の中の世界。


「マリエルは?」

「そう睨むでない、無事じゃろ」


 その答えに思わずほっとする。

 ヒバリ、ヒメヒナそれと同様の顔を持つ黒篭手の番人オオヒナの顔を見る。


「助けてくれたのかな?」

「いいや、どっちかと言うと別れじゃの。ヒバリの仕込み杖が黒篭手を貫いている」


 思わず言葉を飲む。

 貫かれたという事は、やはり死を意味するのだろうか。

 それであれば恨み事の一つも言いたくなるのだろう。


「ごめん……消えるのかな?」

「消えるな、でも気にするな。ある意味良かった」

「良かったって」

「この世界の中では不老に近いからのう、語る相手もおらずストレスは溜まる。

 終わりがあるから頑張れるってのがあってのうっと、だから別次元の我輩は奴の願いを叶えるために死をっ……そんな話をする事でもないな」

「単刀直入で聞くよ、直す事や解決方法は?」


 僕はこーひーを飲んでいるオオヒナへと質問する。

 僕のせいでオオヒナという存在が消える。

 本人は良かったと言っているけど、やるせない。


「お主は道具に感情を持ちすぎじゃ。ちょっと可愛くて喋る道具だからといって。道具は道具」

「もしかして全部知ってて僕を鍛えた?」

「いまさら細かい事を一から説明するのはだるいのじゃ」



 それでも、オオヒナは説明してくれた。

 そもそも、ヒバリもヒメヒナも元となるオオヒナスズメと言う人物の力を少なからず継承してる。

 元の人間はとても強く魔力があった。


 そこまでは以前聞いたような気もする。

 僕は静に頷く。


「国の安泰を望む人間。力も持っているそんな人間が、クーデーター……暴走を許すと思うか?」

「あ…………」

「我輩も気づくべきじゃった。さて時間は少ないもって後数秒じゃろな、本題に入るかのう」

「本題ってまだあるの?」


 僕が驚くと、周りの世界が崩壊し始めてきた。

 オオヒナの体も一部が消えては出たりとし始める。


「カエル」

「え。どこに」


 思わず聞きなおす。

 帰るってどこに? 僕の答えを聞いて満足そう頷くと、大きなハンマーで僕の頭を叩いた。

 ぴこっと音がなり、痛くは無い。


「思っていた答えをありがとうなのじゃ」

「正解なら叩かなくても……」

「カエル、ゲロゲロっと鳴るカエル。

 ま、覚えていてそんはあるまい」

「……それが?」


 僕が疑問の声を出すと世界は既に暗転した。



 いやちょっと、意味がわからない。



 体が思いっきり揺さぶられる。

 目は開けていたつもりなんだけど、本当の肉体の感覚が戻ってきた。

 黒から白へ目に光が入ってきてうっすらと開けるとマリエルの顔が見えた。


「あれ。マリエル?」

「よかった……」


 アデーレの顔もみえるし、確かヒメヒナって名前の人も僕の顔を覗いている。


「いやいやいや、後手に回った。可愛い私に面して許してくれないか?」

「え? ああまぁ。良くはわかりませんけど」

「許せるわけなっ!」

「しかし、私が来なければ肉塊が三つ出来ていたぞ」

「それはそのー」


 二人が何で言い争っているがわからないけど、仲裁に入るか。

 左手を前に出した所で異変に気づいた。


「あ……」


 アデーレを含む三人の顔が沈む。

 僕の左腕……肘から先が完全に無くなっていた。


「傷口は治療させて貰ったよ、それと薬品をつけさせてもらった。

 愚妹には負けるけど一応私もそれぐらいの知識はある」

「なるほど……再生は」


 ヒメヒナは黙って首を振った。


「腕があれば繋げる事も出来ただろう。

 持って行かれたからなぁー。帝国にくれば義手もあるし、手配しよう」

「どうも……で、とりあえず僕らはどうしよう」


 命を落とすよりはいいか。あと利き腕じゃないはまだ救いだし。

 こう周りが悲しむと逆に冷静になった。

 複雑な表情のマリエルへと向き直る。


「それよね。ヒバリ様が黒幕などはともかく逃げちゃったし人質は居ないし、なんだったら私達はおびき出された罠だったし……ヴェルの腕は無くなるし今すぐ戻って不貞寝したいわよ」

「もう少し付き合うか? 私はこれからヒバリの部屋に行くつもりだ。

 このヴェル君が好きな穴の開いた下着の一つや二つはあるぞ」

「…………」

「ああ、そうか。ヴェル君は足フェチだったな。

 マリエル、君が恋人だろ? 足の指を一本一本絡ませるように踏んっ痛いじゃないか、なぜに叩く」

「変な事を言わないでください」

「変って男ならフェチの一つや二つ当然と思うぞ? それとも君はそういう事に一切興味ない不能な男性なのか? 私の部下は凄いぞ、あの男はあったその日に私に……」

「あのですね。不能とか……」


 横からマリエルの鼻息が聞こえた。


「そうよっ! ヴェルのは凄いんだからっ。 もうこれぐっ……痛いっ!」

「マリエルも辞めて……、その部屋に行ってどうするんですが」

「愚妹のやりたい事は、わかってるつもりである、なに付いてくるなら説明しよう」


 得意げに話すヒメヒナの顔を見ると思いっきり力が抜けてくる。


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