大魔王現る
朝食を終えてから、再びドアを開けエリザベスの部屋に入ると。
「「はぁ、はぁ、ぜぇ、ぜえ」」
と、2人がベットの上でぐったりしていた。
揉みり揉まれ疲れた様だ。
「我が妹をここまで疲労させるとは!」
2人の回復を待つこと5分。
「リル!」
リルさんが体力を取り戻したのを見図ると、エリザベスがリルさんに抱きついた。
リルさんはエリザベスにとって魔王城で唯一心を許せる大切な友人らしく、自分が居なくなったことでリルさんが罰を受けるのではと心配だったようだ。
そんなリルさんから、俺達は重大な話を聞く。
「魔王は私達の様な胸の大きい女性をこの城へと連れ込み、幽閉するのです」
なんと恐ろしい、魔王は魔王城に巨乳の女性のみを攫ってくるというのだ。
つまり、エリザベスは姫だからといった理由で攫われたのではなく、巨乳だから攫われたのだ。
「くっ、魔王め! 貴重な巨乳を、もとい何の罪もない巨乳を我が物にしようなんてとんでもなく悪い奴だ!」
「どうせなら私の世界の巨乳も攫ってくれたらいいのに!」
「「!?」」
俺と静奈の視線がぶつかり合う。
バチバチ
この日を境に、俺達兄妹の運命は大きく揺れ動くことになるとは、この時まだ誰も知らなかった。
しばらくの間、俺が静奈とバチバチしていると。
「誰じゃお前らー!」
と、言葉遣いが外見に相応しくないロリ幼女《貧》が正規のドアを開けて乱入してきた。
「「誰?」」
この幼女が一体誰なのか、何故貧乳にも関わらずこの城にいるのか、その事をエリザベスに聞こうとしたのだが、
「「ひいいいいいい」」
何故かエリザベスとリルさんは、お互いに肌を寄せ合いながら悲鳴を上げ、ガタガタと体を震わせていた。
「わしの城に侵入してくるとはいい度胸じゃのおぅ」
「「和紙?」」
俺と静奈は頭に?の状態
この幼女は何をとち狂ったのか、魔王城をまるで自分の所有物かのように口にした。
「君、もしかして魔王?」
静永がアホな質問をしている。
「もしかせんでも魔王じゃ!」
と思ったけどそうじゃなかった。
完全に予想外だ。まさかラスボスが行き成り登場した上にロリ幼女だったとは、イカツイ角を生やしたおっさんじゃないのかよ。
見た目は貧乳… もとい幼女でも恐らく腕力では勝てない。見た目に反していろいろと強いのだろう。
そう思った俺は、無謀と思いつつも魔王《AAA》に話し合いを挑んだ。
「あの~ ちょっといいかな? 話があるんだけど」
「なんじゃ? 言うてみい」
無謀じゃなかった。普通に話を聞いてくれた。しかも椅子とお茶菓子まで用意してくれた。
意外と良いやつなのかも。
そして、約3分間の会話が行われた。
そこで俺達は魔王の世にも悲しい身の上話を知る事となった。
魔王は見てくれはアレ《ロリ》でも年齢は300歳らしい、そして貧乳。
だからかれこれ数百年、その小さな胸のせいで随分と肩身の狭い思いをしたそうだ。
毎年の身体測定でクラスのの女子からヒソヒソと笑われたり、男子に告白した時も『胸の大きい子が好き』との理由で振られたりしたとか。
そこで思いついたのが巨乳撲滅運動。
世界中の巨乳達をこの城に閉じ込めて、その遺伝子を断つのだという。
いやはや、何とも恐ろしい計画だ。
悲しい思いをしたのは分かる。それでもその行いは身勝手な我儘でしかない。
「許せん!」
「それいいね!」
「えええ!?」
「はあ!?」
またしても意見の割れる俺と静奈。
この時、俺は勇者となり、魔王を倒すとともに、我儘に育った妹の再教育をする事を誓った。
だが、朝食が冷めるとまずいので今日のところは一旦家に帰る事にした。
そして朝食時、
「静奈、これは何と言うのじゃ? なかなか美味であるぞ」
「あ、魔王ちゃん分かる~ それ私が腕によりをかけて作った冷奴だよ~」
何故か魔王は、我が家の食卓で静奈が大豆から作った冷奴を美味しそうに食べていた。