表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者志望の兄と、魔王な妹  作者: シュヴァリエ
2/7

失恋

「あの~ 勇者様?」


 勉強中の俺に、寝起きで金髪のおねーさんが話しかけて来る。


「ゆうしゃ? 俺の事?」


 今いる広い部屋には俺とこのおねーさんしかいない、誰かと間違えているのだろうか?


 俺は一馬であってゆうしゃさんとやらではない、とりあえず今は合わせておいて、この方程式を解いたらおねーさんの誤解も解いておこう。


「はい、勇者様はどうやってここまで来たのでしょうか?」


「え? どうやって来たか? 普通に階段を上って来たけど?」


「あ、すみません。何分静かだったもので、争うような音も全くしなかったもので…」


 争う? 兄妹喧嘩の事かな?


 そう言えば、最近あまり静奈と喧嘩しなくなったな。


「今日は機嫌がよかったんだよ」


「機嫌!? さ、左様でございますか?」


「うん」


 会話… 絶対噛み合ってないよね?


 そんな、よく分からないやり取りをしばらくしていると。


「お兄ちゃん、ご飯出来たよ!」


 と、階段の下から晩御飯のお知らせが来た。


「今行く! って事で机ありがと」


「あ、いえ、とんでもありません」


「… ところでさ」


「はい」


「晩御飯食べた?」


「… 先程取りましたが…」


「そうなんだ」


 おねーさんを置いて晩御飯食べに行くのがしのびなかったんだけど、もう済んでるなら気にしなくても…


「食事は先程取りましたが、わたくしのお腹にはまだ若干の余裕があります!!」


 気にしなくてもいいわけではなかった。


「じゃあ一緒に食べる?」


「よ、よろしいのですか!?」


「うん。俺ん家さ、両親共働きで海外に行ってて、家には俺と妹の静奈しか殆どいないんだよね。だからちょっと寂しくてさ。もちろんそっちの都合もあるだろうし、良かったらでいいんだけど」


「是非お供させてください!!」


「お、おう…」


 間髪入れずに凄い気迫で即答してきたな。


 我が家のおかずに多大な期待をしているのだろうか?


 ま、いいか。


 てなわけで俺と…


 あ、名前知らないや、


「おねーさん、名前何て言うの?」


「失礼しました勇者様。まだ名乗っていませんでしたね。私はエリザベスと申します」


「エリザベスさんね。俺は一馬。よろしく」


「はい、よろしくお願いします勇者様!」


「……」


 だから一馬だって… 後でそこんとこちゃんと説明しとかなきゃな。


 晩ご飯を食べに、俺とエリザベスは台所に向かった。


 台所に向かう途中、エリザベスは周りを超キョロキョロしながら見回していた。

 

 日本の建物というか、造りが余程珍しかったのだろうか。


「静奈~ ご飯、もう一人分用意できるか?」


「え、いいけど誰か来るの?」


「この人」


 と、俺は隣にいるエリザベスを紹介した。


「は、初めまして、エリザベスと申します」


「ブッ! ホッ! ハッ!!」


 エリザベスを見るや否や、静奈は飲みかけ中の牛乳を俺の顔面に吹きかけた。


 俺は肉体的ダメージを1、精神的ダメージを3受けた。


「ちょっとお兄ちゃん! 牛乳がもったいないじゃない!」


「お前のセリフはごめんなさいだと思うんだが?」


「だってお兄ちゃんがいきなり女の人連れてくるんだもん。しかもこんな美人で、こんな外人さんで!」


「なんか最後のはちょっとした差別に聞こえなくもないぞ」


「あ、初めまして、私はこいつの妹で静奈って言います。お兄ちゃんとはどんな関係ですか?」


 牛乳を吹き掛けた俺を無視して、静奈はエリザベスと話を始めた。


 牛乳についての謝罪は一切しないつもりだな。


 後で静奈が取っておいた冷蔵庫のプリンは俺の胃袋に流し込んでおこう。


「えっと、魔王城から私を救って頂いて、その… 恩人と恩を受けた関係です?」


 エリザベスは言葉を詰まらせながら、意味不明な事を口にした。


「へ~ そうなんだ~ お兄ちゃんちょっとこっち来て」


 静奈がエリザベスとの会話を止めて、俺を壁際へといざなう。


「なんだ?」


(なにあの外人さん? やばいよ、やばすぎだよ。私、キレイでもあんなおねーちゃんは嫌だよ!)


(そうか、分かった)


「エリザべス」


「はい、勇者様」


「俺、クラスに好きな子いるから」


「さ、左様でございますか?…」


「左様だ」


 こうしてエリザベスは、その気も無いのに生まれて初めての失恋を味わいました。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ