表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
源鹿紀伝  作者: Loo
4/17

自分という自分 4



 あれから2ヵ月。

 あの白いⅩpと書かれた箱は源鹿の手元にあった。


 Ⅹp

 PCを最小化し、スマートフォンのような形にしたもの。携帯同様にも扱えるのが特徴。

 会話システムは耳に当てなくても会話でき特定の人間にしか聞こえなく、イヤホンをしていないがイヤホンと同じ扱いになる。

 当たり前のような機能を当たり前に扱える。

 それが「Ⅹp」である。


 そして今、このⅩpを使い新たなアプリを源鹿は作成していた。

 Ⅹpは携帯同様に扱えるが、携帯からⅩpでは処理の速度が違いすぎてあまりいい会話が出来ない。

 そこで、その懸念を払ったアプリを作成しているのだ。

 と言いたいところだが、冬休み前の期末試験が待ち構えていた。

 自分のお金で買ったのにも関わらず、母に取られてしまったⅩp。勉強するしかないのだ。

 過ぎるまでの我慢。



 期末試験を超え、短いようで長い冬休みが始まった。

 試験はもちろん平均。

 ただ、少しづつ落ちてしまってるのも事実。


 源鹿は冬休みの課題を3日で終わらせ、残りを全てⅩpに時間を割くと決めていた。

 予定通り3日が過ぎ、源鹿はあのアプリの制作にかかった。

 制作時間はおよそ60時間。

 寝る間も惜しんで、ひたすら作ったのだ。


 アプリの名前は「TML」


 既に存在している通信会話無料アプリは、Ⅹpに対応していなかった。源鹿の作ったそれはⅩpにも対応し、その携帯の通信制限を除けばある程度の場所でスムーズな会話ができるもの。もちろん、メール会話もできる。

 すかさず、そのアプリを配信。

 ダウンロード数は源鹿が思っていた以上に伸び、上げてから10000ダウンロードまで2時間もかからなかった。

 「さて」

 

 12月28日

 この日、Ⅹpを使っている人たちにこのアプリはダウンロードされたはず。


 疲れた。飲み物でもと思い下に降りた。

 母も父もいた。

 久しぶりに父の顔を見た。

 「こういう時しかいられなくてすまない」と、父は申しわけなさそうに言った。

 父からは質問をいくつか投げかけられた。答えている間、父は笑顔でその言葉を聞いていた。家族で話す時間は長く短いものであった。


 飲み物を飲み終えると自分の部屋に戻る。

 時間は20時を過ぎた頃。

TMLのアプリは50000ダウンロードを超えた。

 Ⅹp使用者半数又は一般の携帯にダウンロードされ、コメントもさっそく載っていた。


 使いやすいです


 スマフォ同士の会話が早くなりました。


 など。


 下に下ろしていくとⅩp使用者以外からもコメントが載っていた。


 Ⅹp使用しています。

このアプリのおかげで、一般の携帯交信が早くなりました。

Ⅹp本体の会話より会話しやすかったです。ありがとうごじいました。


 といったようなコメントが24件。

50124の、ダウンロード数を目にしたとき、源鹿のまぶたはそっと落ちた。



 次の日の朝。

朝日に照らされた源鹿は目を覚ました。

 時間は7時20分。

 手にはⅩp。

 画面をONにすると電池残量が4%と表示されていた。充電器に刺して再び画面を見る。

 メールが3件。

 1件はPC作成の依頼の報酬振込報告メール。

 2件目は解読不明の文字で送られてきた100文字程度の文章?

 そして、3件目はWiX社だった。


 WiX社 Ⅹp作成代表を務めた、須田始といいます。

 あなたの作成した「TML」ですが、こちらでも性能の確認を致しました。

 とても良い使い心地だったのでWiX社公式アプリとして出したいのですが、いかがでしょうか?


 話はわかるんだけど。

 ダウンロード数が60000。あまり伸びがない。おそらく知名度だろう。ここで手を結ぶのも悪くない。


 詳しく聞かせてください


 そう書いて送信した。

 そして、2件目のメール。

 解読不明文字をみて、この文字を調べたが出てこなかった。

 Ⅹpにもその文字は登録されていなかったので、不思議に思えた。

 文字化けにしては酷い。

 訳の分からないまま削除した。


 下に降りると父がコーヒーを飲んでいた。

 「おはよう」

 父は源鹿の顔を見るとにこやかにそう言った。

 「おはよう」

 そう返すと机に敷かれていた新聞を手に取って読んでいた。

 年末になると家に居ても暇なので、出かけることにした。

 朝、8時くらいまでテレビを眺めていた。

 政治 事件 事故

 Ⅹpの話題はもう既になくなっていた。

 3ヵ月で話題が無くなるのは普通なのかもしれない。

 自分の部屋に戻ることに。


 部屋に帰ると「TML」からの着信が入っていた。音が鳴り、Ⅹpは振るったいた。

 Ⅹpを見てみると、宛先の名前なんて書いてなかった。

 自分の作ったアプリでもう既におかしな事が。

 すこし怒れてしまったので、こいつに文句でも言おうと恐れず電話に出た。

 「もしもし」

 少し怒気の入った声で電話に出ると、不思議な言葉が聞こえた。


 言葉の意味が理解できない。

 何語だ?

 しかも、声のトーンが違う2種の声が聞こえた。

 まるで聞いたことのない言葉で会話の内容を聞き取ろうとするも、そんなことはできずなんだかんだで通話を切ってしまった。


 一体なんだったのか。


 再び音が鳴り、着信の文字。

 今度は文字が書いてあったが、日本語表記の通話の文字に対し意味不明な文字。

 文字化けか何かかと思う。

 自分のアプリがおかしなことになっているのが、怒れてきてしまう。

 「もしもし」

 さっきより怒っているが自分では気にしていない。

 また意味不明な言葉が、電話の向こうからとんできた。

 「なんなんだ」

 怒っていると電話の向こうからノイズも走った。


 そして

 「・・・しもし」

 女の声が電話の向こうからやってきた。

 慌てて電話に向かって「もしもし?」と訪ねる。

 「もしもし?聞こえますか?」

 日本語を喋っていた。

 聴いたこともない言葉から日本語に変換されていた。もちろん「Ⅹp」「TML」には他国語会話変換なんてシステムはない。

 「わぁお。たまたま拾った電波は別世界への扉を開いてしまったみたい」

 電話の向こうはなんか楽しそうだ。源鹿は不安そうな顔をする。

 「あの?どちら様?」

 源鹿は1人でペラペラ話す電話の主に何者かを訪ねる。

 「あぁ、すみません。

私は「ラスト・オーダー」です。ラストとお呼びください」

 ラスト・オーダー?最後の注文?意味不明だ。

 「あなたは?あなたこそ何者?」

 「藤谷源鹿」

 「げんろく?おかしな名前ね」

 あんたの方がな。

 「で、あんたどこの国の人?」

 「国?光の国かしら」

 「は?なぞなぞ?」

 「なぞなぞ?なにそれ?」

 会話にならん。

 「じゃ、どこに住んでるの?」

 「私は貴方達とは別の世界に住んでるのよ。多分」

 別世界?現実味がまったくない。

 「それよりもゲンロク。あなたの住んでるところは?」

 「地球だよ。日本って国にいる」

 「地球?私たちと同じね」

 「は?」

 会話が成り立ってない気がする。…そう言えばさっき、別世界とか何とか?

 「おそらく読み方が違うのね。私たちが住んでる地球から見えるあなたの言う地球は私はアースって読んでるわ」

 アース?

 まさか?

 「見えてるの?地球」

 「ええ。」

 電話の向こうで音が鳴っている。

 また意味不明な言葉を話し出す。

 「ごめん。呼ばれちゃった。また電話するね。ゲンロク」

 そのまま電話が切れてしまった。

 TMLには意味不明文字で表記されている。

 編集から「ラストオーダー」と名前を書き換えた。


 何だったのか?

 画面にはメール表示がされていたが、今はそんなそんなことはどうでもいい。

 検索で宇宙に存在する星について検索し始めた。


 気づけば12時を過ぎていた。

 3時間以上かけて検索した、ラストオーダーの世界については収穫0。

 これだけ膨大なネット社会でも分からないことはまだある。つまり、TMLに不備があっても何の問題もない。

 問題多ありだろ。

 源鹿は1人で悔しがっていた。

 飯だと父に呼ばれ、下に降りた。

 TVがつけっぱなしのリビングにて、ネットに流れる不可思議文字の文章についてニュースが流れていた。

 その内容には、Ⅹp発売と同時に増加しⅩpからは不思議な言葉を話す電話があったと。

 さっきその電話をとったし、会話もしてしまった。

 その録音音声が、TVから流れた。

 一番最初に聞いた男の人のような声。


 ?


 源鹿が話していたのは女だった。

 それに気づいた源鹿は一番最初の電話の主に興味を持った。

 ただ、TML以外でもその電話が聞けたという事実だけ頭にいれて。

 自分が正しいものを作ったという事は、誇らしく思った。同時に、不備かあるということは直さなければならないことも。


 ご飯を食べ終わると、源鹿は部屋に戻りⅩpを手に取った。

 メールを確認。WiX社からのメールだ。

 詳しく聞かせてくれと送ったメールの返信は、公式アプリになった時の内容とそれに基づく条件。契約金やそれの内容。事細かに記されていた。


 流石に驚いた。

 こんなに、しっかりした所だ。なんでこんな会社が今まで無名だったのか。

 源鹿はこの話に乗った。返信はすぐきた。

 いずれ契約のお話を改めてさせていただきに自宅に来ると書いてあるメールが届いた。住所を返信して下さいとあったので住所を送った。


 このメールのやり取りを保護して、源鹿はTMLの文字化けに関することを調べはじめた。

 すぐに諦めることが目に見えていたとしても、調べないよりマシだと1時間。源鹿は諦めが肝心だと言い聞かせて、ラストオーダーの電話を待っていた。

 Ⅹpが振るった。

 Ⅹpの画面を見ると通常の通話会話回線から、表示は「浅井燈八」となっていた。

 「もしもし」

 「あぁ、源鹿。

どうだ?冬休み満喫してるか?」

 「そんなことを聞くために電話したのか?切るぞ」

 「いや、まてまてまて。

ちょっと相談したいことが」

 通話を切るボタンを押しかけた指が止まった。

 「なんだ?」

その話を聞くことに。

 「TMLってあるだろ?」

 「あぁ。」

 源鹿が作ったアプリだ。

 「あれから変な電話がかかってきてな 。

 変な言葉で話してて、俺以外の奴と話してるみたいだった」

 その話を聞いた源鹿は、開いた口が塞がらない状態になっていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ