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源鹿紀伝  作者: Loo
3/17

自分という自分 3

 

 今日は土曜日である。

 素敵な休日だが、迫ってきたのはテストという文字。

 源鹿が知ってる限りの昨日の源鹿の記憶は、Ⅹpでいっぱいだった。

 今朝になって突然我に帰った。流石に勉強か、と。

 携帯を見ると8時。そして一通のメール。


13時には行く。


 宛先は我が親友。燈八だった。


 そういや、そんな話だったっけ?

 頭を掻きながら、携帯をポッケに。パジャマのまま、下へ行くと誰も居ない空間にでた。

 父も母も用事か仕事。

 TVをつけると、朝のニュース。

 聞こえてきた言葉に、気にかかる単語が出てきた。


 昨日から店内に配送されているⅩp。

 この商品は30000台限定でかつ、先着契約店のみに置いてあるということで。かなり希少なものになってしまいました。

 「そんな事を一々言わんでいいのに」

 でも、30000台。

 確かに希少なもの。

 康成の所に入ったってことは、先着店に入ってたってこと。


 そんな事を考えた瞬間、益々今すぐ手に入れたいなんて気持ちが走るのも当然。

 その後もチャンネルを変える度にⅩpの話題はついてまわった。

 批判的な意見が多く出ていて、そもそも一般人には入手が難しいものになってしまっていた。

 ため息をこぼしていると、時間は12時18分。

 携帯のネットを開いても、トップはⅩpの事。

 試しにページを開いてみても、ニュースで話していたことと殆ど変わらない。

 とりあえずなにか食べ物を。


ブッブッ。


 携帯が振るう。

 源鹿がポッケから携帯を出して確認する。


ついた


 その一文は、源鹿のため息を増やす。


 源鹿が玄関をあけると、そこには笑顔の燈八がいた。

 「よ」

 手をあげて返事をする背中には、見るからにパンパンに詰め込まれたバック。

 「何しに来たんですか?」

 玄関に凭れて、尋ねる源鹿。

 「何しにって、勉強だよ」

 「はー。君は今日泊る気かい?」

 「いや、泊まりはしないけど泊まれるの?」

 気づけばもう、源鹿の隣にいた燈八。

 「だめだ。今日だけだ」

 頭の中がまだⅩpから抜けきっていない。そこから、燈八を相手にしていては身体も頭ももたない。

 源鹿は本日中にお引き取り願うことを、家に言える前に燈八に誓わせた。

 「ちなみに、何?その荷物」

 「勉強用具」

 「にしては多い」

 「だって全部」

 「はぁ・・・」

 全部というのは全部なのだろう。

 源鹿はため息しかつけなかった。


 源鹿の部屋に入って2時間ほど過ぎた。

 流石に教えてもらう身である燈八は、真面目に勉強していた。が、人の集中とはあまり長くは持たない。

 一息つくと、教科書の隣に置いてあるコーヒーの入ったコップを片手に勉強していた。

 あれだけ汚いとされていた部屋の真ん中に机が建てられるほど片付けられていた。

 「そいやさ、発売されたんだって」

 唐突な燈八の発言は危ないよ感がした。

 「まて、とりあえず休憩中はその事は・・・」

 「あぁ、ホントに弱いな。メンタル。

どうにかしないとこの先も」

 「もう、ほっとけよ」

 燈八も何のことか分かっていた。おそらく、Ⅹpの話だろう。

 今そんなことを話されたら、自分が買えてないという不満感に押しつぶされてしまいそうになるからだ。

 源鹿は分かってた。いや、他人から言わせれば分かってないところもあるだろう。


 自分はメンタルがそんなに強くないことを。



 日曜。

この日を耐えきって試験に臨む。


 そして、月曜日。

 火曜日、水曜日と過ぎ。

 テスト最終日。


 教室は試験の終わりと共に、殺伐とした空気が漂っていた。

 帰る途中、燈八が声をかけてきた。

 「どうだったよ?先生」

 源鹿はその問に「いつも通り」と答えた。

 半分より上にいればいいな程度で解いた問題は、かなり存在した。

 その次の日は学校自体が休み。

 電気自体が止まるとかで先生方が仕事にならないとのことだった。


 この日源鹿は、タカヤ電気へと向かった。

 「おう、いらっしゃい」

 レジ前で座りだらけている康成が挨拶をした。

 「それ、僕以外のお客さんきたらどうするの?」

 「そん時はしっかりするさ。」

 できるのか?そんなこと、と想いながら店内を見渡す源鹿。そして、目に止まったものを粗方レジ前に持って行った。

 「なんだ、PCでもつくるのか?」

 「うん。作って売る」

 「それで50つくるのか?」


Ⅹp

金額 50万


 この壁はデカすぎる。

 これまで売ってきたPCや、お年玉。町内会イベントでもらったお金等々をかき集めてもおそらくあと10万ほど足りないだろう。

 だから高性能なPCを作って売りさばく。

 これしか手はない。

 「まぁ、やれるだけやるといい。だがパーツを買うのもタダではない」

 この言葉はぐぅの音をあげるしかなかった。

 高性能なパソコンには金がいる。減らしてプラスにもって行くのでは、いくら時間があっても足りない。

 「だから、安いPCを作って高く売ればいい」

 ヤスさんが変なことを言い出した。

 「それは、無理なんじゃ・・・」

 「いや」

 そう言うと、奥の方からWiXと書かれたダンボール箱を出してきた。

 「なにこれ?」

 「CPU メモリーだ」

 源鹿はダンボールの中身を確認した。

 「WiXってこんなのも出してたの?」

 「つい最近だ、Ⅹpの宣伝がでる前くらいだったか」

 「WiX調べた時はこんなの、商品説明には載ってなかった」

 「一応売りもんだ。俺も使ってる。性能は高い」

 「でも高いんでしょ?」

 「いや、安い。何せ他のメイカーの半額ちょい上だからな」

 「マジ!?」

 飛び跳ねた。

 源鹿がいつも作ってるPCは、一つの3万ほど。売るのは5万ほど。そこそこ性能も良く文句のあまりないものだった。どんなに安く作ってもそれが限界だったのが、さらに安くなる。

 「それを頂こう」

 源鹿はそれを持ち帰り早速作ることに。



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