夜で消えるみこたち
いつからだろうか、この国にはある決まりが出来ていた。それは成人した女性を巫女と
して扱い、太陽神様という御方に捧げる事。
『捧げる』というと生贄の様に聞こえるかもしれない。
しかし、実際は生贄よりも酷いかもしれない。何故ならば捧げた結果が一度たりとも実
った事がないからだ。
いつからだったのだろう、この国には太陽が昇らなくなっていた。それはもう何の前触
れもなく突然にだったそうだ。
定刻通りに鶏が朝を告げどその世界は暗く、どれだけ待とうと空が明るくなる事はなか
ったそうだ。
そんな太陽の昇らない日々を過ごす内におかしくなったのだろう。何を思ったのか知ら
ないが『太陽神様に捧げ物をしよう、そして太陽神様に機嫌を直して貰い再びこの国に太
陽の恵みを与えてもらおう』と、当時の国長からそんな声が上がった。
最初は当代の長女だった。
この国を囲む海に大体船で半日程かかる位置に小さな、本当に小さな島とも言えない岩
場あり、どうやらそこで巫女に選ばれてしまった者は祈り続けるのだそうだ。
その岩場に持って行くことが許されたのはランプとナイフの二点。
ランプは定期連絡用で本来の夜時間に点滅させ、国の者に生存を知らせる為らしい。表
では『太陽が再び昇った時に巫女様を迎えに行ける様に』とも話していたが実際は『生存
確認が取れず太陽が昇らない場合巫女を補充する為』とかだろう。
そうして何人の巫女が消えただろうか。
知っているだけでも友人の姉が送られ、国で一番美しいと言われた人が送られ、この前
は親友が送られて……今度は明日成人を迎える私が送られる。
巫女の送り人の話によると岩場がいつの間にか小さな教会になっていたとかだが、正直
そんな話を聞いた所できっと私の短い人生への終幕は変わる事がない。
もう間もなく迎える明日。その前に今は亡き両親へ挨拶をし、もう会えないであろう涙
で見送る親友の両親へ頭を下げる。
そして本来なら朝であろう時間に真っ白な衣装を身に纏って船へ。
徐々に離れ行く母国を横目にあまり辛くない最期である様にと願い、風に揺られる前髪
を抑えた。
一人一人と消えていく、受け取り手が望んでいないとも知らずに消えていく。
今度の贄は今度の贄できっと最後。願うは一つな明日は我が身の少女たち。