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筋肉たちの第7話

誤字や矛盾点、感想などがございましたら気楽に感想欄へ書いていってください。モチベにつながります。

おっさんに呼ばれて命令されたことは、俺たちの訓練についてだった。

かいつまんで話すと、俺たちの力はまだまだ発展途上であり、今日から毎日、朝起きて日が暮れるまでは城の兵士と訓練する。夜になったら魔法についての講義を受け、寝る前に魔力を極限まで使い切って眠る。つらいだろうが王国のためだからしょうがない。頑張ってね!...とのことだ。

正直に言おう、やってられるか。考えても見てほしい、いきなり誘拐されて朝から晩まで慣れない訓練を繰り返し、報酬は誘拐犯の役に立つことだといわれる。今時、どれだけブラックな企業でももう少し待遇がいいはずだ。ここらに労働組合はありませんか?ありませんか、そうだよね、異世界だもんね。HAHAHA!〇ね!こんな待遇があり得るか?雇用条件の改善を...。なんて少しおかしくなりながらこの世界に中指を立てていると、イケメンたちも少し苦々しい顔をしていた。だよな。お前らもそう思うよな。しかも、俺と違って勇者だもんな。自分よりも不幸な奴らを見て、俺はちょっとだけ元気になれた。みんな、ありがとう。なんて、現実逃避をしながら訓練場へと足を進め、たどり着いてしまった。

あたりを見渡すと、筋肉質な男、男、男。視覚情報が暑苦しくって仕方がない。なに?あの筋肉?ステロイド何本打ったらあんなになるの?元の世界では考えようもないほど太い腕や足をした男たちが何人も簡易な鎧を着て、刃を潰された剣をぶつけ合っている。断言しよう。この中に混じって訓練なんてしたら体がいくつあっても足りないね。運よくガードが成功したとしても剣を持った腕ごと取れるわ。こう...もぎっと。イケメンたちも気圧されたのかその様子をぼーっと見てる。

そんな風に、俺たちが立ち尽くしているとその中でも一番筋肉がすごい大男がとんでもないことを言ってきた。

「お前たちが王の言っていた勇者だな?もしよかったら今、どのくらいの実力を持っているのか知りたいから少し打ち合わないか?」


そんな提案をしてきた"筋肉"の顔色をうかがう。好戦的な性格なのか、剣を握る手に少し力がこもっており、楽しそうな顔をしている。ふざけんな、こんな壁みたいなやつと打ち合えるか!いいわけがないだろが!体重差考えろ!なんて、啖呵を切れればよかったのだが、俺にそんな勇気はない。だって、あんな奴に殴られたら体が粉々になるね。間違いない。...。俺は勇者じゃないから、勘弁してもらえませんかね?そんな囮作戦を決行しようと考えているとふと思った。いままで平和な世界を生きてきたこいつらであれば、きっと断ってくれる。俺は、ばれないように「視の魔眼」を使いながら周りの様子をうかがう。...初めて使ったけどすっげぇなこれ、カメラのついてるドローンを飛ばして、自由に操作できるような感じで景色が見える。やっぱり、最初は基礎の基礎、素振り?もしくは筋トレから始めてそれから十分に体が出来上がって、戦う覚悟が決まってから実戦経験を積むもんだよなぁ。そんな風に考えながら、断ってくれることを期待して、右隣に視点を動かしてイケメンの様子を盗み見る。あれ?なんでそんな覚悟を決めた目をしているんでしょう?そう思う間もなく、コイツは、


「わかりました。僕たちが今、どのくらい戦えるのか現在地を知ることがこれからのために必要だと思いました。よろしくお願いします。」


なんていって筋肉と握手をしていた。


この野郎!


だがしかし、待ってほしい。女性陣としてはそうことがうまく進むわけがないだろうと思い左隣を盗み見る。不安そうに瞳は揺れ、2人で目を交わしていた。そうだよな!戦いなんて野蛮人のすることだ。我々文明人は暴力なんていう知性のカケラもないことからは身を引き、何とかして戦うことを回避したほうがいいに決まっている。それに女性が戦うなんて嫌に違いない。これならきっと断ってくれる。そんな確信に近いものを感じ、言い出しにくいだろうから3人を代表して、俺が断ろうと口を開きかけた時、委員長が、


「私たち3人も異論はありません。それでお願いします。」


3人?あれ?俺って賛同したっけ?そんな素振り見せたっけ?そう思いながら、否定の言葉を重ねようとすると、筋肉が罠にはまった獲物を見るような目をしながら嬉しそうな顔をし、心なしか後ろにいる筋肉たちも俺たちを見てあざ笑っているように見えた。そして、


「お前たちの覚悟は伝わった。では、準備をしてくるから待っていろ。」


と言い残し、訓練場の奥へと走って消えていった。



そうして模擬戦が行われることが確定した。



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王様に呼ばれ、訓練を受けることが決定した。確かに、スケジュールを聞くとかなり厳しいもので、耐えられるか不安ではあったけれど、僕たちの身を守るために必要なことだと考えて、その提案を受け入れた。

さらに言えば、城内での僕たちの立場がまだはっきりとしていないうちにうかつな反論を言えないだろうと考えた結果でもある。みんなもそう思ったのか、その場で騒ぎ出す奴はいなかった。

訓練場に来てみると、すでにお城に勤めているであろう兵士の人たちが訓練を始めていた。

その光景に、僕は圧倒された。訓練なのだから、幾分か力を抑えているんだろうがそうとは思えないほどの迫力を感じ、こんな訓練に耐えられるのかさらに不安が煽られた。そんな時、一番大きく、立派な体つきをしている兵士の人がこっちに気づき、話しかけてきた。


「お前たちが王の言っていた勇者たちだな?もしよかったら今、どのくらいの実力を持っているのか知りたいから少し打ち合わないか?」


確かに、自分たちの現在地点を把握しておいたほうが、今後の訓練メニューなども立てやすいだろう。

そんな風に考えた俺は、迷わず模擬戦を受け入れた。ほかの3人はどうするのかと思っていると、美里が


「私たち3人も異論はありません。それでお願いします。」


と毅然とした声で僕の意見に続いてくれた。


そんな言葉を受けた目の前の兵士さんは、情に満ちた笑顔を浮かべ、後ろの兵士たちもこちらを見てやさしそうに笑っていた。


「お前たちの覚悟は伝わった。では、準備をしてくるから待っていろ。」


そう言って僕たちと話し合っていた兵士さんは訓練場の奥へ消えていった。


そうして僕たちの最初の訓練である模擬戦が始まった。

ご覧いただきありがとうございました。

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