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孤独の都~空に陽はあり月はなく~  作者: 紫鱗
第一章 不可視
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第八話

 詩話法の講堂、すなわち詩話棟は他の棟と違って詩話法のみを扱っている。そのためか他の棟よりは二回りほど小さい。

 わざわざ詩話法のみを分けているということはそれだけ重要な学科なのだろうと思う。

 詩話棟は三階建てとなっており、それぞれの階には廊下を挟んで左右に二つずつ、合わせて四つの講義室がある。

 講義室の入り口右上には部屋を識別する講義室札が嵌め込まれていて、一階ならば講堂の玄関左から時計回りに1-1から1-4といった具合に番号が割り振られている。僕は詩話法の書物を取り出し2-3と記述されているのを確認し、奥の階段を上って左側一つ目の講義室へ向かう。


 僕は講義室に立ち入る。

 奥には黒板があり、その前には教壇がある。生徒の座席は教壇を中心に扇状に配置されていて、ひとつの列には四つの机が配置されている。それぞれの机には二つの椅子があり、これが三列、二十四人が座れるようになっている。

 僕は前から二番目の列の真ん中の机の左側の椅子に座って講義の開始を待つことにした。黒板の上に掛けられた時計を見ると、針はもうすぐ8を指そうとしている。


 僕はまた聖堂で見た白い明かりのことを思い出し、考える……あんな明かり今まで見たことがなかった、ふわふわ浮かんでいたし壁にもぶつかることなく溶け込むようにして消えていった。いや、通り抜けていったのかもしれない……あの時見た白い明かりは僕の好奇心を刺激してやまなかった。

 しばらく考えを巡らせているうちにウトウトとしてきた。眠りに落ちそうになったその時、鐘の音が鳴り響き僕の眠気を掻き消した。

 講義開始の合図を知らせる鐘の音がなり終えると同時に教壇の方から心地よい声が聞こえてきた。



 ――微風の空には鳥たちが囀りながら羽ばたいている

  草茂る野原にはヤギやシカ達がのんびりと草を食んでいる

  薄暗く湿った森林には狼が群れを成し雄たけびを上げている

  せせらぐ川の底に魚たちの泳ぐ姿が見える


  なんと素晴らしき世界でしょう


  けれども二羽の黒い鳥は災いの運び手

  気をつけなさい 気をつけなさい 黒い二羽の鳥には



 詩を詠む声だ、この後僕はこの詩を復唱する。

 「微風の空には……」

 同時に他の生徒たちの復唱する声も聞こえてきた。

 復唱を終えて黒板に視線を向けると、今復唱した詩の全文が書かれていた。


 わからない言葉がいくつかあった。

 微風とは何だろう、ヤギやシカって何?

 俯いて想像を巡らせる、しばらくして顔を上げると黒板にいくつかの質問が追記されていた。

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