第六話
僕は扉を開け、リビングの食卓に向かうとすでに誕生日祝いの支度が済まされていた。
牛乳、チョコの混じったクッキー、それに祝いの意を込められたケーキが食卓中央の燭台そばに用意されていた。
僕は父さんに誕生日を祝う言葉を述べ。食卓の食べ物に手を付けた。父さんの座る場所のクッキーはすでに半分ほどなくなっていた。今日のお使いで買ったものはこのためのものだったのだろうと思った。
そういえば僕の誕生日には母さんは僕の好きなものを用意してくれたっけ。
チョコレートが好きだけど、父さんと違ってそのまま食べるのが好きだ。
そう思いをはせたところでチョコレートのつまみ食いのことを思い出し、少し胸が痛くなった。
僕はすべて食べ終えた後、もう一度父さんに「おめでとう、父さん」とつぶやいて食卓を背にし、自分の部屋へと戻る。
部屋に戻ると僕の机の真ん中に手紙が置かれていた。
僕はそれを手に取り広げて読む。
――息子よ、いつもありがとう。毎日兵役でほとんど戻ることがないにもかかわらずこうして祝ってくれることに感謝するよ。
近くにはいられないがいつでもお前のことを見守っているよ。
ところで休みは今日まで、明日からアカデミーだろう、早く寝て遅刻しないようにな。
父より――
父さんからの手紙だった。
窓の外はリビングに出る前と変わらず真っ暗だった。
カンテラの火を吹き消してベッドへ向かい、先ほど眠りに落ちた時に手放したであろう銅貨をすでに枕元に置かれていた銅貨の所へと重ねて置いた。僕は横たわり、暗闇の中、窓がある辺りを見つめながら考えた。
「ほかの住人ももう寝る頃かな」
そう考えたとき、窓のあたりが一瞬ぼうっと明るくなったように思えた、それから僕は強い睡魔に襲われ、眠りに落ちた。