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孤独の都~空に陽はあり月はなく~  作者: 紫鱗
第一章 不可視
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第二話

 外に出れば道と、この道に沿うように流れる川があり、向こう岸には僕の家と同じような家が並んでいる。向こう岸は家が川に面していて道はその向こう側にある。

 川は僕の家を背にして右に向かって流れていて、突き当たりのところで大きな湖を作っている。

 川の流れに逆らう方向にまっすぐ進み、最初の交差点を渡った右の角に商店がある。


 僕は少し商店に向かって歩いてから、どうせ10分くらいでつくのだから、と草が茂る川辺に座って川面を覗き込む。

 穏やかにせせらぐ川面は対岸の家々、都の塀、そして明るい空を映している。しばらく川面を見つめた後、ふと思いついてポケットから銀貨一枚を取り出して、親指と人差し指でつまんで川面にかざしてみる。

 川面は銀貨も映し出した、面白いなと思ってしげしげと見つめていたところ、うっかりと銀貨を川に落としてしまった。

 川面は波打って、映っていたもの全てを揺るがし、ついにはごちゃ混ぜにしてしまった。


 しばらくすると再び穏やかにせせらぐ川面に戻り、川面は銀貨を映す前の風景を映し出している。

 よく見ると明るい空の一番明るい部分に重なってうっすらと銀貨が見える。僕は我に返り、いけない、と川底から銀貨を掬い上げた。

 手首まで覆う上衣の右袖から肘の手前あたりまでを川の水で濡らしてしまった。僕は空を見上げて一番明るくなっている部分に右手をかざして銀貨を重ねてみた後、ポケットにしまった。


 「昼の明るさは空の明るいところからきているのかな」と、僕は川辺に仰向けに寝転がって呟いた。

 「夜が真っ暗なのは明るいところが消えてしまうからなんだろうな」とも呟いた。


 左に顔を向けると、他の家とは造りの違う厳かな建物が見える。その建物だけは灰色がかった青い色の建物で、僕の家を含む他の家々が乳白色だから、この建物はひと際目立つ。

 この建物のことを僕は「聖堂」と呼んでいる。


 そろそろ行かなきゃ。

 僕は起き上がり、背中を払ってから商店に向かって歩き始める。ポケットからは少し冷たさが伝わってきた。

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