第十二話
特に質問は上がらず、黒板の絵と説明は一度消されて植物の役割の説明が始まった。
――まず食用としての植物の役割、例えばキャベツやジャガイモ、ニンジン、小麦などがこれにあたる。
僕はここで一つ質問をしてみた。
「豆も植物なのですか」
些細な事だが、昨日の朝食べた煮豆のスープを思い出して質問してみようと思ったのだ。
席に戻り黒板を見ると早速回答が書かれていた。
――植物で、マメ科に分類されるもの。今回の講義ですべての植物の説明をすることはできないが、次回以降の講義にて説明する。
回答を終えた後、説明は続く。
――そのまま食べられる植物もあれば、煮たり火を通したりして食べられるようになる植物も存在する。
例えば先程質問のあった豆は、煮て柔らかくしないと硬くて食べられないものがあるし、火を通すと味や食感が変わったりする。
調理方法についてはこれ以上の説明はしない。
一般的な食用に用いられるパンも元々は小麦やライ麦などの植物であり、実を挽いて粉にして水と酵母を加えて焼くことによって出来る。
正確には酵母は生物に分類されるので、純粋に植物だけで構成されているわけではないが例として挙げた。なお酵母については生物学に説明を譲る。
”パンも植物からできている”僕は意外なことを知ってすぐに植物学の書物の後ろ側のページに用意されている白紙部分に書き取った。
説明は続く。
――次に薬用としての植物、病気を治療したり傷を癒すために用いられる。カンゾウやケイヒなどがこれにあたり、薬用の植物を総称して薬草と呼ぶ。
単体で口にするものもあればすり潰して傷口や痛みのある場所に塗るものもある。なお、販売されている薬は大半が魔法によって効果が補強されいるものであることを付け加えておく。
そういえば熱を出してうなされていた時に母さんが薬瓶を枕元に置いてくれたっけ。
魔法かぁ……今日は魔法の講義は無いけれども、明日の二限目に初等魔術の講義があるので楽しみだ。
――最後に材料としての植物の役割、私のいる教壇や君たちの座っている机と椅子はエボニーという木で出来ている。家具は一般的にメープル・チーク・パインなどが用いられている。
また、衣服などの布地は綿やヘンプなどを細い糸として伸ばしたものを編んでいる。
そして君たちの持っている書物に使われている紙も植物であるワラから出来ている。
以上、何か質問はあるかね。
あまりに説明が早いので、僕は書き取ることで精一杯だった。
書き取りを終え、黒板を見るといくつか質問が書き込まれていた。




