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孤独の都~空に陽はあり月はなく~  作者: 紫鱗
第一章 不可視
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第十一話

 講堂の入口は、詩話棟のものよりも大きく少し厳かな構えだ。僕は講堂に入ってから植物学の書物を取り出して、4-6と記述されていることを確認する。念のため動物学の書物も見て、同じ講義室だということも確認する。

 学術棟講堂内は、僕の入った入口の左奥から順に1-1から1-8まである。二階なら2-1から2-8となり、一番目の数字が階数を表しているのは詩話棟と一緒で、講義室が廊下の両脇にあるわけではないのが詩話棟との違いだ。


 右の突き当り6番目の講義室だけは他のものと比べ、二倍の広さがある。次はこの広い講義室で講義を受けることになる。

 階段は左奥にある。また右の突き当りを右に曲がったあとの突き当りにもあるけれど、魔術棟との渡り廊下にも繋がっている。さっき中央の広場を歩いていた時に見た渡り廊下だ。


 次の講義は四階で、階段からも遠いので駆け足で講義室へ向かう。

 三階の階段踊り場辺りで息を切らした僕はあと少しで四階というところで躓いて転んでしまう。

 「いたっ!」僕は思わず声を上げた。するとどこからか声が聞こえてきた。


 ――痛ぇしうるせぇよ


 「えっ!?」僕はまたしても声を上げ、辺りを見回した。詩話法の講義以外で声を聞いたのは初めてだったからだ。

 頭がその声のことでいっぱいになりかけた時、講義開始を告げる鐘が鳴り響いた。

 あっいけない、遅刻だ!

 僕は投げ出されたバッグを手に取って、再び駆け足で講義室へ向かう。駆けている最中、廊下右の窓を通して魔術棟の尖塔にある鐘が揺れているのが見えた。


 鐘の音が鳴り終える前に講義室にたどり着いた僕は、急いで椅子に座ってバッグから植物学と動物学の書物を机の上に並べた。

 6番目の講義室はひとつの列に八つの机が配置されている、ちょうど詩話棟の講義室の倍だ。列数は三列と変わらず、合計四十八人が座れるようになっている。


 動植物学はまず植物の分野から始まる。詩話法の講義と打って変わって静かに講義が進み、黒板に視線を向ける度に草や木、花の絵が描かれ、それからそれぞれの絵に説明が付け加えられていく。

 書物にも同じような植物が載っていて、僕は黒板に書かれた説明を、川辺に茂っていた芝や果樹園の樹々を思い出しながらそれぞれの植物の絵の傍に書き加えていく。


 果樹園で見たのはリンゴやオレンジ、ブドウやイチジクなど様々な種類の樹々だったことがわかり、少し浮かれた気分になった。

 果樹園以外にも木はところどころに生えている。しかし、実をつけているものは見たことがなく、どうやら実をつける種類のものは果樹園以外にはないのだろうと思った。花というものは見たことのないものばかりだったけれども、果樹園の実とは違った美しさを持つものばかりだった。

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