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最初のミッション

俺は話すつもりはなかったのに、やむなく話す事になってしまった宿屋の店主以外で最初の住人が、まさかのイベント発生に繋がるという不運に見舞われ焦りを隠せなかった。

今、俺は動くのもままならないほどの筋肉痛で、長距離の移動がかなりシンドイのだ。

だが、話し始めてしまったのだから仕方ない。彼女を向かいの席に座らせると、俺は話の続きを聞く事にした。

「で、助けてっていうのはどういう事なんだ?」

「ええ、私の弟のことなんだけど、北の森に父の病気を治す薬草を取りに行ったまま戻らないの」

……クッ⁉︎

な、なるほど、人探しか……。普通なら初期イベントとしてはなんの問題もないんだろうが、今の俺にはかなり厳しい内容だな。

「本当なら私が探しに行くべきなんだろうけど、森にはモンスターが多いと聞いて……」

「ま、まああんたには無理だろうな。いいよ、俺が探してきてやるよ」

「ほ、本当に?嬉しい、すごく助かるわ」

本当は断りたかったが、後々面倒な事になるよりはいい。このI.R.U.システムとかいうやつの、雑な世界観が完全に理解できたわけじゃないからな。

「で、森のどの辺りに向かったんだ?」

「東の方に生息する薬草だから、少なくとも始めはそっちに向かったと思うわ。もう、3日も経つから今はどの辺りにいるか分からないけど……」

「3日⁉︎弟さんが家を出て、もう3日も経つのか?」

「え、ええ。だから私すごく心配で。父の病気も酷くなってきたし、今日帰らなかったら私が森に行こうと思ってたのよ」

なんだと?やはり、時間軸も完全なゲームとは区別して考えなきゃならんな。普通のゲームならあまりないことだが、時間が経てばここの住人の日常も進行していくようだ。

もしかしたら他の誰かに話しかけていれば、彼女の事が聞けたのかもしれん。

しかし、3日か。まずいぞ、下手したら死んでいるかもしれない。生きていれば自力で戻れるだけの時間が十分に経っているのだ。

「よ、良し。すぐに向かう事にしよう。あんたは家で待っててくれ」

「わ、分かったわ。あ、私の名前はエリナよ。弟はジルバ。見つけたら私の名前を言えばあなたを信用するはずよ」

「そうか、ジルバだな。で、あんたはエリナか。覚えておく」

そう言って俺は武器屋を後にした。物を売るのは後回しだ。死んだ時金が半分になるパターンかもしれないからな。まあ死んだら完全に終わりということもあり得るが……。


「北の森か……。先に道具屋がないか見ていった方が良さそうだな」

さすがに何の準備もなしに、イベントに挑むのは無謀というものだ。疲労感や痛みはステータスに無いようだし、この世界の道具でどうにかなるのかは分からんが戦闘でのダメージも受けるだろう。回復系のアイテムが必要だ。

俺はそれらしき看板を見つけ、慎重に扉を開けてみた。

ふむ、今度は大丈夫そうだ。扉の向こうには誰もいなかった。

「ここでは何が買えるんだ?」

俺は真っ直ぐカウンターに向かい、店主らしき男に声をかけた。

「これがメニューですよ。今日のお買い得はポーションですな」

ポーション……、回復薬だな。確かに安いようだ。

本日特売2ルピーと書いてある。

「よし、それを5つくれ」

「毎度!10ルピーですな。他には?」

ふむ、松明とかは無いんだな。暗さは大丈夫なんだろうか?まあいいか、とりあえず回復薬があればなんとかなるだろう。

「ああ、そうだ。これから北の森に向かうんだが、何か持っていた方がいいものはあるかな?」

こういう質問には、果たしてどう答えるのか?この世界観のバランスが分かるかもしれないと、俺は尋ねてみた。

「北の森ですか。そうですな、夜も過ごすつもりでしたら寝袋があった方がいいかもしれません。あとは……あそこに生息している動植物や、モンスターには毒があるものもいますからな。毒消しは必要かと」

「あ、ああ、そうか」

す、すごい喋ったな……。こちらが話しかけない限りは何も話さないってとこはゲームなんだが、話し始めるとその内容はパターン通りというわけではないようだ。

「じゃあ寝袋を一つと、毒消しを3つくれ」

「毎度!24ルピーになります、他には?」

「いや、もう大丈夫だ」

ふむ、これで金は全て使い切ってしまった。とにかく北の森に行ってみるか。最初のミッションでいきなり失敗はしたくないからな。頼む、ジルバとかいう奴、生きててくれ。


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