表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/27

俺が初めて獲得したもの

マズイ、これは本格的にマズイぞ。剣一本でこの重さかよ。シーラーの肉体変換ってこの世界の非現実な住人の若者に変換するんじゃないか?現実世界だったら10代でもキツイ、いや相当鍛えあげたアスリートでも、フル装備じゃ戦えないだろ。

と、俺は目の前の過酷な現実に、早くも心が折れそうだった。



しかし、待てよ。これはRPGをベースに創られた仮想現実だ。こればかりは試してみるしかないが、レベルが上がればステータスが上がるはずだ。

それにつれて戦える身体に変化していっても不思議ではない。

確信はないが、とにかくレベルを上げる行動に移るしかないだろう。

今のままじゃただ移動するだけでバテバテになってしまう。


何か事件に遭遇するのも、今の状態では避けたい所だ。このシステム内にストーリーが設定されているかは定かではないが、RPGをベースにしている以上何かあるに違いない。


「お客様、そろそろお時間ですが?」

その時部屋の外から声がかかった。

え?もう1時間たった?

「あ、分かりました。今出ます」

俺は身支度をするとすぐに宿屋を出た。ちらほらと宿泊客や、食事を摂る人がいたが、下手に話しかけて、何かイベントが発生しては困るのだ。


外に出るとここがRPGになぞらえた仮想現実であることを、俺はまざまざと感じた。

まさしく初期の村。

しかしなぜ自分の出身地からじゃないのか。

イマイチ掴みどころがわからない。まあ細かい所は気にしない事にしたのだ。俺は構わず村の外に出る事にした。


そこは、いわゆる草原がこれでもかというぐらい目の前に広がり、次の村か町を目指すには今の俺の体力では不安しかなかった。

「しばらくはこの村を拠点にレベルを上げるしかないか」

俺は少し歩いた所で振り返り、今出た村に目を向けた。

「⁉︎」

すると俺と村の間に、早くも一体のモンスターらしきものが出現したのだ。

「マジか⁉︎」

と声を上げるとそのモンスターはこちらに気づき、ノソノソと近づいてくる。

落ち着け、俺よ、落ち着け。今俺はリュウ。この仮想現実の主人公……かは分からんが、とにかく戦えるはずだ。

腰に目をやり、剣に手を伸ばす。モンスターはまだ5メートル程先にいる。

俺が柄に手をかけ、鞘から剣を引き抜いたーー

ーーその瞬間、


『エーーーンカウーーントッッ‼︎‼︎』


うわ⁉︎どこから?


いきなり敵との遭遇を叫ぶ謎の声が聞こえてきたのだ。

「いやいや、ルールが分からん!」

こんなとこは思いっきりRPGっぽい演出が入っちゃってるじゃん!

だったらもう完全にゲームの世界って事にして、チュートリアルぐらい作っとけよ!

俺はあまりに仕事が雑な女神、シーラーに心の中で毒づいた。

しかしそんな事を考えている間、すでに目の前まで接近していたモンスターは攻撃してくる事なく、ただただ身構えている。

「ん?攻撃してこないのか?」

そうか、通常のエンカウントなら必ずこちら側が先に攻撃のターンになる。これはRPGなら常識だ。

ならばーー

俺は渾身の力を込め、剣を構えた。ハッキリいって剣術の心得は全くない。

やれるのか?

俺は無我夢中で敵を切りつけるイメージを頭に浮かべた。

ーーその瞬間、

身体が勝手に動いた!

一歩踏み出してからの、横殴りに一閃!

ボシュ‼︎

ただの一撃だった。なんのモンスターかも分からないまま、蒸発するように消え去ってしまった。

………、さ、さすがランクが上の剣だけはあるな。

「ん?」

モンスターが消え去った跡をみると、なにか光る物が見える。

「おお!こ、これは…………」

あ、いや、お金の単位が分からんのだよ。とにかく俺はコイン型のお金を4枚獲得した。

ーーその時、


『リュウはアクスピークを一体撃破!経験値3獲得、4ルピーを手に入れた』


うわ!またか!

これどっから聞こえてくんの?

ま、まあいいか。今のがアクスピークっていうモンスターで、お金の単位はルピーってわけね。

しかし、攻撃は頭にイメージしただけで、身体が勝手に動いた。これならなんとかなるかもしれない。しかしーーー

ーーーズン‼︎

剣を持つ腕に、急激に疲労がのしかかってきた。

「うわー、やっぱりそんな甘くないか」

おそらくこれでもこの仮想現実に順応した身体にはなっているのだろう。イレギュラーで召喚が中途半端に行われたのかもしれない。


レベル、初期設定に見合った行動はできるが、その疲労が後からやってくるのだ。


それは、35歳のメタボなオッさんの大部分が残ってしまったから。


まあこれは推測に過ぎないが、なんとなく当たっている気がしていた。シーラーは俺が本当に自殺したほうがいい人間なのかを判断するのだ。

で、この仮想現実I.R.U.システムに送りこんだ。本来なら若者に肉体変換した上でだ。ということは、シーラーが見たいのは必然的に精神面ということになる。

であれば俺の考えが限りなく正論に近いはずなのだ。


とにかく俺は記念すべき最初の戦闘に勝利し、4ルピーを手に入れた。

これが俺のI.R.U.システムでの最初の獲得したものということになる。


俺はその後村から付かず離れず、移動を繰り返し何体かのモンスターと戦った。

「はあ、はあ、はあ、も、もう無理だ。今日は帰ろう。多分レベルは上がらなかったんだな。あの声が聞こえてこなかったもんな」

かなり頑張ったんだがな。こればかりは仕方がない。もう限界だ。今日は村に帰ることにする。


今日俺が手に入れたものをまとめておこう。


本日の獲得内容

棍棒×1

木のブーツ×1

40ルピー

34の経験値


これで今日の宿代がまかなえればいいのだが。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ