表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/27

老人の村 サガン②

俺はラザルというじいさんに案内され、この村の宿屋にやって来た。俺も名前を明かしたが、ラザルは俺を知らなかった。

トレドールの兵士はたまたまヴェールで警護をしていたから、俺を知っていたのだろう。


「おーい、ハードラー。久しぶりの客だぞい。この御仁を泊めたってくれい」


「何だと?客ぅ?」

「あ、どうも、客です」

俺は出来る限り軽いノリで話した。

「むう、悪いやつじゃなさそうじゃな。ラザルが連れてきたんじゃ、泊めんわけにはいかんじゃろ」


よし、宿屋確保!あとは道具屋があればいいんだがな。

「ハードラーよ、ニースの奴は店を畳んじまったんじゃったかの?」

「どうじゃろの。もうしばらく顔を出しとらんが、何かしらは残っとるんじゃないか?」

「リュウとやら、ニースばあさんの道具屋にも行ってみるか?」

「そうだな、何もなけりゃ出直す事も考えなきゃならんし。案内してくれ」


ラザルに連れられ、道具屋にくるとカウンターに人が立っていた。

「なんじゃ、ニース。どうせ誰も来やせんのにまだ店に立っとるんか?」

「ふん、余計なお世話じゃ。おぬしは家からあの悪魔が襲って来んか、ただ見張っとりゃええんじゃ。それに客ならちゃんといるわい」

「どこにじゃ?」

「ほれ、目の前に。その坊やは客なんじゃろ?」

はは、ばあさんにかかっちゃ俺も坊やか。まあいい、どうやら最低限のものは手に入りそうだ。

「そうだ、客だよ。とりあえずポーションがあれば十分なんだが、買えるか?」

「ふん、品揃えならかつてのヴェールにも負けんわい」

そう言ってニースはメニュー表を差し出した。

ポーション 4ルピー

ミドルポーション 8ルピー

毒消し 5ルピー

寝袋 10ルピー

テント 18ルピー

千里眼の笛 80ルピー

魔除けのネックレス 200ルピー


おお、なかなか言うだけのことはある。大した品揃えだ。ここまでの戦利品で大分ルピーは貯まっているし、しばらくはレベルアップに専念できそうだ。

「助かった。ニースさん、今日はもう疲れたからハードラーさんの宿屋に泊まって、明日出かける前に買いに来るよ」

俺はばあさんに挨拶して、店を出た。

「ラザルさん、ありがとう。あんたももう家に戻っていいぜ。おばあちゃんが心配してそうだからな」

「武器屋もあるんじゃが、いいのか?ヴェールの悪魔を倒してくれるんじゃろ?」

「ああ、それはまた後でいいよ。しばらくこの辺りでレベルアッ……いや、修行を積んでから行くから、必要ならまた声をかけるさ」


俺はラザルと別れ、ハードラーの宿屋に向かった。今日は寝るのが楽しみだ。ここまでくる間に大分戦ったからな。またレベルが上がるはずだ。


「よう、ハードラーさん。しばらくやっかいになるぜ。部屋の用意頼むわ」

「おお、あんたか。もういつでも寝れますぞ。宿代は10ルピー、ほれ、ここにサインしてもらえるかの」

俺はサインし、鍵を受け取ると、そこで簡単な食事を済ませ部屋に向かった。

「へえ、なかなかいい部屋じゃないか」

道具屋の品揃えもそうだが、宿屋も値段なりに部屋が多少はグレードアップしている。俺は装備を外し、用意してある部屋着に着替え寝る準備を始めた。


その時ふと横に目をやると、驚くべき光景がそこにはあり、俺は一瞬言葉を失った。



「な、なんだ?どうなってんだ、これ?」



そこにある光景とは、鏡に写った俺の姿だった。

「これ…………俺、か?」

俺は自分の目が信じられなかった。そこに写った俺の身体にはここに来る前の、あのメタボリックな兆候がほとんど見られなかったのである。


ま、まだここに来て4日しか経っていないはずだ。確かにあの剣のおかげで、かなりの戦闘をこなしてはきたが、まだレベル3だ。

それでここまで変わるものなのか?

確かに身体は随分と楽になったとおもってはいたが、見た目もこんなに変わっていたとは驚きだ。


「は、はは。もし無事に帰って嫁さんがこの姿を見たら、ひっくり返るだろうな」

まあ持ち帰れるのはお金だけで、帰ったら身体は元に戻ってしまうかもしれんがな。


俺は鏡に写った自分の姿に感動し、しばらく鏡を見続けていたが、その内に眠くなりベッドに横たわった。


「そうか、金といえば……」


俺は横になりながら、あのショッキングな事件を思い出した。

それはもちろん始まりの村で起きた、C.v.nストアとかいう店での換金ギャップ事件だ。

100ルピー以上のアイテムを換金して、ようやく一円にしかならなかった。

「ここにもC.v.nストアはあるはずだな。明日道具屋に行く前に探してみるか」

ここまでの戦いで、また多少だがアイテムを見つけている。あの腰袋にどれだけのアイテムが収納出来るか分からんが、いらないものは整理しておいた方がいいだろう。


またいくらにもならんのだろうなと思うと気が滅入ったが、疲れていた事もありいつのまにか俺は眠りについていた。


タータラー、タララッタタララー!!


レベルアップの合図で、俺は目を覚ました。レベルが低い内は、しばらくこいつが目覚まし時計の代わりになりそうだ。


『リュウはレベルが上がった。

体力が4上がった、素早さが2上がった、魔力が2上がった、HPが10上がった、MPが4上がった』


おお、随分なステータスアップだな。


タータラー、タララッタタララー!!


よし来た!結構戦ったから2レベル分くらいいってるんじゃないかと密かに期待していたんだ。


『リュウはレベルが上がった。

体力が2上がった、素早さが2上がった、魔力が1上がった、HPが5上がった、MPが1上がった』


あ、チクショー、今度はたいしたことなかったな。だかこれでレベル5だ。このまま一気に10レベルまで上げて、ヴェールの悪魔を倒してやる。


俺は宿屋を出ると残りの住人に話しかけ、C.v.nストアのありかを聞き出した。

「そういえば、特に他のイベントが発生しなかったな。」

もしかしたら、あまり重複してイベントが発生しないシステムなのかもしれない。まあ、いつも通り断定はできないが。



俺は手に入れた情報に従って、C.v.nストアにたどり着いた。

「よう、また来たぜ」

「いらっしゃい、リュウ。あなた、ここのC.v.nストアにも私がいるって分かっていたような言い方じゃない」

「まあ、なんとなくな。シーラーみたいなのが女神をやってるくらいだから、天界も人手不足なんじゃないかと思ってさ」

「グッ⁉︎なんでそんな……」

ん?図星だったか?

「そ、それで?今日も何か持ってきたんでしょう?」

ごまかしやがったな。

「まあいい。ちょっと待ってくれ。今整理するから」

俺は腰袋からアイテムを取り出し、カウンターに並べようとした。

「あら、あなたウインドウの見かたも知らないの?わざわざアイテム出さなくてもいいのに」

な、なにぃ?そんな便利な機能が……。

「ステータスの見かたは分かるが、そ、そんな便利なことが出来るのか?」

「シ、シーラー様……。まさか、そこまでいい加減になってしまったの?」

あ、そこは誤解を解いておいてやろう。後で恩を売れるかもしれん。

「いや、俺のケースは特別だったんだ。ちょっとイレギュラーが起きてな。シーラーも大分焦っていたようだから、説明がほとんどないままスタートしちまったんだ」

まあ説明する暇がなかったわけでもない気がするが、敢えて言う必要はあるまい。


「そ、そうだったの?あなたよくそれで今まで生きてこられたわね。それならシーラー様も私に言ってくだされば、始まりの村で説明できましたのに……」


「まあ部下に失敗を知られるのがいやだったんじゃないか?」


「なるほど、では代わりにあなたの知らない初期のシステム進行手順と、簡単な世界観だけは説明してあげるわ」

もう分かっている事は、言ってくれれば省略するから、と彼女は語り始めた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ