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見え始めた真実

「いや、わたしも噂で耳にしただけなのですが、アザラス地方のとある街が一夜にして壊滅するという事件が起きたとか……」

な、なにぃぃ⁉︎

「ほ、本当なのかい、父さん?」

「あ、ああ、あくまで噂なのだが、アザラス地方から来たという人間に聞いたから、信ぴょう性は高いと思っている」

親父さんは以前、まだそれほど体が弱っていなかった頃は、自分で薬を取りによく北の森に入っていたらしい。

その時アザラス地方から来たという青年に出会い、その話を聞いたのだという。

か、壊滅って……。こりゃ俺がアザラス地方出身ってのは黙ってた方がいいな。その記憶はないから突っ込まれても困るし。

「で、アザラス地方にはいくつぐらい街があるんだ?」

「たしか、割と大きな街が一つと村が二つじゃなかったかしら?」

「じゃ、じゃあ壊滅したのはその大きな街ってことか?」

「うむ、たしかヴェールとか言う名の街だったはずだ。わたしが森で会った青年は村の人間で、街が壊滅したと聞いて逃げている途中だと……」

どうなってんだ?こんな初期の村から森一つ挟んだ先の街が壊滅するって。これはさすがに俺の行動が関係してることはないよな?

いくらなんでもそこそこの街を壊滅させるような化物を、この短期間でどうにか出来るはずがない。

「しかしあなたならば、アザラス地方へ行かれても大丈夫でしょうな」

はあ?大丈夫じゃないって。まだ3レベルだよ。街一つ壊滅させるモンスター相手に何が出来るってんだ。

しかし、もし俺がこの世界の主人公的存在なら、ここの住人は勝手に俺に期待するんだろうな。大抵のRPGはそんなもんだ。


しかし、この情報をどう捉える?


俺がまだアザラス地方に行かないよう、注意を促すためにこの親父さんに与えられた情報なのか、次のイベントを示唆しているのか。

なんせ作りがいい加減だからな。

でも待てよ?よく考えたら俺、この親父さんとは初めて話したな。すっかり忘れていたが、最初のイベントを成功させた事で、初めて話せるようになった人物だ。

彼もキーマンである可能性は高い。いや、この情報内容からすれば、間違いなくキーマンだろう。

ということはーーーー

「行ってみるか」

「本当かよ、リュウさん⁉︎街が壊滅なんて只事じゃないよ!危険すぎる!」

そんな事は百も承知だ。しかし大丈夫なはずだ。確かにバランスが気にはなるが、一応RPGの基礎は踏まえて作られている。

初期の村から森一つ越えただけで、モンスターレベルが急激に上がるはずはない。

「流石はリュウどの。ジルバの話ではあなたの剣はかなりの業物だと伺った。しかも剣技も相当なものでこの辺りのモンスターはほとんど一撃の下に葬ってきたとか」

え?この剣?そんなに凄いかな。シーラーは初期設定では持てないレベルとしか言わなかったからなあ。

「この村もヴェールの街からそう離れているわけではありません。リュウどのが件の化物を退治してくだされば安心出来ましょう」

「父さん!もうリュウには一度助けてもらっているのよ。そんな無理を……」

「いや、いいんだ、エリザ。どうせ行かなきゃならないんだから。ついでに倒してきてやるさ」

「……リュウ」

俺は三人に分かれを告げ、村を出た。まあアザラス地方に行っても、壊滅したのは街が一つだけだ。村が二つ残っているなら大丈夫だろう。

そんな感じのイベントも昔のゲームで見た気がするし。

すぐ近くの街が壊滅してるのに、この街の人間は随分のほほんとしてるよな、みたいな光景はよくある。


大体一歩外に出たらモンスターだらけなのに、この村にだってモンスターは入ってこないのだから、そこら辺はちゃんとしてるはずだ。

「まあエリザの親父さんが会ったっていう男のように、他の村人も全員逃げ出していたらその限りじゃないがな」

まあその場合はそこでまた考えればいいことだ。


俺はガンガン森を進んだ。途中何度かモンスターと出くわしたが、すでに3レベルになった俺の敵ではない。反動で身体は痛むがそれも初日ほどではなくなってきた。


少し日が暮れ始めた頃、エンカウントも8回くらいあっだろうか、ようやく森の反対側に出てくる事が出来た。

「ようやく抜けたか」

俺は辺りを見回し近くに村がないか探してみた。草原が広がってはいるが村は見当たらない。しかし人が踏みならして出来た道があるのを見つける事ができた。そこをしばらく進むと少し先になにやら立て札のようなものが見える。

「やっぱり案内板か」

そこには

東 ヴェール

西 トレドール

北 サガン

と書かれている。良かった、間違えてヴェールにいきなり着いてしまっては危険だ。

俺はひとまずヴェールから距離があるであろう、西のトレドールを目指した。


「ん?」

西に進むとすぐに村らしきものが見えてきた。よしよし、ちょうど良い距離だ。あまり遠いようだといくら慣れてきたとはいっても、身体がもつ保証はない。

だが俺はそれほど身体のことは心配しなくなっていた。森を抜けてからも何戦かこなしたが、敵はまだまだ低レベルだ。この剣がある以上戦って負けることはない。そして戦えば戦うほど身体は楽になっていっているのだ。


「ここがトレドールか。もしかしたら俺の生まれ故郷かもしれないんだな」

トレドールかサガンかヴェール。このどこかで俺は生まれたという設定らしい。

しかしーーーー

「まあこの流れからしたら、壊滅したヴェールの生まれってのが濃厚だけどな」

だがこの地方出身ならば、俺のことを知っている人間がいる可能性はある。

「とりあえず入ってみるか」




ーーーーその頃、俺がいる地上から遥か上空でこんな会話が繰り広げられていた。

「シーラー様、あいつあっちに行っちゃいましたよ!」

「え、ええ。折角ヴェールは危険だという情報を与えてやったというのに、逆効果だったようね。アザラス地方を出身地にしておけば、いずれ向かうだろうと思っていたんだけど」

「まだあいつには早いんじゃないですかね?」

「そうね、死ぬかもしれないわね」

「まあどっちにしてもあいつじゃあ遅かれ早かれじゃないですか?」

「そうかしら、彼、今までの人間とはちょっと違うと思わない?」

「そ、そうですかね?」

「だってバーツ、忘れないでよ、彼の召喚には失敗しているのよ。それにしてはあの成長速度は異常よ」

「どれどれ、レベル3で体力が17、素早さが14、魔力が5、HP30、MP8……まあ普通じゃないですか?」

「そっちはね。わたしが言ってるのは「彼自身」のほうよ」

「た、確かに……。そういえばあやつはI.R.U.システムに順応した身体ではないのでしたな」

「そうなのよ。彼、本当にギャンブル依存症とかいうやつだったのかしら?それにトレーニングもしていない人間界の35歳の身体で、なぜあんなに戦闘に耐えらるの?これまでは肉体変換をしてあげたってこんなに早く順応した人間はいなかったのに」

「じゃあシーラー様、あやつがもしかしたらと…………⁉︎」

「それはまだ分からないけど、もしこのままアザラス地方を攻略するようなら…………」

今は見守りましょう、と二つの影は更に上空に消え去った。




そんな会話を知る由もない俺は、トレドールの村に足を踏み入れていた。

ここも最初の村同様それほど大きくはなさそうだったが、入り口には兵士が立っている。ヴェールが壊滅したというのは、どうやら本当らしい。俺はその兵士に足止めされた。


「旅の者か?」


「ああ、南の森の先に村があるだろう。俺はそこから来たんだ」


「え、その声?お前……リ、リュウか?」


は?またこのパターン?


誰か俺の事知ってるやつがいるだろうとは思ったが、最初の住人とはな。しかし残念だが俺にはこいつの記憶はない。

ーーーーさて、どう誤魔化すか。

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