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千里の道も一歩から

「ど、どういう事なんだ!これは⁉︎」

さすがに俺は激昂して、天界の女性に喰ってかかった。たしかにそれ程価値のあるものを渡したわけではない。それでも合計すれば100ルピー以上はするはずだ。それがたったの一円にしかならないだと?

「どういう事……と申されましても。結論は至極簡単なものです。あなたがこの壺に投入したものは、一円以下の価値しかなかったという事です。むしろサービスなのですよ、これは。一円以下の価値しかない場合でも、必ず一円には換算される最低保証がありますので」

「な、何ぃ!今ので一円以下だっただとぉ⁉︎」

「いや、そこは分かりませんけどね。もしかしたら丁度一円ぐらいだったかも……」

それにしても100ルピー以上は価値があるだろうアイテムを入れて、ようやく一円かよ。

「まあまあ、千里の道も一歩からというではありませんか?これから幾らでもルピーやアイテムを手に入れる事ができるのですから、またのご利用をお待ちしておりますよ」

「あ、ああ……」

俺は茫然自失になりながら、その店を後にした。

「あ、リュウ。ちなみにC.v.nストアは全ての街や村に存在しています。ぜひ探してみてくださいねー」



マジか?100ルピーで一円、もしくはそれ以下だと!

俺には一年しかないんだぞ!もしシーラーにGOODの判定が貰えて現世に帰れたって、借金がなくならなきゃなんの意味もないじゃないか!

「…………そんな甘い話はないって事か?」

待て待て、だったらなんでシーラーは俺をこの世界に召喚したんだ?こんな序盤に絶望感を味あわせる意味があるか?

それならルピーやアイテムを集めるだけ集めさせ、終盤で換算したら幾らにもならないってオチの方がダメージがでかいはずだ。

それならばまだ希望があると考える方が納得ができる。この先信じられないほど価値のあるものが、絶対に登場するはずだ。

しかしーーーー

100ルピーが一円だったとして、三百万集めるには…………

「さ、三億ルピーか……」

普通にゲームで考えたら絶対にないよな。億単位のアイテムなんて聞いた事がない。

いや、もしかしたら、スタートからゲームクリアまでに動くお金をトータルすれば、そのぐらいは……


あああああああ、もう考えるのはやめだ!


どちらにしてもやるしかないのだ。


そうだ、もしシーラーからGOODの判定を貰えた時、換算額がまるで足りないようならシーラーの奴に文句を言ってやる。

こんないい加減な世界を作った上に、召喚にも失敗してるんだからな。

「それでも曲がりなりにも奴は女神なんだ。GOODの判定さえもらってしまえば何とかしてもらえるかもしれん」

しかし、それは最終手段だ。100ルピーで一円なんて、あまりにもゲームバランスが悪すぎる。絶対にお宝が眠っているはずだ。


それに先ずはシーラーからGOODの判定を受けない事には、話にならんのだからな。


「とりあえず次のイベントの情報でも集めるか」


俺は地上に戻り、今まで話しかけなかった他の住人に声をかける事にした。


俺は村にいる住人に手当たり次第声をかけ、情報収集に勤しんだ。しかし、今の所は次のイベントに繋がるような有益な情報は得られなかった。

「……おかしいな。なぜ大した情報が手に入らないんだ?この村ではエリザ以外にはキーマンがいないのか?」

だとしたら俺も運がないというか、あるというか。最初に話しかけた住人が、この村では唯一のキーマンだったのだから。

「まだ話していない住人がいるかな?」

まあいい、何も起こらないのなら次の街なり村なりに移動するしかない。

俺は適当にそこらを歩いている住人に話しかけた。もちろん一度は声をかけた住人なのだが、今度は具体的な質問をしてみる。

「あの、ここから一番近い村か街ってどこにありますか?」

「そうね、北の森を抜けてアザラス地方にでるか、西の草原の先にあるサラファンの丘を越えればすぐに村があるわよ」

ふむ、やはり話しかけ方で情報が変わるんだな。この辺りは加減が分からんのだが、まさか話し方でイベント発生にまで影響があるなんて事はないだろうな。

もしそうならイベント発生のキーワードのバリエーションが無限にありすぎる。

どう話せばイベントが発生するかなんて、見当もつかない。


ん?アザラス地方?


どっかで聞いた名だな。


…………アザラス

…………アザラス、アザラス…………


あ、俺の出身地か⁉︎


たしか宿帳に書いてあったはずた。という事はその辺りに俺の故郷があるってことだ。

街なのか村なのか分からんが、そこには親や兄弟なんかもいたりするのかな?


よし、行ってみるか。

でもその前にーーーー


「ちょっとエリザのとこに寄ってこ」

向かうのはアザラス地方に決めたが、もう少し詳しい情報が欲しい。

それならば見知った顔の方が話しやすいというものだ。

「あ、ジルバ⁉︎」

その時、ふと視界に入ってきたのは、エリザの弟ジルバだった。

「リ、リュウさん?良かった。まだこの村にいたのですね。エリザ姉さんに聞いたら、もう行ってしまったというので、お礼も言えず…………」

「ああ、いいんだよ、そんな事は。でも丁度良かったよ」

「?」

「これから村を出るんだが、行く先の情報があまりに少ないから、何か知ってるかなと思ってジルバの家に行こうと思ってたんだ」

「そうだったんですか!それは父さんもエリザ姉さんも喜びますよ!」

ジルバはさっそく俺を家に招待してくれた。こうなってくると、あまりゲーム感がなくなってくるんだよな。まあこのぐらいのやりとりはないわけではないが、結局ゲームの場合はシナリオがある。ある程度はバリエーションを組み込んであっても、ゲームの容量を逸脱する事はない。

しかし、ここでは俺の言動に対する反応が無限にあるのだ。いや、無限かどうかは分からないが、今の所は制限があるように感じない。

「姉さん、リュウが来たよ!聞きたい事があるんだって」

ジルバが部屋の奥に向かって呼びかけると、バタバタとエリザが駆け寄ってきた。

「リュウ⁉︎」

朝会ってからまだそれほど経っていないというのに、エリザは心底嬉しそうな笑顔を見せてくれた。

「そうだ、良いものは見つかった?」

「あ、ああ。まあね」

どちらかというと絶望感の方が大きかったが、俺はそこには触れなかった。

「なら良かったわ。それよりもう村を出てしまったかと……。あ、そうだわ、お父さんも呼んでくるわね」

「あ、親父さん病気なんだろ?無理させなくてもいいよ」


「いやいや、そういうわけにはいきません。ぜひお礼を言わせてください。村を出る前に会えて本当に良かった」


そう言って奥から現れたのは、二人の姉弟の父親だった。


「わたしが知っていることで良ければ、なんでもお話しさせてもらいます」

ふむ、病気は気になるが、大丈夫というなら聞いておくか。情報は多いに越した事はない。

「俺はこれからアザラス地方に向かうつもりなんだが、詳しい情報が欲しいんだ」

「ア、アザラス地方⁉︎あなた、アザラス地方に行くつもりなんですか⁉︎」

え?なんで?駄目なの?

ジルバもエリザも驚きの表情を父親に向けていた。二人も知らない情報らしい。

しかし宿屋の店主は俺がアザラス地方出身でもなんの反応もなかったんだがなあ。

「どういうことか聞かせてくれないか?」

あまり良い話が聞ける気はしなかったが、俺は父親に話すよう促した。

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