『おデブからの卒業♪私はドSな魔王の妻になりました。』
魔界で生活するようになってもうすぐ3週間が経とうとしていた。
その日の朝にいつも通りにジョギングを済ませて汗を浴場で流してスッキリした後で私の世話係の小さい魔物の監視の下で恐る恐る体重計に乗ってみたら44,8キロだった。
「魔王さま~~~!!おめでとうございま~~~す!!美乃里さまがとうとう目標を達成されましたぁ~♪これでやっとお式の準備が無事に行えます。」
「おおおお!!やっと達成したか!!それじゃ~~儀式の準備に急いで取り掛かってくれ!!頼んだぞ!!」
私が目標体重をクリアしたことで城の中はその日から慌ただしくなっていった。
魔界での私の生活はこのお城の中だけで十分に事足りていたが少し物足りないのはのんびりと話しをする相手が居ないことだった。
確かに人間界でも友達もそんなに沢山いた訳では無いけど魔猫も今では毎日忙しく魔王に命じられた任務を行っているから私の相手なんてしてる暇は無いようだったし世話役の魔物達も用を済ませると話す間も無くすぐに下がってしまうので部屋にポツンと残された私はずっと時間を持て余していた。
「あ~あ・・・朝のジョギングを終わらせてお風呂入ってマッサージ済ませて魔王と一緒に朝ご飯食べたら少し中庭をウォーキングして部屋でストレッチ5セットやって・・・後はい~~っつも一人で暇してるなんてつまんない!」
ウエディングドレスの採寸をされながら私が魔物達に不満をぶつけると魔物達は困り顔で私を必死に宥めていた。
「そのように仰られましても・・・魔王さまからは城内でおとなしく美乃里さまには過ごして頂くようにと我らは命じられておりますので・・・どうすることも出来ません。」
「そうなんだ~・・・でも、ネットもテレビも無いからほんっと退屈で死にそうだよ~」
魔物達はドレスの採寸を済ませると私の不満なんて聞いていなかったみたいに伏目がちにさっさと部屋を出て行ってしまった。
「城内でおとなしくって言われてもなぁ~・・・なんか時間潰しに出来る事無いかなぁ~魔界って学校なんて無いだろうし・・・そもそも人間の私が一人で外に出たらヤバイもんね・・・あ~あ、すでにホームシックだわ~~~!人間界へ帰りた~~~い!」
部屋の窓際にある長椅子に仰向けに寝っ転がって不満を天井に向かってぶつけていると部屋のドアがいきなり開いてそこには目尻をピクピクさせて立っている魔王がいた。
「オイ!!今のは何だ?!ホームシック?人間界へ帰りたい?お前さ?マジかよ?」
「だって・・・やること済んだら誰も私の相手なんてしてくれないし・・・ジョギングとかストレッチも一日中なんてやれないもん。ネットもテレビも無いし・・・」
涙目で訴えると魔王は私の両頬をギュぅっと軽く引っ張ってケラケラと笑って今後の予定を話し出した。
「三日後に結婚の儀式をすることにした。だからお前には明日から一日中忙しく自分を磨いてもらうからそんなことボヤいてる暇も余裕も無いぜ!!覚悟しろよ~!クククク♪」
「ええええ!!まだやるの?一日中って何すんの?ねえってば!!ねぇ~」
私の質問には魔王は笑うばっかりで何も確かな事は教えてはくれなかった。
「明日になったらわかるから楽しみにしとけ!!オレ様の花嫁の総仕上げだからな!」
「ちょっと!!話し終わってないよ!!ちゃんと教えてよ~~~」
執務の合間の空いた時間に私の様子を見に来た魔王はケラケラと笑いながら振り返らずにそのまま部屋を出て行ってしまった。
そうして翌日の早朝から魔王の言っていた私の身体の総仕上げが始まった。
ジョギングやストレッチは省略されて浴場へ連れて行かれて身体の隅から隅まで磨き上げられたかと思ったら岩盤の上にうつ伏せに寝かされてオイルでマッサージされていた。
魔王からの命令だろう・・・綺麗な女の人の姿をした魔物はやたら胸を念入りにバストアップのマッサージをしていた。
それが終わると朝食の前に薬湯のようなものを出されて飲めと言われて飲んだけどそれがすっごく苦くてマズかった。
食事の後は書庫の様な所へ連れて行かれて机に座らされて魔界についての授業のようなものが始まった。
魔王が何故魔王なのかとか魔界の歴史も詳しく資料を広げて細かく色々と講義を受けた。
そして、城下に何があるかとか魔界にも天界以外にも敵対勢力がいることやハグレ魔族や魔物がこの世界にはゴロゴロしていて魔王の命を狙うものもいると言う物騒な事実も聞かされた。
「ですから・・・魔王さまの妻になる美乃里さまを付け狙う魔族や魔物もこの世界にはゴロゴロしていると言う事ですので、どれだけ退屈されても城内から出ることは貴方様の死を意味することなのでくれぐれも城内からはお出にならにようにお願い致します。」
「う・・・わ・・・わかりました。城内からは一人で勝手に出たりしません。あ・・・あの~・・・先生?出来れば週に何回かこんな風に私に授業をして頂けますか?」
かなり年老いた老人の姿をした魔物は私を見てニッコリ笑って深く頷いてくれていた。
「魔王さまには、貴方様が望まれるようならこれからもお相手して差し上げても構わないと先にお許しを頂いておりますので、こんな老いぼれで良ければいつでもお話し相手になりましょう。」
「あううう・・・本当ですか?良かった~・・・ありがとう~先生~」
嬉しくて泣いてる私の頭を優しく撫でてくれた先生の手は魔物なのにとても温かく感じた。
授業が終わるとまた小さい魔物達が複数で私を連れに来てまた浴場へ連れて行かれてサウナに放り込まれてたっぷりと汗をかかされてから湯船に放り込まれ、その後でまた身体の隅々をゴシゴシ綺麗に洗われて岩盤の上に寝かされてマッサージされてからやっと開放されて部屋へ帰された。
翌日も同じことを繰り返し確かに魔王が断言していた通りホームシックなんて言葉はスッカリ私は忘れてしまっていた。
そして、結婚の儀式が行われる当日の朝からは沢山の魔物達が城内を右往左往して忙しそうに準備に追われていた。
私も真っ白なウエディングドレスを着せられて髪を結われて綺麗にメイクまでしてもらっていた。
「初めて会った頃のアンタとはもうすでに別人だね!(笑)ほんっとよく頑張ったね♪今のアンタってすっごく綺麗だわ~♪みんな見たらビックリするだろうね~フフフ♪」
「ちょ・・・ちょっと魔猫ったら・・・そんな風に素直に褒めないでよ~!涙が出て来ちゃうじゃない!バカ~」
いつも憎まれ口しか叩かない魔猫が優しく私を褒めるから胸の奥から熱いものが込み上げてきて私は目頭を抑えながら喚いていた。
「オイオイ!泣くには早いぜ!!魔猫も美乃里を泣かすなよな!!クククク♪」
「もう~~~~!そんなこと言いながら面白がってるでしょ~~?!悪魔!!」
目に涙をいっぱいに溜めて怒っている私に顔を近付けて優しく魔王は指先で涙を拭ってくれてそぉっと耳元で甘~~~い言葉を私に囁いていた(赤面)
そうして結婚の儀式は無事に執り行われてその日晴れて私は魔界の魔王の妻になっちゃいました。
初夜はどうなったんだって?!それは・・・想像していたよりも魔王がムフフフフ♪だったので私はとっても幸せな朝を迎えることが出来た♪とだけ暴露しておこうかな?フフフフ♪