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『ポッチャリな君が好き♪と言われたら?』



それは突然だった。いつもの様に学校から帰る途中の駅の改札でハプニングは起きた。


「あの・・・あの・・・これを・・・僕の、僕の気持ちです!!受け取って下さい!!」


多分となり町の男子校の制服だった。平凡を絵に描いたような真面目そうなその彼は私に向かって顔を真っ赤にしてピンクの封筒を差し出していた。


(ちょっとちょっと!これってもしかして?もしかするの?マジで?)


初めての出来事で差し出された封筒を緊張で震えている手でそっと私が受け取ると彼も唇を震わせながら声を大にして私に向かって叫んだ。


「おおおお、お返事待ってます!!宜しくお願いします!!」


彼は真っ赤な顔で鞄を胸に抱えて駅の改札を勢い良く走って出て行ってしまった。


あわわわわわわ・・・生まれて初めて男子から顔を赤らめて恋文ラブレターなんて貰った。


家に帰ってからじゃ魔王に見つかるかもしれないと思い帰り道にある公園のベンチで封筒を開けてみた。


『ポッチャリな君がたまらなく好きです。友人からでも構わないので僕と付き合って下さい。宜しくお願いします。 淀北工二年 北村勇二きたむらゆうじ


封筒の中身はやっぱり恋文だった。しかも間違いなく私に宛ててだった。


「ポッチャリな君が好きだって~♪やだ~!!恥ずかしい~~!!」


しかし・・・私は魔王の監視下の中でダイエット中だった事を思い出してハッとして少し背筋が寒くなった。


「この事を魔王が知ったら?やばくない?」


我に返って慌てて封筒を学校の英語の教科書に挟んで隠してから、私は何も無かった様に何時もと変わりなく帰宅した。


現在の体重は72キロ、ダイエットを開始してやっと三ヶ月が過ぎていた。

私は当初の体重から26キロの減量に成功していた。


それもこれも魔王のダイエットに対する熱意の賜物だった。


「オイ!!そろそろ身体が軽くなって来たようだからウォーキングから少し軽目のジョギングって奴にしても良さそうだぜ!!今夜から軽く走ってみろよ!!」

「走るの?うそ~~二時間だよ?無理無理!!ウォーキングが良いよぉ~~!!」


またもや私が嫌がると魔王は目を吊り上げて横っ腹の贅肉をギュぅっと掴んで引っ張った。


「痛いっ!!痛いって!!いた~~~~~~い!!やめてよ~~~!!」

「お前が生意気な口利くからだろっ!!ジョギングだぜ!!ジョギング!!」


魔王は引っ張った横っ腹を力一杯引っ張りあげてから手を離して私に苦痛を与えて喜んでいた。


「それからバストアップの体操も絶対忘れんな!!その巨乳が小さくなったら意味ね~からな!!ガンバレよ!美乃里!!」

「だから!!それってセクハラ!!魔王でも許さないからね!!変態!!」


魔王は事あるごとにバストアップを私に強調してニヤニヤ笑っている。確かに言われた通りにやっていたのでバストの大きさは以前とあまり変わりは無かったけど・・・


きっと魔王はドSでかなりの巨乳好きのスケベなただの変態なのかもしれない。


夕食の後、魔王と一緒にジョギングに出ると魔王がひたすら揺れるバストを食い入るように眺めてイヤらしい顔でムフムフしていたことで私は更にそれを確信していた。



「それからお肌がスベスベになるボディオイルってやつを手に入れて来てやったからシャワーの後で使ってみろよ!!」


高そうなボディオイルの入ったボトルを渡されて私は唖然としていた。

どんどん魔王は私に磨きをかけて楽しんでいるようで少し怖いくらいだ。


悪魔なだけに手を掛けて自分好みに仕上げて最後には磨き上げた私の魂をやっぱり喰らってしまうのだろうか?


あれこれ考え過ぎた結果、底知れない不安に苛まれてその夜、私は良く眠れなかった。


翌朝になって寝不足の目を擦りながらジョギングを済ませて家に帰ると魔王がニヤニヤ笑ってピンクの封筒をヒラヒラさせて私の目の前をちらつかせていた。


「オイ!これはいつ?どこで手に入れたんだ?美乃里ちゃ~ん?」

「あああああ!ちょっと!!勝手に人の鞄の中身を触らないでよね!!返して!!」


私が慌てて恋文を取り返そうとしたら魔王は手に持っていた封筒をビリビリと破いてしまった。


「ポッチャリな君が好きだと?!ダイエット中にこんな惚けたこと言いやがる男なんて相手にすんな!!邪魔なだけだ!!わかったな!!絶対だぞ!!じゃなきゃコイツ殺すぞ!!」

「あううううううう~!!酷い~~!!破くこと無いのに~~!!」


魔王にビリビリと細かく破かれた恋文は母親がせっせとホウキとちりとりで片付けてしまった。


「オレ様も今日から学校って所に付き合ってやる!!美乃里に変な虫が付いたらオレ様の今までの苦労が水の泡だからな!!オレ様が全て追い払ってやる!!」

「えっ?!嘘?!学校ってどうやって?」


私が驚いている間に魔王は学生服を来て鞄まで持って既に用意を済ませていた。


「やだ~!!学校くらいは自由で居たいのに~~!!ついて来ないで!!」

「お前に拒否権は無いって言ってんだろ!既にお前はオレ様のモンなんだから!」


背筋がゾクゾクする様な事を魔王に言われて私はこの時だけは魔王を召喚したことを後悔していた。


魔王は私にピッタリと寄り添って登校して学校では転校生だと紹介されて私のクラスに担任に連れられて教室に入って来た。

魔王はいつでも人間を操れると言う事をこの時私は改めて思い出していた。


いつでもどこでも魔王は自由自在に自分の思うままに人間を操り人形の様に動かせるのだ。


「学校って所も悪くないな!!色々と楽しませてもらえそうだ。フフフフフ♪」

「ちょっと!!変なことはしないでよね!」


そんな私の願いは届くこと無くその日の内に魔王は私の許嫁という噂がいつの間にか学校中に広まっていた。


「やだ!!いつの間にこんな噂広めちゃったのよ!!もう~~!!」

「嘘ってわけでもないだろ?ダイエットに成功したらお前はオレ様のものなんだから!」

「確かに最初に召喚した時にそれらしいことは言ったような気はするけど・・・許嫁って!」


魔王にはスリムになったら合コンへ参加するという私の細やかな夢も断ち切られてしまった。


そして、下校中の駅の改札で昨日の彼が姿を見せたが私の腰に手を回してピッタリと寄り添う魔王を見て彼は何も言わずに改札を走って出て行ってしまった。


「お前はお前がオレ様を召喚したその日からオレ様のモンなんだから忘れんなよな!!」


魔王はそう言って私の頬に顔を近付けて軽くキスをして満足そうに笑っていた。

そして、突然の行為に私は心臓が飛び出してしまいそうな位ドキドキが止まらなかった。


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