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幻の輝き  作者: ながと
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友人と謎のメール

ある土曜日の夜、日付は平成十年十月十八日であつた。午後九時くらいであったろうか、電話が鳴り、修平が出ると、懐かしい声が聞こえた。というより、最初は誰かすぐにはわからなかった。

「修平か」

「そうですが」

「俺だよ、慎一、近藤慎一だよ」

「??うーん」

「高校で隣の席だった」

「あっ!慎一か、いや懐かしいな、元気か?どうしてる?」

「話は今度会ったらな。修平、メールアドレスもってるか?」

「あっ」

「一寸送りたいものがあるんで、教えてくれ」

「ああ、いいか、言うぞ」

「うん」

「shuuhei@net_world.ne.jp」

「ありがとう、しばらくしたら届いていると思うけど、決して他人に知らせたらだめだぞ、いいな」

「ああ、わかった」

「俺とお前の中だからな。今度ゆっくり話すよ。じゃ、バイバイ」

「あっ、それじゃ元気でな」

電話を切って修平は何だ突然に、変な奴だなと思いながら、風呂に入る準備をし、ゆっくり風呂に入り、体と頭を洗い、さっぱりとした気分になった。テレビをつけてみたが気にいらない番組ばかりだった。 ニュース番組を見た後は、 明日の日曜日は朝早くから冴子とのドライブがあるので寝床についてしまい、メールのことはすっかり忘れていた。

火曜日の夜、帰宅してテレビをつけると九時のニュースが丁度始まったところであった。冷蔵庫から缶ビールを取り出し、蓋を開け、一口ぐっと飲むと、自分の眼と耳を疑った。 それは、テレビで近藤慎一が何者かによって惨殺されたという内容であった。 そのニュースが終わらないうちに、修平はメールのことを思いだした。 慎一が殺された訳はそのメールに隠されているのではないかと閃き、寝室においてあるパソコンの電源をONした。

修平はパソコンが立ち上がると、デスクトップアイコンのメールソフトをクリックした。Outlook Expressが起動し、しばらくするとメールの受信が始まった。二通のメールを受信した。一通のダウンロードはかなり長かった。一通は会社の同僚の沢田からであったがそれは開封せずに、肝心の一通をクリックして開封した。

メールの内容を見て修平は戦慄が走った。

書き出しはこう始まっていた。

「このメールを見た頃にはもう俺はこの世にいないかも知れない」

(どういうことだ?)と思いつつ後を続けて読んだ。

「ある物を手に入れたので命を狙われている。このままでは、その組織に奪われてしまうだろう。とても大切で重要なものだ。キーとなる地図を貼付する。そのキーを頼りに次のホームページwww.mistery.comにアクセスして欲しい。全てにパスワードがあるが、お前の渾名にしてある。では、俺の宝を守ってくれ。成功を祈る。地獄で閻魔大王仲良くなるよ」

これは大変なことになったと思ったが、この胸の内を話すことはできない。話の内容からすると自分の命も危ないと思えるからだ。

修平は缶ビールをグッと飲み干すと、貼付されているファイルを開いた。パスワード入力画面が表示された。パスワードは渾名とあったから、“マントヒヒ”いれた。地図が見えてきた。スキャンで読み取られたと見える地図は古そうなものであった。地図にある文字はヨーロッパのものと判断できたが、どこを表すかは皆目見当がつかなかった。右端上部には髑髏のマーク、左端下部には毒蛇らしいものがあった。あとは山と木が三本描かれており、中央右寄りにクローバーのマークが一箇所、その下に謎めいた文字が書かれており、その右にローマ数字で"13"とあった。

修平にはその地図を見ても何が何だかわからなかったが、重要なものであることは確かであった。ヒョッとして、宝の隠し場所なのか、でもそうだとしたら何故、あいつがもっつていたのか、謎がさらに疑問を呼ぶ。

修平はとりあえず、慎一のホームページを見てみることにした。見ないことには先に進まないからだ。だが、それ以上に知ることに対する恐怖も覚えていた。

アドレスを入力してしばらくすると、画像が表示され始めた。髑髏のマークやグロテスクな物体があり、ミステリーツアーへようこそとある。その文字のしたに扉がある。扉をクリックすると、表示が変わり別の扉が表示された。扉といっても鉄格子だ。その下に鍵がかかっており、文字を入れるようになっている。修平は渾名を入れた。画面が雷鳴が轟くようなイメージで変化した。

『修平、よく来たな。ここはとりあえずお前しか来れないよう工夫がしてある。だが、ここにある資料は送った地図の手がかりにしか過ぎない。後はお前が探すのだ。資料にはそれぞれキーが隠されている。それを解くと隠された宝物の有りかがわかるはずだ。最初は左上にある十字架からだ。幸運を祈る』

修平は十字架をクリックしてみた。新しいページが読み込まれ表示された。まずハーケンクロイツがでかく表示され、顔写真が徐々に画面にあわわれた。それは、見たことのある顔、あのヒトラーの写真であった。十字架にヒトラー。

「ナチス・・」

と修平は小さくつぶやいていた。何故ナチスが関係するのか全く判らなかった。いつの間にか修平は眠りについていた。


修平はヨーロッパにいた。どこかはわからないが、農村を歩いていた。見る風景は皆始めて見る光景であり、興味深く左右を見ながら歩いた。道は一本道であったので、気の向くまま歩いた。数時間歩いたところで、街が見えてきた。街に近づくと人々はこちらを見ては、驚愕した顔をして退散していった。この俺は何か変か?恐いのか?皆目わからなかった。街の中に足を踏み入れた。

向こうから馬に乗った二人が近づいてきた。その姿は中世の騎士を彷彿させる格好であった。これは祭りか何かのイベントがあるのだと思い、よしまたとないチャンスだから、ゆっくりと見てみようと道路の脇に腰を下ろそうとした。馬に乗った二人はすぐ傍らまでやってきた。何やら話しているが、何を言っているのか全然わからない。槍を手にしておりその手に力が加わり持ち上げようとしているのがよくわかった。恐怖を覚え、身構えた。

相手は槍を繰り出した。身構えていたおかげで一瞬の隙に身をかわした。しかし、さらにもう一度一突きされた。今度も間一髪の所で槍先は地面に突き刺さっていた。修平は立ち上がり必至で逃げた。相手は馬であり、すぐ追いつかれる。目の前に小さいが川が流れていた。命からがらとはこの事を言うのかと思いつつ小川に飛び込んでいた。あとは流れに任せて必死に泳いだ。どの位たったろうか。川岸にぐったりと気を失い横たわっていた。

気がつくと目の前にきれいな女性がいた。だが朦朧としている修平は再び気を失っていた。

気がつくと、窓から陽光がさしこみベッドを輝かせていた。その上に修平は寝ていた。

しばらくするとドアから貴婦人のような女性が暖かいスープをもってあわわれた。

「 気がつきましたか?暖かいスープをめしあがれ」

とスープを差し出した。修平はスープをとりスプーンでスープをすくい、ゆっくりと一匙目のスープをゴクリと飲んだ。その容器もスプーンも見たこともないすばらしいものであ

ったが、その味はまた格別なほどおいしかった。

「美味しい!」

思わず声を出してしまうほど本当に抜群であった。修平はその婦人に聞いた。

「ここはどこですか?」

「ハウエル公爵の館です。私はここの娘でクリスティーヌと言います」

「???」

修平は何が何だかわからなかったが、目の前に美人がいることには違いなかった。

「ここは安全です。ゆっくりとお休みなさい」

というと、部屋から出ていった。疲れからか再び寝込んでいた。気がつくとあたりはすっかりと暗くなっていた。ミシミシと歩く音が聞こえた。扉が開き誰かが入ってきた。また

先ほどの美人かと思い近づいてくるほうを見ると違う顔だった。月明かりに現れたその顔は、全身を膠着させるものであった。手に持っていたのは、キラッと光るナイフ。それを上に上げ

「宝の隠し場所を言え!」

「そ、そんな物は知らない」

「嘘はついても無駄だ」

というと、そのナイフが振り下ろされ、足に刺さった。

「アアッ!」

修平は寝ていた椅子から床に落ち我に返った。

「何だ?夢か」

と、小さくつぶやいた。修平はこんな夢を見たのは始めてであった。


床に就いたがしばらく眠ることができなかった。 夢での出来事が脳裏から離れなかった。 「 ピピピッ!ピピピッ!」

突然目覚まし時計がけたたましく音を立てた。 修平は手探りで時計を探し、眠気をさまた

げる音を止めた。 しばらくして、寝不足のような顔をして修平はベッドから起きあがった。

修平は昨夜の出来事が夢のような現実のような不思議な思いがあったが、夢だととりあえず思うようにし、顔を洗い、トイレにいったあと、別に食欲もなかったので、コーヒーだ

けを飲み、慌てて支度をして会社にでかけた。 電車の中でも夢での出来事を考えていた。

携帯を取り出し中島康平に電話をかけてみた。呼出し音が数回鳴ったあと、康平が出た。

「もしもし、中島です」

「俺だ、修平、岡島修平」

「おう、修平か?久しぶりだなぁ、元気か?3年ぶりか?」

「それぐらいになるかな 」

「朝から何のようだ?」

「近藤慎一のニュースを見たか?」

「おう、見たよ。慎一殺されたんだ。今日の夜にでも電話をしようと思っていたんだ」

「葬式何時かしってるか?」

「いや、知らない。後でお父さんにでも電話して聞いてみるよ」

「じゃ、後で教えてくれ」

「ああ、わかった。あとでかけるよ」

「バーイ」

電話を切って会社へ急いだ。


「修平、おはよう!」

同室の河本が会社の手前で姿を見つけ声をかけた。 修平はぼんやりしていたのか、考えごとをしているように見えた。

「オーイ!修平」

と、河本が修平の肩を叩いて呼び止めた。

「ああつ、裕二か、おはよう」

「元気がないぞ?風邪でも引いたか?」

「違うよ。 一寸考え事をしていたから」

「それならいいけど。 元気だせよ」

河本が修平の肩を軽く叩いて言った。

「ああ」

その日の仕事は夢での出来事がどうも気になり、慎一のメールも気になった。 夜7時過ぎに冴子とレストランへ食事に行った。 イタ飯である。そこのレストランは値段が格別に

安いわりに味は抜群であり、いつも満席に近かった。

「修平さん、今日会社で何かあった?」

「エッ、どうして?」

「だって、すごく落ち込んでいるように見えるけど」

ワインを冴子はおいしそうに飲んでいるが、修平は何故かグラスに口をつけたまま、茫然としているからだ。

「あっ、ゴメン。ちょっと気にかかることがあって。別に会社とは関係ないよ」

修平はワインを半分ほど一気に飲んだ。

「タコと菜の花のピュアレでございます」

とウエイターが前菜を二人の前に置いた。

「おいしそうだなぁ、食べよ」

修平はフォークを手に取り、食べ始めた。 それを見ていた冴子はクスッを笑い、ナイフとフォークを手にとってタコに菜の花を絡め、口に運んだ。 菜の花の香りが口の中に広がり、タコの軟らかな歯ごたえが、春を感じさせていた。

「これ、すっごく美味しい!」

「うん!」

修平もこの味には満足していた。

「ところでさあ、冴子。 ヨーロッパの事詳しいか?特に歴史だけど」

「えっ、歴史、ヨーロッパの?」

「ああ 」

「どこ?わたしの専門はフランス革命よ」

「えっ!フランス革命?えー、 ジャンヌダルク?」

「そう当り!」

冴子はおいしそうにワイングラスを手に持ちおいしそうにワインを飲んだ。

「じゃー、質問だけどヒトラーの事知ってる?」

「ヒトラー、あのドイツの?アドルフ・ヒトラーの事」

「うん 」

「あまりよく知らないけど、 ヒトラーがどうかしたの?」

「いや、よく分からないんだ。 HPにハーケンクロイツとヒトラーの写真が出ていたんだ。 他にもあるんだが、 さっぱり判らなくて」

「ふーん、じゃー、そのHP教えて。後で見てみるから 」

「だめだよ、 パスワードで保護されてるから」

「されじゃ、 今度の週末修平の家に行くわ」

「そうか、そうしよう」

テーブルの上には、メインディシュの魚料理が運ばれていた。

「わぁー、おいしそう」

冴子が嬉しそうな声を上げて、ワイングラスを置き、ナイフとフォークを手に取り、皿に盛り付けられた魚を見つめていた。

「話は今度にして、じっくり味わおう」

「うん」

修平の携帯が鳴った。出ると中島からだった。

「修平、慎一の件だけど」

「ああ」

「あんな殺されかただったろう。通夜は今日親族だけで済ませたそうだ。告別式は明日1時から、近くの万松寺でやるそうだ」

「ありがとう」

修平は電話を切った。


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