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天使憑き  作者: 夢籐真琴
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地下通路

(あの親父・・・)

心の中で毒づくが状況はいっさい変わらない

本隊の潜入部隊っていったってやってる事変わらない

結局先に単独で潜入させておいて、状況を探ってこいという任務だった

今度の場所は都市(シティ)ーー

構想ビルが多く、狙撃の条件も揃っておりここで戦いを展開するのは非常に危険だ

だから結局同じように先に部隊を潜入させて撹乱させているうちに攻撃しようとの策だった

ただ堂々と都市に潜入するわけにはいかないので地下通路を使う事になった

確かに地上に比べれば安全だが、何故こんな抜け道をしているのかがわからなかった











緒方との会談を終えたあとーーー

本隊の船の一室を借りてゆっくりと休む事になった

各自が自分の部屋に戻り眠りをとる

地上に比べればかなり安全な環境とはいえるが、まだこの船は戦場のそばにつけてある

100%安全とはいえないが戦場で寝る事を考えるとかなり優遇な対応だとは思ったが・・・

次の日の朝早くに起こされて無理矢理ご飯を取らされて、用意する暇もなく戦場に放りだされなかったらかなりありがたい待遇だっただろう

しかし安全な場所で寝られただけでも戦場で戦っている立場からするとありがたい事だが・・・








そんな文句を永遠と心の中で繰り返していた

暗くて狭い通路ーーー下水道の中を永遠と歩く

もっとも下水道とはいっても水は流れておらず下の方から水が流れる音がする事を考えると水は下で流れていりらしい

今歩いている場所は何もない円柱型の通路だった

じめじめとしており、とてもじゃないが快適な場所とは言い難いが全員で黙々と進む

下水道に潜入して歩いたのが1時間近く経った

前にも上にも明かりが見えず、ただ猪野が船から借りてきた強力な懐中電灯の光だけが前を少し照らしている

強力な懐中電灯とはいう割に、ほんの少ししか照らされないーーー狭いはずなのに・・・

伊奈は身長は高いほうだが零ほどではない

その零がこのチームの中では一番身長が高いがその零がぎりぎり屈まなくてもいいくらいの直径しかない

地下に作る事を考えたら当たり前かもしれないが妙な圧迫感を感じる

おまけに空気孔がないために空気がこもっている

とてもじゃないがここでもう一日暮らしたら身体がおかしくなってしまう

そのくらいの地下通路だった










前方に小さな光が見えるーー

この通路でーー?

猪野も気付いて進軍停止を出す

猪野と零がアサルトライフルを構えて動かない

もちろん私も構えて高性能スコープで見てみたが、遠いのと暗すぎるのではっきりしない

しかし、かなり大きな光で少なくとも懐中電灯とかいうレベルではない

蛍光灯とでもいう明るさだろうか

猪野がボソボソと通信機に向かって喋っている

もちろんこんな予定はなくビルの地下から出て行く予定だった

その間にもずっと光を見つめていたが相手は動かない

こっちは懐中電灯を消している

こんな暗闇で明かりをつけていると見つけてくださいとでも言うようなものだ

最低限の明かりは必要なのでペンライト一本をつけているが、それでは心許ない

懐中電灯の凄さをこんな所で実感した

「動かねえな」

通信機越しではなく普通に零が話しかけてくる

「そうね、蛍光灯かしらね?」

「今まで歩いて来た中で蛍光灯なんてあったか?」

「ないね、だから不思議なの」

誰にも聞こえない様な小さな声でーーー

秋人や奈美にも聞こえないような小さな声でやり取りする

軍で訓練をする時に初めに訓練する基本中の基本だった

それが零にも出来るという事はーーー

確実に零が軍か何かしらで訓練を積んでいたことがわかる

だいたい狙撃のやり方や銃の撃ち方、そして歩き方で一般人とは明らかに違うのだ

(絶対に訓練を積んでいる!)

妙な確信を抱いて通路先を睨んでいた伊奈だった










「このまま進む、戦闘態勢をとれ」

「了解」

猪野の指示がくる

どうやら本部との話し合いでこのまま進む事になったらしい

今度はペンライト一本で進む

それもかなりゆっくりだ

全員の息遣いから緊張しているのがわかる

先程とは違うピリピリとした空気のなかゆっくりと進む

一歩一歩しっかりとした足取りでーー思ってた以上にも遠い遠くの光を目指して進む

「・・・」

黙々と進む・・・

戦場では当たり前だが、こういう沈黙は一種の緊張感を与える

そしてその緊張感は身体を強くし、弱くもする

戦場で生きて帰って来る者はほとんど緊張感を力に変え、立ち向かっていった者だ

もちろん戦場(ここ)には実力では対処出来ない事柄もある

自分より技量も身体も劣っているのにそいつだけが無事で帰ってくるというのは不思議ではない

むしろ日常茶飯事だ

それは運だとか奇跡だとか言われるが、それも実力のうちだ

そういう意味では今回のチームは強運の持ち主が揃ったと言ってもいいだろう

山小屋での激戦は厳しく誰が死んでもおかしくないなかで全員生き残れたのだから

チームというのも戦場で生き残るかの鍵にもなる

伊奈自身チームの中で1人だけ生き残ったりした事もある

しかし、実際はそのチームの行動一つで戦況が変わったり、生き残るか死ぬかの生死の別れを決める要因にもなる

それからチームを指揮する者

これの存在も非常に大事になる

指示の一つで全滅したり無傷で帰ってくる事が出来たりする

猪野は隊長としては当たりだと思う

実際厳しい場面も生き残れたのだから











これはあくまで伊奈の実際に生き残った者としての意見であり、全員の意見ではない

死んだ人間に意見を聞くわけにはいかない

だから生き残った者としての感想であり一個人の意見なので賛否両論あるだろう

だが結局は生きるか死ぬか

生きて帰ればもっとも良い

生きて帰った者としての意見だから、自分が死んでも同じ事を言うとは限らないし、まず言わないだろう

ただそれ以上に今でも生きていりという事が大事だった

生き残ればよいーー

そう伊奈は考えていた












通路の遥か彼方に見えていた光が徐々に近づいてくる

そしてペンライトが必要なくなるくらいの光が差し込んできた

薄明るいといった表現が1番あっていりだろうか、そのくらいまで近づいてきた

案の定、敵が持っている懐中電灯などではなくて、蛍光灯光のようだが・・・

「いやいや・・・」

秋人の呟きをマイクが広い流れてくる

気持ちは全く一緒だった

通路の先はポックリとなくなっており、通路の延長線上に蛍光灯がつるしてあった

「不用意に動くな、警戒しろ」

猪野の声も焦りが見えていた

「嘘だろ・・・」

猪野の先に絶壁の下を見降ろした零が呟く

後ろから出てきて同じように見降ろす

「・・・」

絶句だった

言葉が出なかった

下にはーーー

工場の一角のような広いスペースに・・・






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