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天使憑き  作者: 夢籐真琴
69/104

前には進まぬ道が狭き

その夜はそのまま寝ることになった

問題も起こらず静かな夜だった









次の日ーーー

朝早く起きた零は外で昨日と同じ場所に立っていた

背中に気配を感じる

しかしそれは昨日とは違う敵意の無い気配で零はそのまま前を向いていた

彼女が横に立つ

そして荒野を見渡せる位置であるこの場所から遠い空を見ていた

伊奈だった

「まさかねぇ、天使さんだったんだ」

「ああ」

ドロシーの事を言っている

「そして何故か私は戦争に」

自分が悪いわけではないが結果として巻き込んでしまったことに若干の罪悪感を感じて謝る

「悪いな」

「別にいいよ、菖蒲もやる気だし、菖蒲にこっち側のサイドで戦わせたら敵無しだよ」

「確かに・・・」

苦笑する

世界一の実力を持つ菖蒲が銃制限がかかっているこっちの領域では敵はいないだろう

「零も一緒」

「ん?」

意味がわからなかった

「零も菖蒲に勝ったよね、だからそれ以上の実力を持っている零も敵無し」

「あぁ・・・」

そういう事もあったなという同意だった

「納得してるのか?」

「何に?」

「この状況にーーー強制的に連れてこられて戦わされるこの現状に」

「仕方ないでしょーーー今までもそうだったから・・・」

最後の言葉は呟くようになって聞こえずらかったが・・・

「それに零の天使さん綺麗だし、協力するわよ」

どんな判断の仕方だ・・・と内心呆れていたが、これも伊奈らしいと改めて認識した

「ねぇ?」

声が少し小さくなる

「ふん?」

少ししゃがんで耳を近づける

「天使さんとどこまでいったの?」

「はぁ!?」

いつも通りの突拍子もない伊奈の言葉に脳が付いていっていない

「菖蒲を拒否していたのあの天使さんがいたからでしょう、前にあった時もかなりの関係ぽかったし」

頭を抱えた零が何も言えないのをいいことに伊奈が続ける

「あの天使さん綺麗だし、強そうだし、零の好みだよね~」

「・・・」

「でも天使と人間の結婚なんて出来るの?」

「一応出来るらしい・・・」

前にサミさんに聞いた情報だ

「するの?」

「しね~よ」

「じゃあどういう関係よ?」

相棒(パートナー)だよ」

「・・・」

ひたすら喋っていた伊奈が押し黙る

どうやら自分の話を聞いてくれるらしいと安堵した零が続ける

「俺と天使は同調している、だから菖蒲の家にもあいつは来る事が出来た」

「同調って?」

「それは企業秘密です」

茶目っ気たっぷりに言う

伊奈も納得はしていない表情だったがひとまず保留にしておくらしい

その時ーーー


音のなる大きな風が吹いて来た

片手で眼を覆い風に耐える

そのくらい強烈な風だった













眼を開けた時零がいたのは広い建物の中だった

広場なみの大きさで一瞬中庭かと勘違いするくらいの広さだった

(・・・伊奈?)

直前まで一緒にいた伊奈の姿が見当たらない

(相変わらず適当な魔法だな)

零はあくまで感覚だがドロシーと他の天使達の魔法の違いはわかる

あくまでも感覚で確証はないが・・・

この魔法は誰か違う天使なり堕天使が使った魔法だとわかった

しかしーーー

ここに連れてこられてから視線を感じる

(何だよ?)

自分が特に問題を起こした覚えも無いので首を傾げる

視線を感じる事は現世から多々あってそれは慣れたつもりだが、この視線は確実に悪意がある

(気に入らないな・・・)

誰も襲ってくる気配は無いが嫌な目線を送ってくる

立ち上がってじっとしていたが収まる気配がない

(だから何なんだよ?)

襲って来たら反撃する

それだけの話なのに誰も攻撃してこない

非常にやりにくい

さっさと攻撃してくればこんな悩みは無いのにーーー

とどこか的外れで理不尽な怒りを抱えていた











かといって相手が仕掛けてこない以上ここにいる意味は無いし危険だ。部屋の端にたまたま見えたドアに向って歩く

速くも無く遅くも無く、気負いのしていないゆったりとした歩き方でとことこ歩く

自分に悪意のある視線がつきまとっているのがわかっているが零の実力では見つけることも攻撃することも出来ない

何も考えていないように見せつつ、警戒をして歩いているとーーー

「待て」

右手から声がかかる

周りを見渡して誰もいないことを確認するとーーー

「俺?」

ゆっくりと首を右に向ける

零の右手に握っているのは一見ボールペンを太くした物

気付かせないようにしていたが臨戦態勢は出来ていた

「お前がドロシアさんと組んでいる人間か?」

「知ってるのに聞かないでいいでしょ」

一瞬ドロシアさんというのが誰だかわからなかったが飄々とした態度を崩さずに言う

「人間の分際でなめた真似を」

「すみませんねぇ、礼儀知らずで」

零の眼に写っているのは自分と同じくらいの男だった

しかし外見と内面は比例しない(勝手に零が考えた)のが天使なので取り敢えず目上の者に対する態度を取りながらもあからさまな嘲笑はやめない。まぁ相手の身長が自分と同じくらいなのでもしかすると同じくらいかもしれないが・・・

「こんな屑の人間と組んでいるなんて・・・ドロシアさんも不幸なお方だ」

だから『ドロシアさん』はやめろという零の内心の叫びは届かない

「こんな屑なら居ても居なくても一緒だ、私が片付けてやる」

そんな物騒な文句を口にしたとたんーーー

零は驚異的な反射神経と跳躍力で後ろに飛び移った

ついさっきまで自分がいた位置には短剣は3本突き刺さっている

そのままだったら間違いなく息をしていなかっただろう

「人間にしては少しは出来るのか」

「ありがたいお言葉で」

そう言いながらも次々と襲ってくる刃をよけて撃ち落とす

意識はしていないが何時の間にか右手には短刀の形になって握られている

相手の動きを見てから動くのは間に合わないーー一瞬の動作に身体を反応させてーー落とし、避けるを繰り返す

「・・・」

相手が絶句しているのを見て笑いながら

「残念だけど、ただの人間じゃないんでねーーードロシーの相棒なんでね」

「人間風情が調子にのるな!」

今度は本人が直接攻撃しに来た

これには零はありがたかった

(投げられてばっかりだと攻撃出来ねぇからな)

さっきの挑発的な態度も相手を怒らせて正気を無くさせるための事だ

(これで五分に出来る!)

零も接近戦を望むように近づいては離れてーーという攻撃を繰り返す

この動作を繰り返していると相手についてわかった事がある

それも決定的な事がーーー


自分の方が脚は速い


相手が自分についてこられない以上、圧倒的に自分が有利に戦いを展開する事が出来る

短刀を手に今度は偵察ではなく本気で攻撃を仕掛ける

「くそ、人間ごときに?」

急に勢いが変わった零に驚いたのか防戦一方に陥っている

周りの者も助けようとはせずただ傍観しているだけだ。しかし零は感じ取っていたーーー今までの目線と今の目線は違う。明らかに戸惑ってどうしようかと迷っている

(今のうちだ)

足を相手の腹に入れ態勢を崩させる

手だけに集中していた相手には突然出てきた足の攻撃を防ぐことが出来ずそのまま倒れ込み零はその勢いを利用して両足に体重を乗せて腹に膝を落とす

「うぅ・・・」

みっともない呻き声を上げた相手は目の前にーー正確には脳に突きつけられていた零の持っている短刀に気づき顔を真っ青にした

零からすると今ので気を失わなかったのは驚き、尊敬に値する体力だが、よく考えてみれば相手は人間では無いーーー当たり前かもしれないなと妙な納得の仕方をした

脳に短刀を突きつけたまま聞く





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