招かざるお客様
荒野が見える
不毛の大地だ
荒れ果てた土地が永遠と続いている
草木は生えずただ割れた土地が続いている
周りには誰も存在せず静寂が漂う
零の身体は頭から再生してついに足まで到達した
(やっぱ気持ち悪りぃ)
当然の感想を浮かべ地平線を見つめる
遠い昔に辿り着きたかった地平線をーーー
どこまでも続いているあの場所にーーー
どこまでも走って行きたかった
懐かしい感情が出てきて苦笑した
(我ながら珍しい)
空には雲一つない快晴ーーーとはいかずそれなりに雲が漂っていた
零には快晴よりそのような微妙な空が好きだったーーーあくまでも零個人の意見だが・・・
それにしても人の気配がせずこの広い大地に放り込まれれば自然と不安が現れるはずだがそれはなかった
ただ地平線の彼方を見つめていると背中に気配を感じる
(?)
悪意は感じられず、放って置いても良かったのだが、ここにはいるはずのない懐かしい気配がしたので振り返ってみる
「はぁ?」
間抜けな声を思わず上げてしまう
「何してんだ?」
そこには寝転がって気絶(?)していた奈美の姿があった
「久しぶり」
眼が覚めた奈美が珍しくも先手をとって言った
「うん」
いつかの時と同じく曖昧な返事を返す
「ここはあ何処?」
顔をにこにことして聞いてくる
わざとなのか元々なのかわからないが非常に怖かった
(こいつ性格変わってないか?)
零がそう思ったほどだった
それよりーーー
「なんでおまえここにいるんだ?」
「知らない、宮西君が連れてきたんじゃないの?」
「ドロシー!」
怒気を含んだ声を奈美に聞こえないように通信する
しかしそんな必要は無くーーー
「ここにいるわよ」
どこか疲れたような表情で後ろに現れる
「お前なぁ!」
「私じゃないわ。神様に文句言って」
「洒落か?」
「本気」
「わかった」
とりあえずドロシーの行動ではないだけでもわかったのは良かった
「それで、なんで奈美がここにいる?」
それには直接答えず
「招かざる客はまだいるわよ」
後ろを顎で指す
「・・・」
振り返るのがこれほど怖いと感じた事は初めてだーーー
そっと振り返ると
「零、これはどういう事だ?」
菖蒲だった
さらに伊奈までいる
「あ、あの時の!」
伊奈がドロシーを見つけ
「久しぶりね」
ドロシーの回答も疲れたような呆れたような声になっている
「ドロシー?」
「・・・」
何も答えずまた後ろを見るように促す
「・・・」
よく知っている気配ーーー
「あ、天使さんこんにちは!」
渚を始め零の家族だった
大和は聞いていたが珠や渚に関しては来るとは聞いていない
「いい加減にしてよ」
ドロシーが通信で呟いたコメントは零と全く同じだった
「なんでいるんだ?」
突然黙りこくった零とドロシーをみんなが不審そうに伺う
もちろんドロシーとの通話は通話を使っている
「知らないわよ!」
「神様のせいか?」
「おそらくね、どうせあなたが抜け出した事を不審に思って授業を抜け出して追跡されてあなたが飛ばされる瞬間にあなたの事を思っていた人種でしょ」
「差別的に聞こえるのは気のせいか?」
「当たり前でしょ、この人達どうするの!」
「俺に聞くなよ!」
「本当曖昧な結界を張るからよ!」
これにはただの人間である零は反応できない
「帰す事は出来ないか?」
「私たちの事が知られた以上帰すわけにはいかないし帰す方法もわからない」
肩をかなり落として嫌そうに言う
「でもね・・・」
ドロシーが付け足す
「ここに来たからにはそれなりに実力がある人達よ」
「実力?」
「前に渚ちゃんにも言ったわよね、あなたと同じ人種だと」
零の顔に緊張が走る
「まさか・・・」
「そのまさか・・・どうしよう本当に」
完全に困っていた
風が笑っているように零達を包み込んだ