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天使憑き  作者: 夢籐真琴
58/104

底なし沼から出てきた物は?⑵

「そう話を急かすものじゃありませんよ」

雅のおっとりとした声で諌められる

「俺は暇じゃない」

突き放す

実際暇ではないのだ

本当はこの時間は授業中であり、決してこんな事に時間を取られているはずでは無いのだ

学生は本来勉強をしなくてはいけないーーー思っていないが・・・学生の鏡である零(?)の中での理屈を雅は読み取ったようであっさり言い返してきた

「学生は遊ぶ事も大切ですよ」

「・・・」

正しいーー確かに正しいのだがこれが遊びなのか?遊びにあたるものなのか?という零を軽くスルーして雅は

「しかたありませんね。私もあまり時間はありませんし。(こう)、説明をお願い出来ますか?」

「承知しました、雅様」

「それでは失礼しますよ。またね零君」

「俺は2度と会いたくないがね」

「菖蒲もしっかり煌に協力してください」

「わかりました。お気をつけて」

「ええ」

零の嫌味ははっきり無視されて雅は出ていった









来賓室48別名山蕗家専用室に残された3人だったが零は早くこの異常で意味のわからない会合を終わりたくて、菖蒲は母親から命じられたこの不思議な人物を観察していた。

零も雅に「表面上存在しない仕事」と言われた煌の仕事の内容がだいたいわかるので、失礼だが安全のために透視(スキャン)させてもらって武器を確認させてもらう。

(足首に2本、腰に2丁・・・あとは弾薬か)

一応把握させてもらったので安全に(?)話が出来る

「それで、用件は?」

「う~ん、どこから話そうか・・・昨日死体が見つかってね。見つかった状態から考えるとおそらく今年の夏ぐらいかな、だいたいその時期だと思う」

「死因は?」

「鋭利な物で首を一撃」

「場所は?」

菖蒲が刑事のように尋ねていくが、煌の一言に驚かされた

「ここ。山蕗高校」

顔が厳しくなる菖蒲を横目で見つつ質問する

「それにしては?警察が来てないですね」

「警察には知らせていない」

さらに菖蒲の顔が厳しくなる

「何故?」

「それは山蕗家の内部事情。私の管轄外です。お隣にいらっしゃるのでお聞きすればどうですか」

菖蒲を眼でさす

「それで?あんたがした契約は?」

「犯人の逮捕及び引き渡し。状況によっては殺してもよいと言われましたね」

あっさりと殺害を予告する言葉に少し意外な感を持つ

「お綺麗な顔でよく言いますね」

煌の顔は確かに中性的な顔で人殺しはもちろん銃さえ握った事がなさそうに見える

煌は苦笑して

「そういう趣味にはあいにくですが対応しておりません」

「どういう意味ですか?」

「同性愛という点です」

「だってあなた女の方でしょう?」

「!?」

煌の顔の無表情が微かに崩れる

菖蒲も驚かず同じ事を思っていたみたいで挙手して

「あ、私もそう思ったが、やっぱり女の方ですか」

黙っている煌を放っておき零と菖蒲で話をする。

「よくわかったな」

「あんたもだろう」

「私は女だ。相手が同性かどうかぐらい見ないでもわかる」

見ないでもーーーの言葉に疑問を感じ聞いてみる

「じゃあ何でわかったんだ?」

「匂いだ」

「匂い?」

零と煌の声が重なる

「匂いが女の物だった。少なくとも男の匂いはしなかった」

今度は絶句した煌と零だが、先に零が立ち直り

「あんたは犬か」

「私は鼻がいいからな」

「そうかい」

げんなりとして言い返す

「それで?なんで男装しているのですか?」

煌が男である可能性は全く無いとばかりの口調で聞く菖蒲を見て苦笑して煌は

「そうですか。匂いですか。そこまで気にしていなかったですね」

「気にした方がいいですよ。女性は鼻がいいと言われますからね」

アドバイスをしている菖蒲に本気で帰ろうかと思った零だった




「そういや零君は何故私が女だとわかりましたか?参考にでも聞いておきたいな」

まさか白銀の眼を使ったとは言えないので理由を考える

(どうしたものか?)

と真剣に考えてとりあえず時間稼ぎに思いついた事を言う

「確かに煌さんの声で女性だとは思わないし男性で十分通用するけど・・・」

「けど?」

菖蒲も気になったらしく耳を傾けている

「腰にーーー正確には太腿につけているライフルがあるでしょ?まぁ個人差はありますが男性がどんなに頑張ってもライフルは太腿にはつけれないですよね。あなたはそれがわからないーーーだから足は細いと考えました。ついでに足首にあるナイフも使いやすそうですね」

今度はお返しとばかりに零が菖蒲を絶句させた

もちろん煌も眼を見開いている

「零君・・・よく見てましたね」

「まぁ自称暗殺者の武器ぐらい把握しとかないと危なくって仕方ないですから」

咄嗟についた嘘だが上手くいったようだ

実際自分も制服ないに拳銃を隠している立場だからどこらへんの事情がよくわかるからだ

今度は菖蒲が呆れたような眼で見てくるので尋ねてみる

「何だ?」

「お前なぁ、女の太腿を見ていたのか!お前変態か?」

・・・・・・・

場が静まり返ってーーー

数秒後

「お前それはおかしいだろう。確かに武器をチェックしたがわざとじゃないし、だいたい女だってわかったのは後だぞ」

「お前男だったらいいのか?それまた変態だな」

激しく論旨が間違っているが痛いところをつかれた

「いや、実際わかってたけどそれからは見てないし」

「じゃあなんでライフルを持っているとわかったんだ?お前じっくり聞いてる振りして見てたんだろう」

「相手は暗殺者だぞ!」

「私は暗殺者ではありません。仕事内容によって変化するだけです!」

ここで暗殺者という単語に反応して煌も参加してくる

「そこじゃないだろ問題は」

「だいたいお前がなぁ・・・」

「そんな~私の太腿を見て話を聞いていなかったんですか~」

「ちょっと黙れ」

「お前相手はせめて1人にしろ」

「浮気ですか~」

「黙れ暗殺者」

「だから暗殺・・・」

「それは聞き飽き・・・」

「だいたいなんでライフル・・・」

「使い易い・・・」

「うるさいー論点が違うだろ」

「元はと言えば・・・」

埒のあかない不毛な言い争いは昼休みまで続きましたとさ



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