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天使憑き  作者: 夢籐真琴
55/104

蒼白い月の空を(21)

「・・・」

どう答えたものかと思案していると伊奈がドロシーと見つめあっている

ドロシーは平然としている目線を送っている

一方、伊奈はドロシーの上から下まで観察する様に見ている

そしてこっちに目線を送り

「で?誰?」

「・・・」

ドロシーに視線を送っても

(私は知らないわよ)

という風な眼をしてどこ吹く風で立っており実際通信に応じない

(覚えてろよ・・・)

最初にーーー雅に拉致された時に先に通信を切ったのは零なので文句を言える立場では無いのだがすっかり忘れてしまっている

それよりもこの状況をどう打開するかに頭を使っている

「こいつは」

「?」

ドロシーまで何と答えるのか興味津々で聞いている

「俺の相棒(パートナー)だ」

「・・・」

苦し紛れに言った言葉だ

ドロシーは呆れたような目線を送ってくる

さらには通信の規制を解除して

「もっとましなのがあるでしょ」

もちろん声には出していない

「じゃあなんて答えんだ?」

「彼女とか?」

「なんで疑問系なんだ・・・それにそんな事言ったら俺は浮気してる事になるじゃないか!」

そう言い返すと、ドロシーは心外ともいう風に

「あら、あなた今誰とも付き合ってないじゃない」

「う・・・」

「問題ないでしょ?」

伊奈が見ていない瞬間に笑顔で返してくる

「そんな事言ったら余計ややこしい事になるじゃないか」

今度は呆れた表情で

「あなた馬鹿?相棒なんて言った方がかなりややこしいじゃない。実際伊奈ちゃん理解していないはずよ」

そこで睨みつけていた目線を伊奈に戻すと確かに何かを考えるように上を(天井を)睨みつけている。

「どうする?」

「あなたがまいた種でしょ。自分で対処しなさい」

「お前相棒だろ」

「なんであなたの尻拭いなんてしなくちゃいけないの?」

「女の子がそんな言葉いうんじゃない」

「それほど汚い言葉じゃないでしょ。それに私は天使よ。女の子じゃない」

「前と言ってる事が逆じゃないか?」

「気にしない。それよりあなたあんまり脳が働いていないようね」

「ああ・・・」

自覚はある

さっきから自分が何を言っているのか理解をしていない

ただ、反射的に言葉を返しているだけだ

正直今は話しているのが限界だ

立っているのもきつい

半分ドロシーにもたれ掛かっている

自力で立っている状態がきつい

何とか踏ん張っていると

「わかった」

伊奈がいきなり声を発したので顔をあげる

「その綺麗な人は零の相棒なのね」

「?」

言っている事は合っているのだが理解出来ない。

伊奈が自分達の関係を理解したのか?と

「それで、零の綺麗な相棒さんのお名前を教えてくれる?」

「ドロシア、ドロシーでいいわよ」

「あれ?外国人の名前なのに日本人みたいな顔ですね」

「いろいろ混ざってるのよ」

「そうですか」

ドロシーが受け答えしたが零もドロシーも疑問に思っていた

「ねぇ?伊奈ちゃんは理解したのかしらね?」

「まあいいだろ。この場が収まったから」

そろそろ受け答えする気力が無くなった

ドロシーの肩を持つ手が落ちそうになるとドロシーも心得たもので力強く引き寄せてくれる

「そろそろ帰るわね」

「そうですか。さようなら」

「じゃあね~」

「じゃあな」

最後の気力を振り絞って答えた

そして廊下の角を曲がり伊奈の姿が見えなくなった時

「悪りぃ。時間切れだ」

「わかったわ」

ドロシーが言ったと同時にドロシーの腕の中に倒れこんだ














2人が廊下から見えなくなると伊奈は小さく溜息をついた

菖蒲との戦いを見てから零はただ者ではない素質を感じていた

身体の動き、作り 反射神経をはじめとする数々の人間離れした能力ーーーそれは確かに認めていたが、よりによってあんな(ドロシー)を相棒だなんてーーー

だいたいここはどこだ?菖蒲の家だ。山蕗家の本拠地ーーー単純な構造に見える古い大豪邸でも警備システムは並外れている

それなのにあっさりと自分の目の前に現れた零の相棒と名乗る女ーーーしかも相当仲が良さそうーーーそんなもんじゃない、完全に零は女に信頼を、自分の命さえも預けていた

それはあの短いやり取りや2人の言動を見ていてわかった。零が普段自分達には見せない表情と身体の緊張を解いていた

零と初めて一緒に弁当を食べた時に気付いたが、零は学校では自然体に見えていても絶対に緊張感は解いていない。寝ている時も見たことがあるが常に自分の身体周りからある種の雰囲気(オーラ)を纏っている。それは伊奈の近くでもよく見る菖蒲と同種のーーー結局は戦いの中に身を置く者の雰囲気を感じさせた

伊奈は初め、菖蒲と同じように小さい頃何処かで訓練を積んだーーーもしくはどこかの戦場(・・)にいた経歴でもあるのかと思い山蕗の力で検索したがまったく出てこなかった。それに2人で首を傾げて、もともと生まれてくる時に偶然なったのか?と勝手に定義付けをしたのだが、あっさり外れた

菖蒲の実力は伊奈にははっきりとわかっている。だからこそその菖蒲に勝ってしまう零の実力を認めた

その学校でさえ油断しない、気を抜かない零があっさりあの知らない女の前で気を抜いたのだ。嫉妬を感じないわけがない。しかもあの女が相棒だと零が言った。自分の美貌は相当に美しい方だ、菖蒲にも引けを取らないと思っている。それはうぬぼれでも自意識過剰でも何でもなくただ事実として認めている。

だから、零は確かにイケメンの部類に入りかっこいいが、まさか菖蒲になびかないとは思いもしなかった。だったら自分ならと何度も誘ってみたが結果は出なかった。それなのにという思いであの綺麗な女を少し嫉妬した

(まぁいいか)

ここであっさりと割り切れてしまうのも伊奈だから出来る事であって、次にあの女の事を菖蒲に伝えるかと思案にくれているのも伊奈ならではであった。





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