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天使憑き  作者: 夢籐真琴
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蒼白い月の空を(18)

2人の激闘が始まってから10分程たった

両者とも一歩も引かない戦いに真は感心していた

若干危機感を感じ認識を変えたといっても、菖蒲が勝つ方に賭けている

それでも勝敗がつかない

よくもまあ菖蒲の体力についていける男がいたもんだーーー世界は広いなーーーと微妙な感想を持っていると2人が一休みするようだ

後ろに下がり息を整えている

それもそのはず、あんなに激しく動いておいて息がきれないはずがない

(?)

零が短刀を腰に差しだした

(何やってんだ?)

身体が重くなり動きづらいのはわかっているはずなのにーーー人間の手は所詮2本しかなく2個しか物を持つことは出来ないのにーー

と思った瞬間勝負が動いた

(!?)

零が短刀を投げた

これはちょっと反則だ

仮にも本気で女の子に武器を投げるなんておかしい

立ち上がろうとすると

菖蒲が薙刀で弾いた短刀がこっちに飛んでくる

(わ!)

慌てて避けて隣に座っていたはずの伊奈を見ると座ったままどこから持ってきたのか、これまた短刀で撃ち落としていた

(・・・)

呆然としていると

「おじさん そろそろ終わりますよ」

「ああ」

その言葉通り菖蒲が体制を崩している零に攻撃を仕掛け見事にヒットした

骨が折れたのではないかと不安に思ったが菖蒲はそんな事を気にせず猛攻を仕掛けている

零は防戦一方になっている

必死に防いでいるがこの体制では菖蒲の攻撃を止める事は出来ない

予想通り最後の一本を弾かれ手持ちの武器が無くなった零を後ろから菖蒲が薙刀の刃と柄を持ち首に突きつけた

機から見ると変な格好でしか無いが(菖蒲が後ろから零に抱きついているようにーーー抱きついているように見える手は薙刀だがー)これは相手の降参宣言がない限り勝敗が決まらないので仕方がない

実際は刃を首に突きつけられてーーー背中に銃を突きつけれるのと一緒だが、投降するしかない状態を菖蒲が作った

「勝ちか!」

少し興奮した声で言うと

「いや・・・零の勝ち」

伊奈が呟く

真は立ったままだったのでーーー見下す姿勢になったが、伊奈の言っている事が理解出来なかった

菖蒲が零の攻撃手段を封じ、首を抑えた

これが勝ち以外の何になのか

疑問に思い尋ねようとすると

「菖蒲!?」

零に倒れかかる

それを零は両手で受け止める

理解が出来ず眼を見張っていると

「右手・・・」

伊奈がこっちを向いて呟く

(右手?)

視線をそれに向けると

(!?)

さっきには無かった短刀が右手に握られていた










勝利を確信した

確実に捕まえるまでは油断をしないのが普通だが、もう完全に勝利だ

(勝ったか・・・)

これでお母様に顔向け出来る、と安堵した

途中は正直負けるかもしれない

そう思ったのは事実だが結果自分は勝っている

ゆっくり息を吸う

零の匂いが少しした

零の身体が震えている

どこか調子が悪いのか?と尋ねようとすると笑っている事に気づく

何故笑う?今度は詰問しようとすると

零の右手が不自然に曲がっているのに始めて気づく

その先にはーーー

「!?」

自分の腹に短刀が突き刺さっているのがわかる

しかし不思議な事に痛みがない

ただ・・・意識が遠くなる

最後の気力を振り絞って零に問う

「何故・・・一気に・・・やらなかった・・・?」

「あんたと話したかったからだよ」

「そう・・・か」

安心して零に倒れかかった










零も倒れてきた菖蒲を心得たもので振り返り両手で菖蒲を抱き寄せた

自分の手の中で眼を閉じている彼女はあまりに普通の女の子でーーー顔は小さく身体も細い こんなのであんな力を平然と出すのだから

(詐欺だよなぁ~)

しかし、こうして見ていると女相手に短刀を投げるなど大人気なかったと反省する

それだけ彼女は魅力があった

(ただ口がね~誰に似たんだか?)

その口を似させた張本人を見つめる

よく見てみると雅も整った顔立ちをしていた

(雅譲りか・・・?)

真には悪いが、ちっとも似ていない

それと右手に握られて今は短刀となっている天使からの贈り物を握る

本来なら何も生み出さない無機質な物だが、今ではドロシーを短刀から感じ取ることが出来る

使う機会が多いせいか、ドロシーの分身のような気がする

最近ではそんな心境の変化?があった

(今回はこれに助けられたな)










菖蒲に短刀を持っていかれて武器が無くなった

(仕方ない)

ドロシーとの同調がないとこれは使えない

(天使!)

背中を取られる瞬間に菖蒲の死角を見抜きそこから菖蒲の腹に差し込む

(悪いな)

一瞬で倒せるが、少し息が続くようにしておく

菖蒲の香りがフワッとした

(いう趣味してるじゃないか)

本当に自分は浮気をしているのかと少し嫌気がしたが、よく考えてみれば奈美とは別れていた

(問題ないか・・・おい)

ドロシーと同調を切っていたのであっちが心配したのか、同調してまだ起動していないのに眼と頭に違和感を感じる

いつもは使っていなかった白銀の眼が久しぶりに使ったせいで、鬱憤を晴らすように勝手に起動する

(おい、完全無視かよ・・・)

呆れながらも久しぶりに使って見る

木の材質

短刀の調子

「まじかよ」

最初に使っていた短刀より少し長い刀が割れかけている。もちろん材質が木なので割れる可能性はいくらでもあり、別に問題ないのだがあと一回攻撃されてたら確実に割れていただろう

(危ねぇな・・・)

手の中で眼をつぶっている菖蒲を超危険人物と再認識する

(こいつがね~?)

なんだか不思議な感覚を覚えつつもまた少し笑った


雪解けはもう少しだった


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