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天使憑き  作者: 夢籐真琴
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蒼白い月の空を(11)

昼休みが終わり教室に帰って来た零だったが、何やら気まずい雰囲気で居心地が悪かった おそらく、良太と美夏も事情を知っているようだが、懸ける言葉が見つからないとでもいうような顔をしていた

零自身あまり自分の考えに答えが出ていない

奈美と別れるのが一体良策なのか 少し前にドロシーが言っていた戦争はどうなるのか 自分が帰らない状況になった時どうするのか そもそも、奈美の事を好きだったのか これははっきりと否といえる そもそも好きではなく相手から強引に誘われたのだ しかし強引だったにせよ、自分は奈美と付き合うのを了承した これが何を意味するのか もしかして自分は奈美の事を好きだったのではないか それでも確かに最近は菖蒲と伊奈と食事する事が多くなった 最初に結納しようと強引に迫られた時には拒否したが、実は自分は山蕗家に惹かれている部分があるのか 奈美のいう通りの金に目が眩んだ亡者なのか しかも食事代が浮くというの単なる口実で本当は、菖蒲や伊奈のどちらかが好きなのではないか 確かにあの2人(主に伊奈と喋っていたが)といる絶妙な空間はとても心地よかった 菖蒲の持つ自分とおそらく同じ過去と、伊奈の独特な空気が自分を捕らえていた? 2人に興味を持ったのは事実であり、言い逃れは出来ない もしかすると 奈美はその事に気付いていた?

(あ~答えが出ねぇ)

珍しくも5時間目を起きて授業を受け(頭の中では他のこと=奈美や菖蒲のこと を考えていたが)答えが出ないので、考えるのを諦めた

零は気が短い性格ではなく、むしろじっくりと腰を据えて物事を考えるタイプだが、答えの出ない問題は違う さっさと諦めて考えないようにする しかし少しでも解決への糸口が見えるのなら、解決への可能性が1%でもあるのなら諦めずにいくら時間がかかっても零は考え続ける

しかし、この問題には答えがでる可能性が無いと判断して黒板を見つめる

授業は近代史の事をやっていた

いつの間にか、話好きで別名雑学王の担任教師がいつものごとく脇道に逸れてしまっている 山蕗高校にはこういうような独特な教師を多く集めている

「いろいろな進路で羽ばたける生徒を作る」

という校風どおりの対応だ


「ある人物かこう言った 『俺は彼女と結婚する事は出来ぬ その1ヶ月後に散りゆく命だからだ しかし彼女を幸せにしてあげられる者は俺以外に居らぬ』そして その人物は特攻隊だったんだが、1ヶ月に亡くなられた しかし生前の彼を見ていた人物は以外にも幸せそうに見えたという 理由は定かではないがおそらく彼女を幸せにする事が出来たからではないかと考える その彼女は彼が死ぬ2週間前に結婚したそうだ 初めはその彼女は嫌がっていたそうだが、結婚してみるといい人物だったそうだ そして彼女は幸せそうにしていたそうだ」

静まり返って聞いている

(彼女の事を好きだから?)

その彼女が誰を指すのかはその事を考えた零自身、よくわからなかった













珍しくも授業中に来客がやってくる

「失礼するわね」

ドアが開いて屈強な2人を先頭にある女性が入ってくる

担任の顔が引きつっている

どうやら知り合いのようだが

(誰だ、あいつ?)

一応、服の中に隠してある拳銃の弾倉を確認してポケットから伸び縮み自由の棒を手に握る

1人の生徒が

「すみませんが、貴殿は誰でしょうか?」

当然すぎる質問をする

「ああ、皆さん知らなかったかしら 私は山蕗雅よ よろしくね」

教室が異常な静けさに包まれる

山蕗雅ーーー

顔こそ知らなくても名前ぐらいは零でも知っている 山蕗高校の理事長でありこの近辺の実質の支配者である山蕗家の当主である

(またやばいのが出て来た)

若干人とずれた感想を持ちながら真偽を確かめようと隣を見たが

(忘れてた・・・)

なにやら用事があるとかで、5時間目を伊奈と一緒にサボると言っていた事を思い出す

(それにしても・・・何をしに来たんだ?)

首を傾げていると

「宮西零君はいるわね?」

疑問ではない 確認だった

反射的に頷いた生徒を見て

「それで?宮西零は誰?」

支配者の声というのだろうか?

貫禄があり人を制圧する事に慣れている声だった

(気にいらないな・・・)

わざわざ学校まで来てもらって失礼だが、名乗り出るつもりはさらさらなかった

しかし零ほど豪胆な心臓を持った者は居らず、チラチラと視線を感じる その視線を感じて当然のごとく零が誰なのかわかってしまう

「あなたね。娘を困らせているのは」

歩いて机の隣に来る

視線が集中する

零は冷たい眼で雅を見つめただけだった

「いい根性してるわ ついて来なさい」

「嫌だと言ったら?」

教室が少しざわつく

ある()を囁かれる

零の眼が変わった

そして、雅は教室から去っていった

それでもついて来ない零を痺れを切らしたのか2人の男が零の腕を掴む









何が起こっているのかわからなかった

突然山蕗家の当主がやって来て宮西君の名前を呼んで教室から去っていった

昼休みにあんな事を言ってしまった事を奈美は後悔していた

(言わなきゃよかった)

反省をして授業をまったく聞いていなかったが、周りの異変に気づき現世に戻ってきた

そして2人の男が零を掴もうとするといつのまにか、零が立っており、2人の屈強な男が気絶していた

そしてそのまま教室を去って行った

(もしかして、今の零君が?)

早業すぎてよくわからなかったが、状況から見てまず零に間違いがない

(すごい…)

ただただ感心をしていた





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