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天使憑き  作者: 夢籐真琴
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蒼白い月の空を⑼

零は菖蒲と会った日から異常な日々を送っていた

the非常識の称号を与えても文句のない女 菖蒲がいたからだ

毎日毎日視界に入ってくる位置にいる さらには何故か食事ーーー昼食だが、一緒に食べるという事が既に決定事項になってしまったらしく、クラスにも認定され 奈美らにも裏切られ と散々な日々だった

しかし、幸運にも菖蒲がいたおかげで良かったことがある

1つ目は、菖蒲を恐れて誰も近寄ってこないこと 普通の生徒ならそれは苦痛かもしれないが、零は本来1人での時間を好むタイプなので、まったく問題なかった

2つ目は、食事代(・・・)が浮くという事 貧乏ではないが、大量に食べる零なので、お重にいれて持ってくる菖蒲には助かった まぁ菖蒲を避けているくせに、飯時だけたかる零の根性も見上げたものだが・・・

さらには嬉しい誤算があった

新しい知り合いができた

名前は(さかき)伊奈(いな)

隣のクラスに菖蒲と同じように転校してきて菖蒲とは仲がいいようだが、ドロシーに調べてもらっても過去に菖蒲のように華々しい(?)過去は見当たらなかった

しかし、アメリカでは同じ学校に入っていたのでただ者ではないーーーと零は考えていたのだが・・・

ただの変人だった

菖蒲のような180cmを超えるような身長もない 特に特技もなさそうで部活動にも入部しておらず、見たところ隙があり過ぎだった

菖蒲とは家族ぐるみの付き合いらしいがお嬢様ではないらしい

普通の家庭らしく、2人の共通点がわからず理解に苦しむ零だった

自分の事を棚に上げて人の事を変人呼ばわりしていた零だったが

(まぁ、眼の保養にはなるか)

と楽観視していて、いつも2人に引きずられてーーー意外な事に引きずるのは伊奈のほうだったが・・・毎日、既に菖蒲の私有物になっている教室で毎日食事をとっている(もともと山蕗家の物だが)










「零~どうした~?」

特有の方便(?)に似た間延びしたどこかやる気のなさそうな発音で伊奈が聞いてくる

ちなみに今は戦中だ

何の戦かというと眼の前にあるお重の中身の取り合いだ

いくらお重が大きいといっても、零と菖蒲の2人で簡単に完食出来る量しか残念な事に入らない

もちろんそれは自然の摂理(?)であって、人間には変えることが出来ない

あくまでも零と菖蒲が大食い (菖蒲の細い身体の何処に入るのかは疑問だが) だからであって適切な量でメーカーさんは作っている

よって特に問題はないのだが、ここに伊奈が入ってくると問題が変わってくる

ただでさえ、厳しい量を3人で分けようというのだ どう考えても足りるはずがなく結局今のように箸を必然的に走らせる事になるのだ

とかなんとか空想しつつも零の箸はすごいスピードで口と食器を往復している

そんなことを考えつつ苦笑しつつも箸は休むことを知らないように動き続ける

根本的な解決としては、零か伊奈のどちらかが弁当または何かを買ってくればあっさりと収まる問題なのだが、両方とも食費を浮かせたいために菖蒲にたかってる訳で自分の自腹を切ってまで買おうという気はしない

それの菖蒲の弁当を食べ始めたら、そこらへんの店で買った物よりも断然に美味しく今まで美味しく感じていたものが普通に感じてしまう 菖蒲の家では各部門の一流の料理人が揃えられているからだが、それを一度食べてしまうともう他の物を買ってまで食べようという気にはならない

「あ~零 唐揚げ取った~」

「悪いかよ?」

「それ私が食べようと考えていたのに~」

「早い者勝ちだな」

「レディファーストよ」

「俺は日本人なので英語は理解出来ません」

「ケチ!」

「う!?」

足のすねを蹴られる

思ったより痛い

「淑女はそんなことしません!」

「外国暮らしが長かったものでね 淑女?何それ?」

不毛な会話が続く

このままやっていたら、さらに蹴られそうなので諦める

「わ~たよやるよ」

「ありがと~」

皿に置こうとすると、口を開けてくる

「?」

「食べさせてよ」

器用に口を開いたまま綺麗な発音をする

「はぁ?」

「食べさせてくれたら、キスしてあげるからさ!」

「いらね」

皿に置きかける

「何その反応 蹴るよ」

妙な脅しをかけてくる

ふと菖蒲に眼をやると

「諦めろ 伊奈には常識が通用しない」

「あんたに言われたらお終いだよな・・・」

呟くと

「早く!」

急かしてくるので口の中に放り込んでやる

予想以上の大きさに口を膨らませて格闘している伊奈をよそ目に食事を再開しようとすると

「冗談だろ・・・」

いつの間にか食材が綺麗さっぱり消えている

「ご馳走様でした」

こいつか・・・

「漁夫の利というやつだな」

心の中を代弁しやがった

「お前が伊奈といちゃついているのが悪い」

「む、」

言い返せない

「零~」

「うん?」

「キスして欲しい?」

「却下」

とりあえず距離を保つ

「何~私じゃ不満ですか?菖蒲じゃないと駄目ですか?どうせ私は駄目ですよ」

「そこまで言ってないだろ」

「じゃあ!」

「却下」

「酷い…」

「じゃあ、俺帰るわ」

「ああ、またな」

「おう、料理人に美味かったって伝えといて」

「了解」

扉を開けて廊下にでる

「さぶ」

走って教室に帰っていった










「零って面白いね」

「お前にはやらないぞ」

「さすがに菖蒲が選ぶだけある」

「お前はああいう奴が好みか?」

「いや、かっこいいんだけどね~ちょっと違うかな」

「顔の問題か?今日も何人かに告白されてたじゃないか」

「ああ、ああいうのナシ 零みたいな何考えてるのかわからない奴の方が面白くていいな」

「変わってるな」

「菖蒲だけには言われたくないよ~だ」

「悪かったな 私は趣味が悪くて」

「いや?むしろいいでしょ 零はたぶん面白いし、何か隠してるね」

「ああ・・・」

2人に変な評価をされているとは夢にも思わず、走って帰っている零だった

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