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天使憑き  作者: 夢籐真琴
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蒼白い月の空を⑹

油断無く2人は見つめあっていた

菖蒲は特に危なそうではなく、リラックスした態勢をとっているように見えるが、実際には油断のない構えをとっている

同じように零も机の上に乗って姿勢を低く保っている 動物の態勢と似ている油断のない構えだ

しかし先に構えを解いたのは零だった

「昼飯くれんだろ 食おうぜ」

すると、菖蒲も少し笑って

「最初からそういえばいいんだ」

机の上においていた包みをとり中から小学校の運動会でしか見られないようなお重を出してきた

「これまた豪華な・・・」

「そうか?」

「いただきます」

「いただきます」

近くにあった椅子を引き寄せそこに座ってあらかじめ用意してあった割り箸で食べ始める

とりあえず目の前に座っている菖蒲の正体は後回しにして、さっきの大判振る舞いのせいかお腹がすいていたので食べることに集中する

2人は何も喋らないので教室には2人の咀嚼する音だけが響いていた










「ごちそうさまでした」

結構な量のあったお重の中身を2人で食べきった 目の前に座る菖蒲は細い身体にも関わらず何処に入るのかというほど多くの量を食べた

よく見てみると、綺麗な顔をしているが、さっきの出来事があったので警戒が解けない

「美味かったか?」

「ああ、さすが山蕗だね」

沈黙が訪れる

帰ろうかと考えていると

「お前は面白い」

「?」

「山蕗の家に逆らった男は初めてだ」

「別に逆らいたくて逆らったわけじゃないんだけどな」

独り言のように呟いたがあっさりと流された

「お前は私の家でも有名になっている」

「誰に?」

「私の母だ」

「それはそれは光栄な事で 理事長様に名前を覚えられるとは」

零自身は理事長 菖蒲の母親に会った事はなかったが・・・

「私の気配を感じられた男はお前が初めてだ」

「・・・」

「私はお前に興味(・・)がある」

「・・・」

「山蕗の家に来ないか?私と結ばれないか?」

沈黙が訪れる

それを破ったのは零で返事はもちろん

「それはお断りしたはずだぜ」

「何故?」

心底不思議そうに言われる

「それはお前に言う必要はない」

「私はお前が理解できない」

「・・・」

「だから、お前を知りたい」

「無理だね」

「?」

「相手を知ることは出来ない」

「・・・」

沈黙で先を促してくる

「人を知ることは永遠に出来ない 自分のことを知らない奴なら当然だ」

「私が自分の事はわかっていないと?」

「いや、あんたは出来る人間だろう」

「それならどうして?」

「それは簡単だ 相手を知る事は相手が自分自身の事を知っていなければならない

俺は自分の事を知らないからな」

自嘲気味に言い放ってから、

「昼飯ありがとよ 美味かったぜ」

今度こそドアを開く

すると

「私はお前が欲しい」

「・・・」

「お前を捕まえてみせる」

少し笑って零は

「やれるもんなら、やってみな」

さぶいさぶいと呟きながら、ポケットに手を突っ込み歩いていった












「天使」

「あら?修羅場は終わったの?」

「見てたならなんか言って来いよ」

「いい雰囲気だったからね 邪魔したくなかったの」

「面倒な事になったな」

「あら?案外いいムードだったわよ」

「ほざけ で?天使さんの天才的な情報収集の成果を教えてもらいたいのですが」

「それがねぇ・・・あなたこれ信じる?」

「ふん?」

「6歳で薙刀(なぎなた)を初め7歳で世界選手権出場 10歳以下の部 優勝3回」

「全部優勝かよ!」

「それから今に至るまでアメリカの特殊部隊を育てる学校に秘密留学 そしてその学校トップの成績で日本に帰国」

「・・・」

「もちろん、世界大会は出続けて優勝を繰り返してる 山蕗姓ではなかったようね 15歳で帰国 ここからの情報はないわ」

零は肩を落としてドロシーの報告を呆れながら聞いていた

「それで?なんでそんなとんでもないお嬢様がうちの学校に編入したんだ?」

「馬鹿ねぇ 自分の学校だからでしょ」

「そういう意味じゃない なんで帰国したんだ?」

「それはわからないわ 人の考えは読めないのよ」

「そうだな・・・」

「ねえ?失礼は承知の上なんだけど聞いていい?」

「なんだ?」

「あなたは自分を知らないのじゃない 知り過ぎているのじゃないの?」

「さあ?ご想像にお任せします」

おどけるように言って話をそらす

それはドロシーにも伝わったようで

「そういえばなんで断ったの?奈美ちゃんとは付き合っているだけでしょ」

「うん?それはなあ」

言葉を切る

「俺はお前以上の女と出会わない限り結婚はしないよ」

「あら!誘ってるの?」

悪ノリをしてくる

「誘ったらなびいてくれるのか?」

「考えてもいいわね」

「そりゃ、どうも」

微かに笑いながら教室に向かって行った



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