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天使憑き  作者: 夢籐真琴
37/104

蒼白い月の空を⑶

そんなこんなで初雪がちらつくようになって冬の気配が感じられるようになった季節に零は1人で学校へと向かっていた

相変わらず奈美との微妙な関係は変わらず、帰る時と昼食を食べる時ぐらいしか喋らないという絶妙な(零が勝手に思っているだけで美夏と良太ら関係者一同はこの2人を珍しいカップルと認定した)バランスを保っている

そんな事を気にもせずに、周りの景色を見渡しながら零は学校へと向かっていた

(秋の風景もいいけど、冬の景色もこれまたいいんだよな~)

そんな事を考えつつゆっくりと歩いていた

周りは人1人居らず完全に零1人だった たいていの山蕗高校へ通う生徒は皆家から送ってもらっている

特にこんな雪のちらつく季節に歩いていく珍しい人種は零ぐらいしかいない いや零しかいない 良太らはバスが出ているのでバスに乗って学校へ向かっているが、零は今まで一度もバスに乗らずに歩いている 理由は単純でバス代がもったいないのと、体がなまってしまうからだ。別に零は体を鍛えているわけではないが、自身の身体の状態はよくわかる 自分の身体は異常なのだとわかっていた 筋トレをすれば人より筋肉がつき、足も早く同世代に負ける事はなかった 小さい時から身体を使った遊びばっかりしていたと思う 鬼ごっこなど外を走り回っていた 周りのみんなはゲームなどを家の中でよくしていたが、零は渚らと一緒に外を走り回っていた そのせいなのか身体は丈夫で冬の寒さ、夏の暑さにはめっぽう強い

それを零は


自分が異常なのだから周りに合わせなくてはいけない


という事を中学生で悟ってしまった

よってそれからは滅多に本気を出さず手を抜いて学校の体育などをする事にした

無気力などと言われ続けていたが零は気にしなかった

ただ、身体を動かすのは好きだったので、渚と一緒に身体を動かしたり、鍛えたりしていた

服の上からではわからないが、零の身体は細身であまり強そうには見えない。しかし実際には鍛え上げられた筋肉を持っている 強靭な肉体とともに並外れた運動神経もだ しかしそれを他人には見せようとはせずにただ1人黙々と零は一般人を装っていた

しかし、身体がなまるのを零は良しとせず、毎日学校まで歩いているわけだ













そんな理由でいつも通り冷えるなかを登校した零は窓際の1番後ろといえ絶好の位置へ それもそこには暖房があるというこれ以上な

い絶好のスペースへ潜り込んで冷える手を温めながら、

「おはよう」

「おう」

挨拶をしにきた奈美と近くの席の良太と美夏と予鈴まで一緒に過ごす というのがいつもの零の学校の風景だ



(ふん?)

何かが変だ

何かが違っている

自分の第六感がそう告げている

いつも通りの学校なのだが何か違和感を感じる

(何だ?)

横を見て違和感の正体がわかった

目の前には誰も座っていない机と椅子があった いつもは零の隣の席には誰も座って居らず それどころか机さえない

(転校生か?この時期に?)

違和感の正体がわかったものの、なにかスッキリしない

これだけではないはずだ

これぐらいなら第六感が働くほどではない

では何か?と聞かれると言葉に詰まってしまう所だが、やはり自分の心の中でうずめく何かがある

それを気のせいと決めつけてしまうのは簡単で楽な方法だったが残念な事にこういう事に関しては自分の勘が外れたことは一回もない

(修羅場か?)

内心考えることを諦めて開き直った零はこの正体のわからない違和感を楽しむ事にした






やがて、朝のHRが始まろうとする頃に担任教師がいつもと違った真面目な顔をして教室に入ってきた

それもいつもよりかなり早い時間だ

「みんなにお知らせがある」

声には緊張も入っている

(ただ事じゃないな)

ボンヤリと考えていたが

「今日からこのクラスに転校してくる生徒がいる」

(アタリか)

「山蕗家のご長女の山蕗(やまぶき)菖蒲(あやめ)様だ」

「!?」

教室内に動揺がはしる

零も眠くなっていた意識が一気に覚醒した 同時に

(なるほどね~)

良太でさえ顔を強張らせているのに零にはその気配がない

それどころか顔は笑っている

(面白くなりそうだ)

毎日に飽きていたので、ちょうど刺激が欲しかったところだ

(ちょうどいいな)

珍しく高揚している自分を内心苦笑しつつ、話題の主が入ってくるであろうドアを見つめた

「では、どうぞ 山蕗様」

決して普段真面目ではなく、むしろ零に近いタイプである担任教師が様をつけて呼んでいる

(これは相当だな)

こんな恐ろしい生徒を持つようになってしまった担任の教師を不憫に思う


ドアが開いた




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