日本家屋にて⑵
沈黙が場を制する
零はあくまでも答えるつもりはさらさらなかった
個人的には答えても問題ないかと思ったが
あの天使(相棒)に迷惑を掛けたくなかった
(俺はあの天使が好きなのか?)
自分で考えたことのアホらしさに笑える
(まぁ美人といえば美人だがな)
突然微笑しだした零に早瀬困惑した表情を出したがすぐにもとに戻った
「何を笑っている」
「いや 特に?」
胸ぐらを掴まれる
「あ!?」
右肩に熱さを感じる
鮮血が飛び散る
短刀で切られたようだ
傷は深く血は零の体から流れだし畳にシミをつくる
「あんた、短刀も持ってたんだな」
「私の質問に答えてもらおうか」
「やだね」
早瀬の持っていた黒い物体から弾が発射される
右ひじをやられた
(これまた物騒な物を・・・)
しかしのんびり考える暇もそろそろ無くなってきたようだ
意識は零の強靭な精神力で保っているが
いつ意識がなくなってもおかしくない状態だ
「今のは、警告だ 早く言え」
「・・・」
「あくまでも言わないというのか
仕方ない 可哀想だが」
もう一回黒い物体を向けられる
「一つ・・・」
「ん?」
「一つ死に土産に聞いていいか?」
「なんだ?」
「奈美と美夏は・・・?」
「あの子達なら大丈夫 美夏の家にいるよ
君は救急車で運ばれた事になっている
ここは私の家だからな 喚いても叫んでも
銃声がしようが問題ないのさ」
「そうか・・・あいつらは無事か」
「さて、そろそろ話を終わりにしようか」
「ありがとよ」
「?」
「いや、教えてくれてよ」
「私に礼を言うとは・・・変わった小僧だ」
「それもよく言われる」
「無駄話はここまでだ」
物騒な物を脳に向けられる
抵抗はしない
(する必要がないからな)
すごい音がする
障子を蹴り飛ばしてあの女が入ってきた
(やっとおでましか)
早瀬が驚いている隙をついて目の前の物騒な物を握り違う方向に向け全弾撃つ
空になったそれを捨てあの女の所にいく
立ちくらみか・・それだけでは無く相当の血を流しているので目眩がする
それでも気力を振り絞って
「遅~じゃねぇか」
「喋れるなら大丈夫ね」
同時に天使が一気に早瀬の目の前に跳び鳩尾に膝をいれる
「うふ!?」
間抜けな声と共にその場で伏し気絶した
同時に体から力が抜ける気がした
片膝をつく状態で床に座り込む
血の抜ける感じがする
目の前の天使に笑いかける
「お見事」
意識が遠くなり天使の顔がぼやける
(せっかくの美人が台無しだぜ)
変な事を気にしつつ暗闇の世界へ旅立っていった
目を覚ます
あの部屋の壁にもたれかかる要領で体を固定されられていた
隣には天使らしき人物(?)がいた
「目が覚めた?」
「ああ」
まだはっきりと意識が覚醒していないが
ぼんやりと天使の声が頭に染み込んでくる
目の前には両手首を結ばれた早瀬がいる
傷跡は止血された様で体に見たことのない物が巻きつけられている
それをまじまじと見ていた零に気づいたのか天使が
「それ、天界の包帯みたいな物なの 本当は魔法で治してあげたいのだけどそれは禁止なのよ」
微笑みながらどこかばつの悪い表情をしながら言った
「ふ~ん」
気のない感じで返事をしながらその包帯らしき物を触ったり引っ張ったりする
意外にも重力を感じないようにとても薄くてとても軽い
体につけている感触がない
「便利な物だな」
「悪かったわね」
いきなり天使が謝りだす
いたずらっぽい眼で零は
「なにが?」
「あなたに、私の相棒にこんなに大きな傷を負われてしまったことよ」
「別にいいぜ 結果無事だったし 結果よければすべてよしっていうだろ」
「それでもよ!私がもっと注意してればよかったのよ」
本当に泣きそうな顔をされて零は逆に戸惑った
こんな天使の顔をされて見たのは初めてだったからだ
「だから気にするなって
俺の不注意だし 俺から飛び込んだようなものだしよ」
「・・・」
これまた沈黙が場を制したがこれは前とは違い少し気持ちのいいものだった
(この天使は・・・もしかして)
ある種の予感を感じつつ
「それで、この男どうするよ?」
「あなたが決めて あなたが傷を負ったのだし 私は殺してやりたいけどね」
いつになく眼が殺気だっている
こんな天使も初めてみた
ポイっと銃を投げられる
「あなたの自由にしなさい」
物騒な物を放って渡される
それを何の躊躇もなく零はその引き金を引いて目の前の男を撃った
即死と一瞬でわかるような死に方だった
殺す道具を零に渡した天使ですらその躊躇のなさには驚いている
男をいやすでに事切れた物体を尻目に
「帰るぞ」
めんどくさそうな声にドロシーは驚いた 驚愕した
人を殺すことを何とも思っていない
それどころか人を殺したのにもかかわらずどこかめんどくさそうな言い方で
もしかして人を殺したことが何回かあるのかと思わせる表情だった
「ええ・・・」
零は天使に肩を貸りつつ長い廊下をゆっくりと歩く
「長~な」
いつもの声に戻っている
「本当よね。なんでこんなに無駄に日本家屋は長いのかしらね」
「お前無駄には造った人に失礼だろ」
「それもそうね」
いつものように無駄話をしつつ廊下を歩く
しばらく沈黙が続いたとき
「間違ってたら悪いんだが
お前傷つけるのに、傷つけられるのに 何かあったのか?」
「・・・」
沈黙が肯定をした
「まあ、俺が喋りたくなったら喋るからよ
お前もそれでいいよな」
自分に言い聞かせる様にした
(人にはいろいろあるさ いやいや、こいつ人じゃなかったな)
そんな平和な事を考えつつ
2人仲良く帰途のついた