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天使憑き  作者: 夢籐真琴
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鮮期衝会

暗闇の中で意識が戻った

脳は靄がかかっているようにはっきりしていないが、先程までいた暗闇よりも自由がきく

ゆっくりと眼を開けた


明るい光が差し込んできた














眼を覚ますと伊奈が見えた

顔の下半分が見える

後頭部に柔らかいものを感じる

伊奈の膝だった

「零?」

緊張と優しさが交じったような声だった

顔が疲れきってる伊奈がいた

しかしいつも通りの伊奈の顔だった

いったいどれほど眠っていたのだろう?

随分長い時間眠っていた気がする

久しぶりに見る気がした

「あぁ・・・」

頭がガンガンする

二日酔いの時のような気分だ

脳内を覆っていた靄が晴れ始める

「ドロシーは!」

勢いよく顔をあげる

伊奈の顔に当たる寸前に両方とも器用に躱して衝突を避けた

「零!安静にしとかないと」

伊奈の制止の声も聞かずに立ち上がる

(ーーー!?)

長時間眠っていて(しかも立派に死んでいるのだ)いきなり立ち上がる事ほど危険な事はない

目覚めた時以上の頭痛と、本来の10倍ほどの立ちくらみが襲ってきた

「あ!?あああーー」

無茶苦茶な事を叫んで気を抑える

(天使ーーー!)













ドロシーの顔が浮かぶーー

何処か遠くへ零に背中を向けて歩いていた

待てーー

声が出ないーー

手を伸ばすが届かない

(行くなーー天使!)

しかしドロシーの歩みは止まらない

「天使ーーーーーーーーー!」

大声で呼び止めた

咆哮だった

魂の音を伝えようとしたがーー伝わらない

「零ーー」

「天使?」

「あなたの眼ーー白銀の眼は」

右眼が何かを発し出した

それは音でありーー光だった

「それはーー私の希望(・・)よーー」
















再び眼を覚ました

先程と同じ光景が映る

伊奈の顔でありーー膝の上に頭を載せていた

「零ーー。あなたね、いきなり起きたら倒れる事ぐらいわかってるでしょう?」

しかし今度はかけられる言葉が違った

前とは違い飽きれたような声だった

今度はわかっている

ゆっくりと頭を起こす

先程のように強い痛みは感じられなかった

しかしーー目覚めたのを自覚できるような小さな痛みーーそれは心地よい痛みでもあった

そして身体を起こす

それほど離れていない所に自分が刺し殺した彼が倒れていた

それと血が付きもとの紅の色を染めていた

「行こうか・・・真実を探しに」

伊奈も立ち上がって頷いた

小太刀を片手に右眼からの懐かしい感触を感じ取った

「いくぞ!相棒(・・)















2人を止められる堕天使は既にいなかった

ただでさえ止める事が難しい2人なのに今の零と伊奈は人類の極致に達している

特に零は白銀の眼が起動している

敵などいなかった

いるはずがなかった











城の奥の部屋に辿り着いた

相当大きな部屋のようだ

中には予想以上の堕天使と予想通りの彼がいた

中の様子は零にはわかる

ドアを開けた瞬間一斉に襲ってこようとしている配置だ

伊奈にも身振りで伝えた

零は何の躊躇もなくドアを開けた















一斉に槍や弓矢が飛んでくる

ドアを盾にして隠れた2人のすぐそばを音をたてて突き刺さっていく

「せめてドアを開ける瞬間くらい言ってよ」

「すまん忘れてた」

「・・・」

絶句した伊奈を捨てて飛び道具がなくなったのか攻撃をやめている間に零は盾としていたドアのそばを既に離れて何時の間にか何人かを葬っていた

「伊奈、援護よろしく」

お茶取ってきてとでも言うような気安さで零は言った

その間にも零の手足は芸術のように美しくーーそして血をかぶった顔を無表情に機械的に敵を葬り去っていく

「しょうがないわね・・・」

零に気を取られている堕天使を投擲ナイフで的確に急所を打ち砕く

たった1秒の間に10人もの堕天使が一斉に倒れた
















残り少なくなった堕天使は彼を庇う様に後退していった

「やっぱり来たね」

「やっぱり君だったか」

かつての旧友にでも会ったような口調でーーしかし眼は笑っていない2人が正面に向き合う

警護の堕天使も彼に場所を譲った

紅い外套を纏った身体には今まで見たことのない気配(・・)が見えた

一方零の方は、冷たく絶対零度の眼を彼に向けていた

堕天使の頂点に立つ男にーー



「生きていたんだな」

「そっちこそ、とっくの昔にくたばってたと思ってたぜ」

いつもの零には考えられないくらいの口調の荒さだーー



「旅に出ようか」

2人の言葉が重なった

「運命のあの()へ」








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