盗まれた影3
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無事に成人の儀式2日目を終えたジャンヌ。
当初の頃からすると、ジャンヌの魔力は、鬼教官のディートリッヒの扱きもあり、水晶玉の形成魔法もすぐに出来るようになった。
「さあ、ジャンヌ。今日は卒業試験だ。浮力魔術、移動魔術、治療魔術、そして攻撃魔術の4つだ。
初めに、水晶玉を魔法で形成して、試験用に用意された敵を調べる。
ジャンヌは、少しフラつきながらも、立ち上がると口の中でブツブツと呪文を唱え始めた。普段のジャンヌが作り出す魔方陣は、彼女が持つ蒼い魔石と同じ、蒼い色なのだが、今日は何故か少し緑がかったり、赤くなったりして来ている。
余程、集中出来ないのか、ジャンヌの眉間に皺がよっている。
どれだけ時間が過ぎようが、ジャンヌの水晶玉は形成されなかった。
「一体、どう言う事なの?」
焦るジャンヌは、自分の魔力の全てを使おうと、祈るように両手を胸の前で合わせると、魔力を練り始めた。
だが、どの水晶玉も、歪な形の物で、水晶玉としての機能など果たせない物ばかりだった。
魔力が安定して来ている筈のジャンヌだが、今まで上手く出来ていた魔術が、出来なくなって来た。焦るジャンヌは、イライラを募らせる。
「何で? どうして、出来なくなったのよ!」
「ジャンヌ。落ち着け!」
「王子…ジャンヌ様の影が…」
2人の王子はジャンヌを宥めるが、その時にアルフレッドがジャンヌの影が薄くなって来ているのに気がついた。
ジャンヌは、その事を知ると「私はこうやって魔物に成って行くのか?」そう言って自分の影に怯え始めた。
影が薄くなる度に、自分の魔力も削られて来ていることなど知らなかったジャンヌは、身体に変調を訴え始める。
自分の部屋に閉じこもる様になった。
アウグストとディートリッヒは、魔術を使ってジャンヌの影の気配を探し始めた。
どうやら、ジャンヌの影は魔物に寄って取られて行ったようだ。しかも、影の場所でが、世界の果てにある龍の谷にあるのだ。
王宮に戻って来たガゾロとそしてアクアは、変わり果てたジャンヌの姿を見て、愕然とした。
輝くばかりだった金色の髪は、白銀の色へと変化して行った。瞳は、弱々しい銀色を放っているが、肝心のジャンヌの魔力が、弱まって来ている。
ジャンヌの影は、とうとう無くなってしまった。
「わ、私は、とうとう魔物になってしまった、のか」
自分に言い聞かせるように、言葉を飲み込んでいるジャンヌの瞳には、もう何も映さなかった。
心を閉ざしてしまった彼女は、自分を守ってくれていた人たちに今度は、命を狙われる事になるのだ。そう思うだけで、事実を見ようとはしなかった。
アクアは、ジャンヌの手を取ると、自分の手を重ねた。
「ドルバーで悪さをしていた化け烏が、ジャンヌ様の影を持って行ったようです」
ガゾロ達は、魔方陣の中央に立つと、移動魔術で竜の谷へと向かった。