盗まれた影1
成人の儀式が行われる一週間前に時間が戻ります。
ジャンヌが嫌がって居た成人の儀式まで、後2日となった。 こんな堅苦しい儀式が三日も続くのか。この一週間ずっと連日の様に、念入りにリハーサルをやらせられて居たジャンヌは、逃げ出そうと何度も試みた。
だが、その度に父親のベンジャミンとの約束もあるし、何しろ あの貴重な鎖蛇の干物が手に入るのだ。
「どうすれば良いのよ・・」
ジャンヌの頭の中では、大きな天秤に、鎖蛇の干物が入った皿ともう一つの皿には、成人の儀式と言う重い枷+(ぷらす) 双子の王子の内、1人を伴侶として選ばなければならない。
こんな物は、頭の中の天秤で計らないくても、どっちが重いかなんて直ぐに分かる。
成人の儀式が重いに決まっている。それに、いくら自分が言い出した事とは言え、結婚相手をあの2人の王子達の内の1人を伴侶として選ぶと言ってしまった。
ベッドに全身でダイブしたジャンヌは、はぁーと大きく溜め息を着いた。
マーサには、まるで親の敵を取るみたいに、嫌と言う程コルセットを締められ、内臓が出てしまうかもと思った。 それにコルセットの締めすぎで、今日一日中 何にも食べれなかったし、お腹は鳴り響くし。 まさに踏んだり蹴ったりだわ。
リハーサルの最中に何度もMrs.ヘザーから注意を受けるし。先週までは『ジャンヌ様は、飲み込みが早くて、私とても助かりますわ。オホホホホホ~』 なんて言って、扇子で口元を隠して、笑みまで浮かべて居たくせに‼
今週になってから、コロっと掌を換えした様な態度を取るなんて!!
「鎖蛇の干物が二匹じゃあ、安過ぎるわ! どうせなら、生きた鎖蛇の方が欲しかったわ」
思わず出てしまった本音だった。そんな生きた鎖蛇に触れるのは、自分とガゾロ様以外居ないだろう。特に、父親のベンジャミンは、大の蛇嫌いだからな・・・・。
ジャンヌは、ムックリと起き上がると、忌々しい表情で、手元にあった本を手に取ると、枕元に向かって投げつけた。
マーサには、まるで親の敵を取るみたいに、嫌と言う程コルセットを締められ、内臓が出てしまうかもと思った。 それにコルセットの締めすぎで、今日一日中 何にも食べれなかったし、お腹は鳴り響くし。 まさに踏んだり蹴ったりだわ。
リハーサルの最中に何度もMrs.ヘザーから注意を受けるし。先週までは『ジャンヌ様は、飲み込みが早くて、私とても助かりますわ。オホホホホホ~』 なんて言って、扇子で口元を隠して、笑みまで浮かべて居たくせに‼
今週になってから、コロっと掌を換えした様な態度を取るなんて!!
それもこれも全て、ガゾロ先生が余計な事をレゼンド王に進言しちゃった事から、始まったのよ。
頭の中に来週の本番のおさらいをし始めた。
「えーっと、第一日目は、歌姫と舞姫達が、私の成人の儀式を祝う舞と歌を見せてくれるのよね。 そしてー、その後は2人の王子達による剣舞があるんだわ。ったく、そんなん私が見なくても大丈夫でしょ!」
唇を尖らかせて、文句を言って居るジャンヌは、手足をベッドの上でバタつかせた。
「あー! 嫌だ嫌だ!!! もう、成人の儀式なんて、もう嫌だ!」
そう叫んでいた。
枕元に置いてある古代史の本に、ジャンヌの手が当たると、ジャンヌは古代史の本を睨んでいた。
「全ての元凶は、元はと言えば、クリシャーナ王女。あんた なんだからね!!!」
八つ当たりにも取れるこの言い方。
ムクっと起き上がったジャンヌは、バックレることにした。 蒼い魔石の力をつかって、扉の向こうを透かして見ると、廊下にはアウグスト王子が立っていた。
ジャンヌが、抜け出そうとしていたら、捕まえる為に居るんだろう。
「ケッ!なんて奴だ!」
なら、此処の扉を開けれない様に、扉に停止魔法を掛けてっと・・・・。 これでもう、アウグスト王子は、この部屋には入れない。 ジャンヌは、窓を開けると、テラスから魔方陣無しで転移魔法を使うと、王宮から抜け出すのに成功した。王都に転移魔法で現れたジャンヌは、両手を広げると「あー自由って、嬉しい!」 そう言うと嬉しそうに伸びをした。
廊下では、アウグストに粉したアルフレッドが、ジャンヌの部屋に前で、見張っていた。
王都は、未来のお妃となるジャンヌの事を祝って、都あげてのお祭りムードだった。
初めてのお忍びに、嬉しさと珍しさもあって、キョロキョロと人で賑わう場所を歩き回った。
自分の絵姿が売られて居るのを見て、(何コレ? 私の瞳の色が金色になってる!? ま、って事は、魔法で瞳の色を変え無くても、誰にもわかりゃしないって、事よね)
そう思ったジャンヌは、人の居ない路地に入ると、魔法で髪の色を茶色く変えた。
パン屋のおばさんが、赤ちゃんをあやしながら店番をしていた。店が急に混んで来て、赤ちゃんは、籠の中で寝かされるとぐずり出した。
ジャンヌが、パン屋に入ると可愛い赤ちゃんの声が聞こえて来る。赤ちゃんは、ジャンヌの顔を見て、一度はピタリと泣き止むとせがむ様に両手を差し出した。
「まあ、なんて可愛い赤ちゃんなのかしら。 抱っこしてもいい?」
ジャンヌが、パン屋の女将にそう聞くと、女将は「あやしてくれると助かるよ。さっきから泣いてばかりで困っていたところさ」
ジャンヌが、そっと赤ん坊を抱き上げると赤ちゃんは、ジャンヌの長い髪をクイクイと引っ張った。
それは、まるで赤ん坊が、ジャンヌに歌を歌ってくれとせがんで居る様だった。
微笑んだジャンヌは、赤ちゃんを見て、歌を歌い始めた。
不思議と泣いていた赤ちゃんは、泣き止むと、にっこり微笑んでいた。
ジャンヌの歌を聞いていた人達は、歌い終わったジャンヌに拍手をおくった。
「お姉さんのお陰で、ウチの坊やもこんなに機嫌良くなっているし。これは、ほんのお礼だよ。こんなんしかないけどさ、食べて見な」
ジャンヌは、パン屋の女将さんから、お礼にと美味しそうなパンを貰うと、その場で食むっと食べた。
「美味しい!」
「そうでしょ? ジャンヌ様もこのパンを召し上がって下さると良いんだけどね。あんた、名前なんて言うんだい? あたしゃ、マリアだよ。そしてこの子は、ディート。ディートリッヒ王子の様に、賢くなって欲しくてね。王子様の名前を頂いたのさ」
「ジャン・・・ジャンヌ」
「へー。ジャンヌ様と同じ名前なんだね」
「ええ。偶然にも・・・」
「ふーん。でも、髪の色はちがうんだね。ジャンヌ様は、金髪で、金眼だもんね」
「そ、そうですね」
思わず顔が引きつったジャンヌは、誤魔化す為に咄嗟に笑顔を作った。
パン屋を出たジャンヌは、誰かにいきなり腕を引っ張られると路地に引き込まれた。