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魔剣の君  作者: Blood orange
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帰郷9 西の国の奇病 後編 中

残酷な表現があります。

アクアは、サムや他の被害者達の家々を回ると、そこで奇妙な共通点を見つけた。

彼等の家には、きちんと何もかも整理されている。全ての棚を見ても、感染する様な物は見当たらなかった。

見当たらない?

もしや、彼等にとって生活の一部となっている物では無いのか・・・?

アクアは、もう一度原点に戻って見つめ直す事にした。

この西の国 ドルバーは、水が綺麗な事でも有名な国だったはず。ならば、その水を水路にして、各家庭に備えついているポンプに水が送られて来る筈なのだが・・・・。

アクアが手押しポンプに手で触れようとすると、自分の中から蒼い光が出て来た。どうやら、彼等の病気の原因の1つには、ポンプの水ではなく、ポンプのようだ。

これは、何処から出土された物なのだろうか?

アクアは、水晶玉でガゾロにこの国で使われているポンプは、何処で製造されているのか知りたいので、ザックに聞いて欲しいと言った。アクアの水晶玉に映し出されたザックは、頭を掻きながら言いにくそうに、チラリとガゾロを見ていた。


「お城の中で、作られているんですが、誰もポンプに使われている材料なんて知らないんすよ」


「では、其方の所にもポンプはあるのか?」


慌てたようにザックに聞きだしたアクアの声は、鋭く響いた。

ザックはブンブンと首を振った。


「あんな高い物を買う事は、無理っすよ。 それに、ここには、昔から湧き出ているトロルの湧き水があるから、ポンプなんて必要無いんすよ」


「分かった。これから私は、問題のポンプ製作所がある城に潜入しますので、失礼する」


水晶玉を手でかざすと、水晶玉はシャボン玉のように弾けて消えた。アクアは、フードを深く被るとボソボソと小声で呪文を唱え始めた。アクアの姿が、ブルージェイに変幻すると、ドルバーの城を目指して空高く飛んで行った。

城の門の前には、衛兵が2人立っていた。その門の上で羽を休めていたブルージェイは、目の前の城を見ていた。(テーブルをひっくり返した様な、形の城だわね・・・) 城の門の中にも、数人の衛兵が立っていた。

要所要所に、4人以上の衛兵達が立っている。一体、彼等は何を隠しているのだ?

城には、4つ本の塔が東西南北に別れて建てられていた。ブルージェイとなったアクアは、城の周りを弧を描く様に飛ぶと、まず初めは北の塔にある、小さな窓から中へ侵入した。

この塔の中には、以前誰かが此処に閉じ込められていたようだ。 壁には、五本を一纏めにした模様が、沢山刻んであった。アクアは、鳥の姿から人の姿に戻ると、床にある奇妙な感触に気がつくと、床に敷いてあった敷物を剥がすと、其処には魔方陣が描かれていた。

しかも、

この魔方陣は、普通の魔方陣ではなく、魔力の無い者を他の者に変花させる為に使われていた物だった。

その時、この部屋の扉の外で衛兵達が騒いでいた。

直ぐにアクアは、敷物を元通りに戻すと、鳥の姿になって、部屋の天井部分にある梁にのると、其処から部屋の中を見下ろしていた。

時の魔法を使えば、此処で何が行われていたのかと言う事が、簡単に分かる。衛兵が通り過ぎるのを待って居たが、無常にも衛兵達はこの部屋に袋に入った物を置くと、部屋の床に敷いてあった敷物をどかした。

「ジョアン様。用意が出来ました」


ジョアン? この国の王女の名前も確か・・・・ジョアンだった筈だが・・・。

部屋の中に入って来たジョアン王女は、頭からスッポリとフードをかぶっていた。だが、手だけは隠す事が出来なかったのだろう。皺くちゃで骨と皮だけの手が見えた。

確かまだ14歳だと聞いたのに、何故?


魔方陣の中央に放り出されるように、袋から出されたのは、身体中発疹だらけの少年だった。

年の頃は、9歳にも見たないだろうか。

その少年が、魔方陣から出ようとすると、下から緑の蔓のような植物が生えて来ると子供の体をギリギリと縛り上げて、悲鳴を出させる。鼻や、口、耳に蔓が押しいるように入って行くと、心臓の位置の所から、大きな黄色い花が咲き始めた。

その花から、透明なキラキラとした汁のような物が垂れて来る。それを衛兵達は、カップに並々になるまで入れると、ジョアン王女にカップを手渡した。

それを嬉しそうに受け取った王女は、ゴクゴクと喉を鳴らして、カップの中身を飲み干した。

すると、王女はフードを外すと、白髪の髪が美しい黒髪へと変わって行った。彼女の手が14歳の少女らしい白い柔らかそうな手になると、鏡に映った王女の顔にはシミさえも消え、真っ白い肌になっていた。


「これで後、二ヶ月くらい持つわね。でも、早くジャンヌ様に会いたいわ。あの銀の双眸を持つお方から出て来る命の水は、どんな味かしらね・・フフフフフ・・・・」


魔方陣の上に残された干からびたミイラの様な少年の遺体は、ジョアン王女が部屋から満足した表情で、出て行くと、衛兵達が少年の遺体を袋にいれて、魔方陣の中心に置くと、袋の中身から黒い煙が上がる。衛兵達は、それが合図なのか、袋の中身を取り出すと、中からコロンとポンプが出て来た。

ーな、なんて事なのかしら!? 自分の国の民を使うなどと・・・・・ なんて愚かな・・・!

衛兵達が部屋を出て行くと、ブルージェイは窓から飛び立つと、ガゾロ達が居るであろうザックの店へと向かった。


その頃ガゾロは、井戸80個目の井戸水と井戸の周りの土を採取していた。その井戸は、お城の真後ろにある森の中に作られていた井戸だった。

かなり古い井戸で、周りの石に崩壊防止の魔法がかけられていたほどだった。

井戸の水は、既に枯れてはいたが、井戸の奥底が見えず、ガゾロが水の精霊を召喚して井戸の底を見てもらった。 水の精霊は井戸の中に入って行った。

暫くして井戸から出てきた水の精霊は、ガゾロを恨めしそうな目で見ると、腰に手を当てると怒って言って来た。


「何なの! この井戸は! 幻の泉の女神から貰った井戸なのに、机やら、額縁に、椅子とかいろんな物が中に投げ込まれているのよ‼ 信じらんないわよ! もー!」


キーっと怒り狂っている水の精霊は、井戸の中からポンポンと粗大ごみを出し始めた。

その数、何と80個。 よくもまあ、此処まで物を捨てれた物だ。

そのゴミの中に、ジョアン王女が誕生した時に描かれた肖像画も入っていたのだ。

その肖像画に描かれているジョアン王女の顔には、泣き黒子があった。 そして、その隅には享年12歳と11ヶ月と書かれてあった。

その肖像画を額縁から外すと、丸めて亜空間の中へと放り込んだ。

国王一家の肖像画も見つけると、それも亜空間の中へと入れた。 どうやら、此処までも魔王の手先が何時の間にやら入っていたみたいだな・・・・。

袋の中に水の精霊に頼んで少しだけ汲んで貰った井戸水と周りの土を採取すると、ガゾロは移動魔術を使って、ザック達が待っている店へと戻って行った。


ザックの店では、アクアが帰って来ていた。

アクアは、元々人間ではないから、其処まで普段は感情が顔にも言葉にも現れないのだが、今日に限って真っ青な顔をしていた。 彼女を心配していたザックとマリンは、席にアクアを座らせると、

温かい紅茶を出してくれていた。

するとアクアは、ガゾロの気配を感じると、ビクンと肩を震わせた。


「アクアどの。何か掴まれたのですね」


「ガ、ガゾロ様。ジャンヌ様に早く成人の儀式を受けて貰って、一日も早く魔剣を探す旅に出てもらわなくては・・・・」


「何があったのだ?」


アクアは、ゆっくりだが自分がサムの生家で感じ取った事と、城の塔で見てしまった事を話し始めた。全ての自分が見て来た事を水晶玉に映し出すと、ザック達もその光景を見て、言葉を失った。

今度は、ガゾロが亜空間からジョアン王女の肖像画とドルバー公国の国王一家の肖像画だった。

その場に居た人間達は、お互いに顔を見合わせた。


「なら、今 お城にいる国王一家は、何者なんだ!?」


ザックの言葉に、答えるようにガゾロとアクアが答えた。


「「魔王の使いだよ」」

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