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魔剣の君  作者: Blood orange
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異変②

「まさかとは思っては来てはみたが.....やはり遅かったか...」


 ガゾロは、眉間に深く皺を寄せると目の前に広がる廃墟となった街を見ていた。

木も草も何もないただ、瓦礫だけがこの土地を覆い尽くす場所だった。風が吹く度に、砂塵と一緒になって虫鯨の死骸が粉となって舞い上がる。

 

 ここは、ガゾロの親友であるガンマが住んでいる街なのだ。本来ならば、彼も今回の魔術師教会の会合に出席する筈だったのだが、此処半年程連絡が取れなかったのだ。


 もしやと思い、足を運んでみれば、彼が居た街は崩壊していた。建物からは、原型を留める事無く壁だけが辛うじて残っているのが多かった。そしてそれらからは鼻を劈くような異臭が出ていた。その異臭は、街を襲ったと思われる大量の虫鯨の死骸から出るものであった。  


 風塵を避ける様に、奇妙なマスクを被った老人が、トゥダと言うラクダに似た動物に股がると朽ち果てた街の中に入って行った。

周りを見渡しても、人っ子一人いやしない。家屋の屋根は半分以上剥げ落ちている。

 街の入り口近くに残っていた家と見られる所に入った老人は、奇妙なマスクを顔に付けている。そうでもしないとこの風塵を少し吸ってしまうだけで、呼吸器官が腐ってしまうのだ。この風塵の原因は、虫鯨の死骸である。

 

 無人の廃墟となった家の中に入った彼は、砂の中から一つの人形を取り出した。

この家に住んでいた子供が遊んでいた物なのだろう。赤い毛糸を髪の毛にみたてて作られている人形には、顔や胴体の部分を布で作ってあった。藍色の瞳は、トゥダの爪から採れるボタンで作られている。

トゥダの爪は、生え変わる度に古い物がポロリと落ちる。取れてしまった古い爪は、加工されてボタンやビーズなどの装飾品へと変わる。この北の果ての土地では、そのトゥダの爪を使った加工が盛んであった。トゥダは、その昔乱獲されて、絶滅危惧種となった事が在り、トゥダの乱獲を止めさせたのがレゼンド王の曾祖父であるリチャード王であった。トゥダの数も昔の様に増え始めた時にトゥダを移動手段としてだけ使う事を許したのが、レゼンド王

老人がその人形を砂から取り出すと、中に入っていた綿が抜け落ち、その中からも虫鯨の死骸が溢れ出る様に、彼の足下に落ちて来た。

建物から出た老人は、外を見渡すと、目を潤ませていた。

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