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魔剣の君  作者: Blood orange
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異変 (改)

遥か北の国 ラグーニでは、奇妙な事件が立て続けに起こっていた。

そんな事件を耳にすれば、彼はいつも率先して動いていた。何しろ彼は王宮廷魔術師長だからだ。例え世界の果てと言われるラグーニで起こった些細な事件でも、見逃してしまえば、後々厄介なことになってしまうからだ。

それを彼は欲知っている。

ダストデビルと呼ばれる旋風が剥き出しの岩肌を舐める様に削って行く。

砂塵を巻き上げて行く旋風を視界の端に捕えていたガゾロは、ゆっくりと革袋の水を口に含んでいた。


「嫌な風だ。それに変な地鳴りのような音も聞こえて来るが...?」


足下の小石達が踊っている様に動き出す。それを確認したガゾロは、ヒラリとトゥダに股がると「は!は!」とかけ声をあげながらトゥダを全力疾走させた。

トゥダは、主に太古から砂漠や荒野での移動時に使われる動物で、ラクダに似ているが気性は荒く無く、従順だ。ラクダと違うのは、背中のコブはあっても、二本足であると言う事だ。前足と呼ばれる物には、砂漠のような強い日光から地肌を護る為の特別な羽毛が生えている。ダチョウの様に飛べない鳥に見えるのだが、翼は広げると鷹や鷲と同じ様に大きな翼を持っている。トゥダは、非常時になると、この翼を使って数十キロ先まで優々と飛んで行く。

 トゥダは、そもそも野生の動物である。

王宮廷魔術師と言う位にもなれば、自分専用のトゥダを一頭は必ず所有している。

このトゥダを所有すると言うのは、すなわち野生のトゥダを拿捕し、契約を結ぶのだ。いくら気性は荒く無いと言っても、いきなり拿捕されれば、暴れるのは当たり前だ。

トゥダは、自分と同じ..いや、それ以上の魔力を持った者としか契約はしない。たまに野生のトゥダを拿捕する際に、契約に失敗して命を落とす魔術師もいるのだ。契約の仕方は、トゥダの首筋にある一本の長い毛に自分の魔力紡いだ紐を合わせるのだ。野生のトゥダを支配する為に繋ぐ紐は、三つめの目から出される。それは、額の中央に位置する所から出てくる太い紐状の物だ。


初めは、異常気象から来る不作だとか言われていた。

しかし、それだけではない今まで発生する事が無かった、虫鯨が大発生した。これこそが、異常気象である。

 虫鯨とは(バッタよりも大きく陸上、水上で生息する虫。カマキリのように大きな鎌を持っている。現代のイナゴと似ているが、色は黒く腹には鯨のような白い筋のように見える線があることから、虫鯨と呼ばれる)

この虫鯨が、異常発生したのは今回だけではない。 太古の昔にも以上発生していた。その後、魔王の手下が黒い霧を使って地上を覆い、町や村を次々と呑み込むと、霧は消えて行ったと古文書には書いてあるのだ。

霧が晴れた後には、廃墟と化した国ラグーニが残っていた。それはまるで古文書に書いてあった通りの事柄と同じ事がこの国で起こってしまったのだ。

其処には、辛うじて建っている家屋やこの北の大地を治めていた貴族の城さえも、石垣だけが残っているだけだった。

風塵が舞い、洗濯物を干していたのであろうカラカラと洗濯バサミが竿に絡まりクルクルと回っている。元々は綺麗に洗われて白くなっていた筈のシーツやタオルも、風塵で所々茶色に染まっている。


「また….街が一つ消えた…」


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