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魔剣の君  作者: Blood orange
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夢の中へ⑤

蒼く光る魔剣の中で、小さく踞っているジャンヌは、時折苦しそうに泣き叫んでいる。


「魔剣の記憶って…」


『魔王に吸われた勇者達の魂を天に返す為に、ああやって自分の中に一旦取り込めてから、一つ一つ天へと魂を送っているんだ。あれは、彼女しか出来ない。魔剣の力を持つ者の宿命なんだよ』


一体どれだけの数の勇者達が、あの魔王の犠牲になって行ったのだろうか。両腕を胸の前に交差して一つ光る物を出すと、瞼を閉じているジャンヌの目から涙が一筋溢れて行く。


「私が弱かったから… あなたは、自分の子供の成長も見る事も無く魔王に生きながら嬲られる様に魂を抜かれて行った。どんなに悔しかった事でしょう….今から、奥さんやお子さん達が待つ天国へと導きます。」


クリスタルの中に入っている魔剣から白く丸い球が、ふわりふわりと空中に浮かんで来ると、それが人の形となって来た。

ゴルゴの戦士だったようだ。ゴルゴは、西の果てにある国で身長が大人でも160cmしかない低身長で、ズングリムックリしているが、異様に鼻が利くのが特徴である。彼らの武器は1mは在ろうかと思われる程大きな鎖鎌である。

その勇者を彼の家族と思われる二つの白い球が迎えに来た。

家族と何世紀もの間、ずっと離ればなれになっていたのだろう。漸く家族に巡り会えたゴルゴの戦士は、ニッコリ微笑むと家族と一緒に天へと上って行った。


 暗雲が立ちこめていた空も少しずつ雲が切れて来た。それに気がついた大天使シェスラードは、2人の腕を引っ張りジャンヌの夢の中から引きずり出した。

2人が倒れる様に金の離宮にある客室の床で折り重なる様に突っ伏していたアウグストとディートリッヒは、魔法がまるで使えない不便なジャンヌの夢の世界で普段は決して使う事が無かった体力を使い果たし、今此処でダウンしている。

2人の頭の中では、魔剣の中に閉じ込められていたジャンヌが言っていた言葉が頭の中でリフレインしている。


「いつまでこんな事を続けなきゃいけないの…? 好きでこんな力を持って産まれて来た訳じゃないのに…」

 小さく踞って自分の両膝を抱え込んで泣いているジャンヌ。

蒼い魔石が意志を持つかの様に光るとジャンヌに呼びかけて来る。


『生きる魔剣ー我を集めよ。半分に欠けてしまった蒼の魔石を見つける事が出来れば、次の魔石を見つける手がかりを掴める』


涙で濡れた銀の双眸は、蒼く光る石を見つめて不思議そうな顔をしている。


「どうして私が見つけなきゃならないのよ。何故、私がそんな役目を引き受けなきゃならないわけ? 私には、関係ない。私はただの男爵家の娘だし、そんな力は無い….」


蒼の魔石は、波を打つ様に光を波動にしてジャンヌと話している。

温かいぬくもりに包まれるような、そんな感覚をジャンヌに与えている。


『魔石が揃えば、魔剣が出来る。それは今までの魔王に寄って吸い尽くされた魂が天に返る事を意味するのだ。だが、それも魔王が復活する前に魔剣が出来ればの話だがな。お前の力は、まだ小さい。魔力を持て、さすれば魔石がお前を呼ぶだろう』


魔力….ジャンヌは自分の魔力が不安定である事しか知らない。一体自分にどれだけの魔力が備わっているのかさえ、知ろうとも思わなかった。

そもそも、自分は、薬師として生きて行くのだとずっと思っていたからだ。

明日からの魔術の時間は気合いを入れて行かないといけないのか…。

魔石の光が小さく消えてなくなると、ジャンヌはゆっくりと瞼を開いた。

ぼやける視界は、少しずつ形を成して行く。2人の心配そうな顔が目に入って来た。


「アウグスト様..それにディートリッヒ様….どうして此処に?」


両目を擦りながら、2人を見つめるジャンヌ。ジャンヌの長い金髪の端で遊ぶ様に戯れ付くスノーにガブリと指を甘噛みされ、少し涙目になっているジャンヌ。

2人とも服装が、まるで旅人の様に埃っぽい。まるで私の夢の中みたい…。まさかね。

王子達は、クスリと笑いながら、「洗浄」と一言呟くと彼らの服から砂埃が全て消えて行った。


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