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魔剣の君  作者: Blood orange
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大ジージの旅立ち ファートムside

目が覚めた僕の側には、母さんがいた。

そしてお医者さんもいた。

みんな、みんな僕を見てとても驚いていたよ。


「ねぇ。お母さん?大ジージは?」


僕がそう聞くと皆固まってしまった。

お母さんは、僕の言葉を聞いてハンカチで目頭を押さえていた。


「僕ね。大ジージと約束したんだ。お母さんを泣かせたりしないって。だから、泣かないで。お母さん」


僕の言葉にお母さんは、ワァッと泣き出すと僕に抱きついて来た。

僕は、一体何があったのか分からず、そのままずっとお母さんに抱きつかれていたままだった。

その日の夕方には、僕はお父さんとジージにも会えた。

ジージ達は、僕に大ジージの事を話さない様にしていたけど、僕は話したんだ。

 

「ジージ!お父さん。あのね、大ジージが僕に....たむしーって言うのをくれたんだ。そんでね、大ジージが遠い所に旅に出るって言っていたよ。いつ帰って来るのかな? 遠い所って外国なの?」


僕が大ジージと話した事を皆に言ったんだ。すると皆、泣き出してしまった。

バーバもお母さんもジージ達も...。お父さんだけは、僕の手を握りしめていた。


「そうか。大ジージが、ファートムを守ってくれたのか...大ジージが....」


お父さんが泣いている顔を見て、僕はびっくりしたんだ。だって、今までお父さんが泣いた所なんて見た事なかったから。

それから、三日後だった僕が大ジージと最後のお別れをしたのは。

大ジージの表情は、まるで眠っているみたいな優しい顔だった。

僕は、大ジージが煙となって空へ上って行くのを母さん達と一緒に手を繋いでみていた。


父さん達から僕の命は、大ジージから譲り受けた大切な命だから、大事に生きるんだと言われ、訳も分からず僕は、笑顔で言った。


「うん!僕、だって大ジージと約束したんだ。お母さんを泣かせたりしないって」


そんな僕の言葉を聞いた親戚の叔父さん叔母さん達は、一斉にハンカチで目頭を押さえると、肩や背中を震わせて泣いていた。

僕は、大ジージが別の世界で頑張っているって信じてる。

この宇宙そらの何処かで。

だから、大ジージ見ててね。

僕、頑張るから。

僕は、青空に上って行く煙に向って、精一杯手を振った。


 あれから、12年の月日が経った。

今、俺がこの家でジッチャン達と一緒に笑って過ごせるのは、自分の命と引き換えに俺を助けてくれた大ジージのお陰だ。

俺は、それまで大ジージの本当の名前を知らなかった。

ある日、ジッチャン達に大ジージの名前って何だっけ?と聞いた事があった。

すると全員黙りこくってしまったのだ。

何でも大ジージってば、自分の名前を呼ばれるのがよほど恥ずかしかったらしく、あまり本名を皆に呼ばせないでいたらしい。俺達の名字がダルクと言うのだが、俺は、どうしても大ジージの名前が知りたくて市役所に行ったり、後は倉の中にある書物をみたりして調べてみた。

すると、大ジージの名前は、サー=ジャン=ヌー=ダルクと言う名前だった。

俺達の家は、元々爵位を持っていた家らしい。でも、なんで皆隠していたのかな。

何となく分かる、俺が覚えている大ジージは、4才の俺と一緒になって箸にマカロニサラダのマカロニを通すのを競争したりして、母さんに一緒に怒られたりしてた。

夏は、一緒にスイカのタネを飛ばしやっこして、勢い余って大バアバの顔に2人が飛ばしたスイカのタネが当たって、2人して大バアバから大目玉を食らった事もあった。

大ジージが、俺に体操の練習とか言って小さな俺を塀の上に上らせて、隣の柿の実を取らせていた事もあったし。それも後で母さんに見つかり、2人して母さんからコッテリ怒られた。

冬季オリンピックのアイススケートの放送をテレビで見ていて、大ジージが「あんな短いスカートで、寒そうだね。毛布でも持って行って、ムギュってしてあげたいね。」と言っていたから俺も素直に、「そうだよね。寒そう。僕も一緒にムギュってするよ。」なんて言っていた。

大ジージは、とても面白い人だった。

まだ大バアバが生きていた頃、大バアバが昼寝をしていて、あまりにもイビキが煩かったので、俺と大ジージは大笑いしていた。その時、大ジージは、鼻をかんでいたティッシュを丸めると、ポーンと大バアバの大きく開いた口の中へ入れたのだった。

もちろん、口に使用済みの鼻紙を入れられた大バアバは、すぐに起きて俺と大ジージは、こってりと大バアバに絞られた。

次から次に楽しい大ジージとの思い出が蘇って来る。

あれも楽しかったな。

大ジージが、毎朝の日課である庭掃除をした後で、汗を掻いたからってポケットから出した白い物.......。それは、自分の大きなパンツだった。これには、俺もビックリしたが、大ジージは「体から出る物は、汗も尿も全ては自分の体から出るものなんだ。それにこれは綺麗に洗ってあるから大丈夫だ。」と言って、俺の額のあせも拭こうとしてた事もあった。

勿体ないといつも言って、牛乳も少し残ったら、水で薄めて飲む面白い人だった。


「大ジージ...会いたいよ...」


俺は溢れ出て来る涙を拭っていた。

俺に命をくれた大ジージは、楽しい事や嬉しい事、危ない事もあったけど色んな事を教えてくれた。そして命の大切さもおしえてくれた。

大ジージ....今ごろ何処で何をやっているのんだろうか...。

俺はウトウトと眠りの島へ行く為の筏に乗って、深い眠りへと旅立って行った。



次からは、大ジージが出て来ます。

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