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魔剣の君  作者: Blood orange
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レッスン一週間目 前編

あれから早くも一週間が過ぎました。

ジャンヌ様の成人の儀を執り行う為の準備が、着々と進んでいます。 

普通の成人の儀と言えば、礼儀作法やマナー、ダンスだけを学ぶのだが、ジャンヌの場合はすでに2人の王子が妃として迎えたいと国王と王妃の前で言ってしまった事で、花嫁修業も同時進行で入ってしまったのだ。

王宮の宮廷魔術師達も、ジャンヌの魔法に興味津々なので、この世界で希有とされている銀の双眸を持ち主がどれだけの魔力を持っているのか見定めたいと言い出し、勉強科目が次第に増えて来たのである。

もちろん、薬師として名を馳せていた事もあるジャンヌは、王宮の宮廷薬師達が学ぶ魔法学校薬師学科で特別講師として授業をする事もある。

ダンス以外は、全ての分野がほぼ得意分野(もちろん礼儀作法は除いてですが)のジャンヌは、毎日とても充実した日々を過ごしていた。


「ジャンヌ様〜。そろそろマナーの時間となりましたよ〜」


以前、ジャンヌに謁見でのマナーを教えてくれた城の使者が、事の成り行きで礼儀作法&マナーの先生となったのだ。この方、名前はヘザーと言って元々王妃付きの侍女で、彼女が次世代の王妃の礼儀作法を教える事となっているのだ。他の貴族の娘達にとってみれば、それはとても羨ましい事なのだが、ジャンヌにとっては、有り難迷惑と言うよりも針の筵である。

それもその筈、この礼儀作法の先生は、マーサの様に手厳しい。ジャンヌが結界を張って逃げようかと考えていると


「ジャンヌ様。逃げる事は即ち負けを認めた事になりますよ。それでも宜しいのですか?」


彼女は、ジャンヌの負けん気根性に火をつけるのである。

唇をグッと噛み締めたジャンヌは、「そ、そんな事はありません。や、やってみせますわ!」そう言うと、本を頭の上に乗せて真直ぐ歩き出した。


第一週目は、淑女としての歩き方、お辞儀の仕方の基本編から入る事になった。

漸く二時間の礼儀作法の授業が終わった。

脚はもうパンパン、背筋も凝りに凝りまくっている。今日はダンスのレッスンも入っているから、私の体…..大丈夫かしら。

そうだ!こんな時は、魔法で結界張って充電するしかないわね!


城の中庭で比較的木々が鬱蒼と茂っている所を目指して、足早にジャンヌは歩き出した。この一時間の休憩時間を逃したら後は無い!今しかないのだ!

周りをキョロキョロと見渡したジャンヌは、「結界」と言うとたちまちジャンヌの半径2メートルあたりに蒼い結界が張り巡らされた。

その結界の中でジャンヌは、太陽の光を浴びながら、「充電」と言うと疲れた体に温かいエネルギーが注入された様に体の中からポォ〜としてくるのだ。

その後は、昼寝。寝ぼけた頭の中で本日のスケジュールを見直していた。

朝、王立魔法学校にて薬師学科の授業を体験。特別講師として招かれているけど、どんな風に人に教えたら良いのかまだ分からず、初めの一ヶ月間はただの学生として授業に潜り込む予定になっている。要領を覚えたら、講師として教鞭をふるう事になっている。

金色のフワフワ巻き毛が、風に揺れているのは、とても気持ちがいい。いつのまにかリラックスしていたジャンヌは芝生の上で眠っていた。

温かく柔らかい感触がジャンヌの唇に触れる。

ゆっくり目を開けるとジャンヌの目の前にはディートリッヒ王子の顔があった。


「え〜っとミス=ヘザーの礼儀作法の後は…」


「魔術の授業だろ」


「あ!そうそう…魔術の…..って、誰よ!勝手に人の憩いの場所に無断で入って来るのは!」


ジャンヌは、眉を顰めると起き上がって声のする方を見ていた。


「ディートリッヒ王子….あなたも人の結界に入って来るんですか! 兄弟で同じ事は止めて下さいよ!迷惑です!」


「め、迷惑だと? 今までオレに対してそんな口を聞いて来た女は居なかったぞ!」


「ふ〜ん。良かったですね。ここに居ますから。分かったら早く帰って下さい。昼寝の邪魔ですから」

ジャンヌは、シッシと言う様に手で邪見にディートリッヒ王子を扱う。


「兄弟でって、何だと!兄もオレと同じ事をしたのか!?」


「ええ。お陰で紅がずれましたけどね。あなたの唇にも私の紅が付いていますけど、疲れて寝ている女に口付けをしたなんて、ダメですね」


ジャンヌの容赦のない言葉に、イケメン王子は石となってしまった。


「アウグストと口付けしたのかよ!」


「されたんです! 何故私がしなきゃなんないんですか? 私が寝ている時に、お二人ともどうせなら私が起きている時にやれば、よろしいのに」


思わず誘うような事を言ってしまったジャンヌだったが、自分が兄と同じ事をしていたと知ったディートリッヒ王子は、またも石の様に固まっていた。


「それじゃあ、遠慮なく」


天の助けか、後少しでって言う所に午後二時の鐘の音が鳴り響く。溜息をついたディートリッヒは、そっとジャンヌに近づくが、王子の息が頬に当たるくらいに近い。


「あ、それと言い忘れましたが、私は物ではありません。助けたご恩をそうやって無下にされるのは、薬師として鳥肌が立つ程嫌です」


ジャンヌは、冷静な声でキッパリそう言うとディートリッヒ王子は、諦めたかの様にフッと笑ったと同時にジャンヌの魔法で結界から飛ばされたのだ。

ジャンヌは起き上がると「解除」の一言で結界を閉じた。その様子を一部始終見ていたのは、王宮魔術師のガゾロ=ディーハルヒだった。

今まで、蒼い結界などと言う物を見た事が無かったガゾロは、「あれが、蒼い結界なのか」ニヤリと微笑するガゾロは、これからジャンヌと会う魔法学校の魔術室へと向って行った。


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